おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一

文字の大きさ
上 下
2 / 116
序章 貴族転生

第二話 説明からの決意表明

しおりを挟む
 巻き込まれの場合、異世界転生する話は多々ある。しかし、今一緒に転移してきたキラキラ勇者たちより十年も早く転生するということは、彼らはここに十年もいるということだろうか。
 某龍の珠を集める漫画の修業の部屋と言われても分からなそうな真っ白な空間に十年もとか……気が狂いそうだ。

「大丈夫よ。彼らはすぐに転移したと思っているはずだからね」

 これが神の御業というものか……。

「その通り。そもそも先ほどの天使さんは光の大精霊で、今回初めての異世界召喚の担当精霊ね。そして私はこの【エクセリク】の創造神で、名前をアルテアというの。名前でも神様でも、好きに読んでちょうだい」

 先ほど使命を告げたときの厳かな感じが消え、最初のときのような穏やかで優しいそうな声で些細な疑問にも答えてくれる。

 というか、ちょっと待て! 誰も帰ろうと思わなかったってイケメン天使が言ってたじゃないか。あれは誰も転移したことがないから、誰も帰ろうと思わなかったってことか。詐欺じゃねぇか!

 まぁとにかく言えることは、あっち側の立場じゃなくて良かった。

「いろいろと気づいたみたいだけど、詳しい話を進めるわね。ちなみに選択権はあります。転生を拒否した場合は、モフ丸くんとは別の世界で転生です」

 えっ……? どういうこと?

「何故ならば、モフ丸くんはこの度私の秘書兼癒し要員になりましたー! パチパチー!」

「わふぅ~!」

「モフ丸くんは私とこっちの世界で生活し、あなたは元の世界に戻り転生するのですよ。ねっ? 別の世界で転生になるでしょ?」

 つまり、モフ丸は天使に転生するってことか?

「素晴らしい! 大正解ー! モフ丸天使爆誕ですよー!」

「わぉぉぉーん!」

 またモフ丸と離ればなれ……。絶対ダメだっ!

 それに元々断る理由もない。
 死にかけている俺が、大好きなモフモフの王様である神獣を助けるだけで転生のチャンスがもらえるのだ。メリットしか存在しないところに、モフ丸との完全離別ときたら答えは決まったようなもの。

 やります! やらせてください!

 くしくも男の娘勇者と似たような答えになってしまったが、微塵の後悔もない。

「心は決まったみたいね。じゃあまずはその体からなんとかしないとね」

 パチッと指を鳴らす音が聞こえた後、うつ伏せで死にかけていたはずの俺の体が元の健康な状態に戻った。

「な、治った?」

「残念だけど、この空間限定で元の体の状態に戻したの。ほら、モフ丸を抱っこしたいでしょ? あとで時間作ってあげるから、とりあえず説明させてね」

「はい! ありがとうございます……!」

 今にもモフ丸に飛びつきそうな俺を優しく制しながらも、俺の方にモフ丸を押しやってくれるアルテア様に心の底から感謝する。

「まずさっきも言ったけど、モフモフの王様である神獣を捜して保護して欲しいの。その後、回復させて完全復活させるという流れね。彼は私の愛し子で【霊王】と呼ばれてるわ」

 アルテア様はモフモフの王様を愛し子と呼んだときに、悲しそうで寂しそうな表情を浮かべていた。俺はふとモフ丸を見て、アルテア様も同じなんだなと共感を覚える。

「龍脈と精霊に霊獣の管理をしてくれている必要不可欠な存在なの。彼がいなくなってしばらくした後、魔王の発生が頻発するようになったのよ」

「魔王って魔物の王ってことですよね? では魔王を討伐するために、その【霊王】様を復活させるのですか?」

「魔物の王ってところは合ってるけど、後半は違うわよ。魔王は人間たちの自業自得なんだから無視していいわ。あなたがやるべきことは霊王の完全復活だけなんだから」

 んっ? 自業自得って人間が魔王を作ってるのか? じゃあ何で勇者召喚したんだ?

「さっき異世界召喚は初めてって言ったことから分かるように、エクセリク産の勇者もいるの。魔王誕生のとき限定で神子が生まれるんだけど、彼または彼女が勇者や聖女の職業を得るのよ」

「では今回もその神子がいるのではないですか?」

「いるわよ。あなたの転生先のお兄さんが唯一の神子よ。ちなみに愛し子と神子は別物だから、一緒にしてはダメよ。神子は勇者や聖女になる可能性がある者を、見つけやすいように目印をつけた子どものことを言うのよ」

 兄か……。前世の兄や姉とはほとんど疎遠だったからな……。今回はどうだろうか……。

「ということは、兄が神子でエクセリク産の勇者ということですか?」

「違うわよ。勇者の職業に就けるのは一世代に一人だけなの。つまりはあなたのお兄さんは、長い歴史のなか唯一神子でありながら勇者になれなかった人物となるのよ。ちょっと不憫ね」

 えっ!? ちょっとじゃないよ!? 世間からフルボッコにされる案件だと思うけど……。

「今回の神子には、殺人勇者たちの案内役兼サポート役に回ってもらおうかと思ってるの。というのも、殺人勇者たちは転移前にあなたを殺そうとしたでしょ? そのような者に罰を与えるのが神の仕事なの。今回の罰は【贖罪】という称号をつけたことね。まぁ隠蔽してあるけど」

「贖罪……。罪を償う称号?」

「簡単に言うと、異世界チートで無双ハーレムを楽しんでいるだけでは史上最弱勇者にしかならないってことね。彼らに許されていることは、地獄のトレーニングに思惑ガチガチハーレムと心の底からの善行のみよ」

 どこぞの地獄みたいだ……。

 そこでふと気づく。もしかして、アイツらが巻き込まれか? 巻き込まれがチートではない珍しいパターンではないか?

 疑問を感じて訝しんでいると、アルテア様は相変わらずニコニコと微笑みながら説明してくれる。

「私は最初から【霊王】を託してもいい者を捜していたの。モフモフを心の底から愛してくれて、傷ついた心も体も癒してくれる者をね。そんなときに部下から異世界召喚の提案をされ、欲しい人材がお互い別であることもあって実行することを決めたのよ。もちろん人選は私が行ったわ」

 じゃあイケメン天使が勇者を欲したのか?

「正確には【霊王】を、私利私欲のために過去の勇者とともに封印した現在の教会が欲したのよ。【霊王】を封印したせいで被ることになった災害が、魔王誕生だろうが知ったこっちゃないわ! 自業自得よ!」

「えっ? では今も封印されているんですか?」

「いいえ。何百年もかけて封印を解いたというところまでは分かっているの。でもその先が分からなくて困っているのよね。きっと寂しい思いをしていると思うわ。……それもこれも私の信者を騙った邪教徒共のせいよ! 霊峰の資源が欲しいからと化け物呼ばわりして封印するなんて!」

 怒りが収まらないアルテア様は徐々にヒートアップしていく。しかし気持ちは痛いほど分かる。自分の愛すべきモフモフが、今まで世界に尽くしてきたモフモフが資源を独占したいがために濡れ衣を着せられるなんて……。

 このとき俺はアルテア様からの使命とか関係なく、辛い思いをしたモフモフを助けてあげたい。そのために転生するんだと。そう決意を固めたのだった。



しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

1001部隊 ~幻の最強部隊、異世界にて~

鮪鱚鰈
ファンタジー
昭和22年 ロサンゼルス沖合 戦艦大和の艦上にて日本とアメリカの講和がなる 事実上勝利した日本はハワイ自治権・グアム・ミッドウエー統治権・ラバウル直轄権利を得て事実上太平洋の覇者となる その戦争を日本の勝利に導いた男と男が率いる小隊は1001部隊 中国戦線で無類の活躍を見せ、1001小隊の参戦が噂されるだけで敵が逃げ出すほどであった。 終戦時1001小隊に参加して最後まで生き残った兵は11人 小隊長である男『瀬能勝則』含めると12人の男達である 劣戦の戦場でその男達が現れると瞬く間に戦局が逆転し気が付けば日本軍が勝っていた。 しかし日本陸軍上層部はその男達を快くは思っていなかった。 上官の命令には従わず自由気ままに戦場を行き来する男達。 ゆえに彼らは最前線に配備された しかし、彼等は死なず、最前線においても無類の戦火を上げていった。 しかし、彼らがもたらした日本の勝利は彼らが望んだ日本を作り上げたわけではなかった。 瀬能が死を迎えるとき とある世界の神が彼と彼の部下を新天地へと導くのであった

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる

ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。 彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。 だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。 結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。 そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた! 主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。 ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。 転生はデフォです。 でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。 リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。 しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。 この話は第一部ということでそこまでは完結しています。 第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。 そして… リウ君のかっこいい活躍を見てください。

何でも切れる勇者の剣を引き抜いたら右手から離れなくなりました(しかも逆手)

こへへい
ファンタジー
体の弱い母のため、食べれば元気になると言われているイノシンキノコを採取するためにチョイタカ山にやってきたトウマ。 そこでトウマは、地面に突き刺さった大きな剣と、重い半ばで倒れ、その剣を摘まんで死んだと思われる人間の骸骨を発見する。その骸骨とは、その昔死んだ勇者の遺体だという。本人の幽霊がそう言っていた。 その勇者の幽霊にそそのかされて剣を引き抜くと、なんとその剣が右手から離れなくなってしまったのだった。しかも逆手。普通に構えられない。不便極まりなかった。 こうしてトウマはその勇者の幽霊と共に、勇者の剣の呪いを解くための冒険に出るのだった。

処理中です...