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第2章 モフモフ天国
第30話 魔力式ポリグラフ検査
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今回も少しだけ痛々しい場面が出てきます。
苦手な方はお気をつけ下さい。
===============
瀕死の御者が自分に害をなす是非を問うてきた。
何があろうとも俺の答えは決まっているが、死の淵に立つまで黙っていたほどの切り札であるらしいから、御者の遺言だと思って聞いてあげよう。
「あなたにしたことの是非を問うているなら、当然『是』だ。これ以外の答えを持ち合わせていない」
「お、俺は……ギルドに所属しているんだぞっ」
……だから何だよ。
紙に名前書いてカード作れば、誰でもギルドに所属できるだろうに。
「なんだ、そんなことか。どこぞの王族か高位貴族かと思ったじゃん。誰でもなれるもので威張られてもなぁ」
「俺は境界都市の所属だぞっ!」
「だから?」
「境界都市のギルドが奴隷の販売を認めているんだっ! 俺たちが納品しなければ、損害を出した原因であるあんたに報復がいくんだからなっ!」
「……あなた方が納品しなかったら、代わりの人たちが納品すると思うけど? あなた方の代わりは、掃いて捨てるほどいるだろうからね。それに、損失を出したってどうやって知るんだ? あなたはこれから死ぬのに」
「――あの獣人たちが言うに決まっているだろっ!」
彼らは言葉を発することができない状況だから、顔で異論があることを表していた。
なかなか器用だ。
「そもそもアイツらの領地は、領主も黙認するほど違法奴隷の温床なんだよっ。たまたま今回の被害者が、自分たちの身内だっただけだろっ!? しかも、俺たちは依頼されたんだっ! 俺たちは悪くないっ!」
「まぁどちらも自業自得であり、俺を巻き込んだことは分かった。――それで、ギルドは違法奴隷を公認しているということでいいのかな?」
「…………」
「答えられるわけないか。もし『是』だと言えば、仮に生き延びても報復を受けるのはあなたになり、口封じに殺されるはず。そして『非』だと答えれば、ギルドからしてもあなた方は違法行為をした犯罪者。感謝されても報復を受けることは、表向きはありえない。裏では来るかもしれないけどね。どちらにしても、あなたが死なない理由にはならない」
「……助けてくれ。何でもするから……。賠償もするからさ……。家族がいるんだよ……。体の弱い娘が……家で待ってるんだっ! 頼むよ……」
「……いいことを教えてやる。俺は【鑑定】持ちなんだわ」
「――っ!」
将来的に【鑑定】か【解析】で嘘を発見できるようになるかもしれないが、今はまだ無理だ。
代わりに【魔力感知】で、御者の魔力の流れを計測していた。ポリグラフ検査のように魔力の流れに異常が発生すると、嘘をついていたり隠し事をしていたりするそうだ。
ご主人様が魔眼について聞いてきたときに感じた誤魔化せない感覚というのが、ご主人様の魔力によるものらしく、俺を魔力で包み込んでポリグラフ検査をしていたらしい。
違和感に気づいたことを褒められ、褒美にやり方を伝授してもらった。
今回はじっくり観察できる対象がいたため、御者を練習の教材にしてみたのだ。
「だから、嘘はすぐに分かるんだよ? なぁ、独身さん?」
「――クソックソックソッ」
「遺言はそれでいいのか?」
「たかが木の一本でっ」
「たかが御者の一人だろ? あなたの命は樹木よりも価値がない」
熊天使が初めて縄張りを示した、初めての縄張り記念樹木だぞ?
掃いて捨てるほどいる普人族の命など、比べることすらおこがましい……というのが、化け物級魔獣の総意だ。
俺は単純に、巻き込んだことへの報復しか考えていない。
「――ブッ殺してやるっ」
「面白い。やってみればいい。俺は今からあなたの仲間の無念を晴らしてあげるつもりだけど、別に感謝はしなくていいからね」
「火よ、燃え盛れ――がッ」
「ほら、詠唱をしないと」
「なっ……何が……」
御者の間抜けな行動のせいで冥府に旅立つことになった仲間が、全部で十四人にいる。内訳は、目の前にいる御者以外に二人の御者がおり、さらに十二人の護衛がいた。
なお、つるりんは使用者責任の発生により、巻き込まれたとは言えない。
むしろ、間抜けを雇った人物であることを考えれば、主犯はつるりんだろう。
俺はつるりん以外の死者の武器を集め、彼らの無念を晴らすために、全滅の原因になった御者に突き刺している。
全員分の武器をさせるように刺す場所を調整していると、まるで黒○げ危機一発をしているみたいで、少しずつ楽しくなっていった。
同時に、一本一本刺していく度に胸がすいていくのを感じた。
「ほらぁ、殺すんだろ?」
「ひ、火よ……」
「最初からなの?」
スティレットと呼ばれる刺突武器を頬に突き刺し、両頬を貫通させる。
「ぐあぁぁあ……」
「どう? 発音できそう?」
「ひ……火ひょ……」
「あとは鉤爪だけだから頑張って」
「エンジェル・ハグ」
両脇腹に挟むようにして突き刺し、グリグリと奥へ押し込んでいく。
「ぐふ……ぅ……ぅ……」
「やっと終わった」
魔力の残量も百を切ったから、そろそろ休んで回復したい。
「さて、後始末の時間ですね」
面倒くさいけど、このまま放置はできない。
それに終わったら俺も解放だ。
危険領域はさっさと離脱するに限る。
「では、雇い主さんの処遇ですね。といっても、もう雇い主云々は関係ないんですけどね」
「――っ」
理由を聞きたいけど、口を開けないから顔芸でどうにかしようとしているのかな?
「一人ずつ挙手して下さい。指された方のみ質問して構いません。――質問だけですよ?」
直後、全員が挙手した。
「はい、お嬢様」
「えーと……何故雇用関係は関係ないのでしょうか?」
まずは、「助けてくれてありがとうございます」だろ?
質問だけとは言ったが、礼儀を欠けとは言っていないぞ?
そういうところだよ?
自分の尻に火がつかないと思考を始めないというのは、貴族のデフォルトなのか?
「……あなたの首につけているのは何ですか? 現在の所有者は誰だと思いますか? 所有者が所有物を守るのは普通ではありませんか?」
「……? 所有者は誰ですか? というなら、私自身だと思うのですが?」
「は? それは奴隷の首輪でしょ? 違いますか?」
「……そうです」
「ですよね? 逃亡奴隷は犯罪です。だから所有者はつるりんでしたよね? ここまでは分かります?」
「……私は違法奴隷です」
「分かるかと聞いているんだけど?」
「……分かります」
「結構です。では、賊として俺を襲ってきたつるりんを、俺は討伐しました。賊の所有物は誰のものになるでしょうか? 分からない人、いますか?」
「…………」
「そもそもあなた方もつるりんの所有物と、所有物を守る護衛という関係です。つるりんが俺を襲った時点で共犯なんですよ?」
「でも……」
「挙手ぅーー」
今度はお嬢様の隣にいたメイドさんに権利を与える。
「質問の前に、脅威を排除して下さり感謝申し上げます」
深々と頭を下げて謝意を示すメイドさんの姿には好感が持て、ようやく人間と会話していると実感できた。
「あなたほど人間らしい人は初めて見ました。この大陸に来て日が浅いですが、今まで会った人間で御礼を言った人はあなたくらいです。好きなだけ質問して下さい」
礼儀を欠いたお嬢様を遠回しに人間ではないと言い、特別待遇を受ける対象を変更した。
彼女の後に御礼を言う人物に価値はない。
真似っこなら誰でもできるからだ。
「それでは失礼して、契約内容の確認をしたいのですが?」
「契約は、報酬を払うから殲滅対象に入れないという内容でした。戦闘行為を邪魔したせいで、巻き込まれた人が数人死亡しましたが、殲滅されてはいないでしょう? それに、自分のせいで他人が死ぬということが学習できたでしょう? まぁ契約外の実習については、サービスとしておきます」
「……ありがとうございます」
「いいのですよ」
おそらく彼女は、自分が助けられた側だと確信しているのだろう。
それもそのはず。
彼女は悲鳴を上げたお嬢様に一番近かった人物だったのに、お嬢様の悲鳴で死んだ人物は騎士団長だ。
俺は騒動のきっかけが無事というのは納得がいかないことと、魔法がお嬢様に当たる可能性を考えて、少し遠目の騎士団長を攻撃した。
でも、メイドさんが曲解してくれたのだとしたら、それは結果的に良かったかもしれない。
まともに会話できる人間がいれば、後始末をする上で助力を得られそうだ。
「では次に、報酬に関して聞きたいと思います。奴隷商人との戦闘が終わっても私たちが生きている時点で、契約は満了したと思われます。であれば、今後の話をするよりも、先に報酬を払うべきだと思いますので」
「そのとおりですね。素晴らしいです。本来なら雇い主がすることなのですがね……。まぁ物になってしまったので、今回は見逃して差し上げます」
奴隷は物扱いなのだ。
物が交渉という高度な行動をとれなくても仕方ない。
だって、人間じゃないもん。
「俺の希望する報酬は金銭ではございません。新しい契約を結んでもらうことです」
「契約ですか?」
「はい。あなた方は、おそらく王国の貴族でしょう?」
「……はい」
「あっ、家名は言わなくて結構ですよ。契約内容の一部に関わってきますからね」
「具体的にどのようなものでしょうか?」
「貴族は助けられたら、面子を気にして招待しようとするじゃないですか? 普通の危機を救ってもらった場合は、後援という名の首輪をつけようとするでしょ? さらに、家門に関わるような秘事に関わった場合は、飼い殺しか殺処分するでしょ?」
「……私には分かりかねます」
「別に分からなくてもいいのです。俺が分かってますから、分からないことはドンドン聞いて下さい」
「……はい」
分からないという下手くそな言い訳で逃げられると思うなよ?
俺はすでに山登り前に経験済みだからな。
それに、権力者の行動に国境や種族は関係ない。
自己中心的な考えのもと行動し、他人の命など路傍の石のごとき扱いで踏みにじっていくのだ。
お嬢様が奴隷になったという超弩級の不祥事を、彼らの家門がもみ消さないはずがない。
対応をミスれば、新しいストーカーにつきまとわれることになるのだ。
ということで、ストーカー対策を含んだ契約を結ばせてもらう。
苦手な方はお気をつけ下さい。
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瀕死の御者が自分に害をなす是非を問うてきた。
何があろうとも俺の答えは決まっているが、死の淵に立つまで黙っていたほどの切り札であるらしいから、御者の遺言だと思って聞いてあげよう。
「あなたにしたことの是非を問うているなら、当然『是』だ。これ以外の答えを持ち合わせていない」
「お、俺は……ギルドに所属しているんだぞっ」
……だから何だよ。
紙に名前書いてカード作れば、誰でもギルドに所属できるだろうに。
「なんだ、そんなことか。どこぞの王族か高位貴族かと思ったじゃん。誰でもなれるもので威張られてもなぁ」
「俺は境界都市の所属だぞっ!」
「だから?」
「境界都市のギルドが奴隷の販売を認めているんだっ! 俺たちが納品しなければ、損害を出した原因であるあんたに報復がいくんだからなっ!」
「……あなた方が納品しなかったら、代わりの人たちが納品すると思うけど? あなた方の代わりは、掃いて捨てるほどいるだろうからね。それに、損失を出したってどうやって知るんだ? あなたはこれから死ぬのに」
「――あの獣人たちが言うに決まっているだろっ!」
彼らは言葉を発することができない状況だから、顔で異論があることを表していた。
なかなか器用だ。
「そもそもアイツらの領地は、領主も黙認するほど違法奴隷の温床なんだよっ。たまたま今回の被害者が、自分たちの身内だっただけだろっ!? しかも、俺たちは依頼されたんだっ! 俺たちは悪くないっ!」
「まぁどちらも自業自得であり、俺を巻き込んだことは分かった。――それで、ギルドは違法奴隷を公認しているということでいいのかな?」
「…………」
「答えられるわけないか。もし『是』だと言えば、仮に生き延びても報復を受けるのはあなたになり、口封じに殺されるはず。そして『非』だと答えれば、ギルドからしてもあなた方は違法行為をした犯罪者。感謝されても報復を受けることは、表向きはありえない。裏では来るかもしれないけどね。どちらにしても、あなたが死なない理由にはならない」
「……助けてくれ。何でもするから……。賠償もするからさ……。家族がいるんだよ……。体の弱い娘が……家で待ってるんだっ! 頼むよ……」
「……いいことを教えてやる。俺は【鑑定】持ちなんだわ」
「――っ!」
将来的に【鑑定】か【解析】で嘘を発見できるようになるかもしれないが、今はまだ無理だ。
代わりに【魔力感知】で、御者の魔力の流れを計測していた。ポリグラフ検査のように魔力の流れに異常が発生すると、嘘をついていたり隠し事をしていたりするそうだ。
ご主人様が魔眼について聞いてきたときに感じた誤魔化せない感覚というのが、ご主人様の魔力によるものらしく、俺を魔力で包み込んでポリグラフ検査をしていたらしい。
違和感に気づいたことを褒められ、褒美にやり方を伝授してもらった。
今回はじっくり観察できる対象がいたため、御者を練習の教材にしてみたのだ。
「だから、嘘はすぐに分かるんだよ? なぁ、独身さん?」
「――クソックソックソッ」
「遺言はそれでいいのか?」
「たかが木の一本でっ」
「たかが御者の一人だろ? あなたの命は樹木よりも価値がない」
熊天使が初めて縄張りを示した、初めての縄張り記念樹木だぞ?
掃いて捨てるほどいる普人族の命など、比べることすらおこがましい……というのが、化け物級魔獣の総意だ。
俺は単純に、巻き込んだことへの報復しか考えていない。
「――ブッ殺してやるっ」
「面白い。やってみればいい。俺は今からあなたの仲間の無念を晴らしてあげるつもりだけど、別に感謝はしなくていいからね」
「火よ、燃え盛れ――がッ」
「ほら、詠唱をしないと」
「なっ……何が……」
御者の間抜けな行動のせいで冥府に旅立つことになった仲間が、全部で十四人にいる。内訳は、目の前にいる御者以外に二人の御者がおり、さらに十二人の護衛がいた。
なお、つるりんは使用者責任の発生により、巻き込まれたとは言えない。
むしろ、間抜けを雇った人物であることを考えれば、主犯はつるりんだろう。
俺はつるりん以外の死者の武器を集め、彼らの無念を晴らすために、全滅の原因になった御者に突き刺している。
全員分の武器をさせるように刺す場所を調整していると、まるで黒○げ危機一発をしているみたいで、少しずつ楽しくなっていった。
同時に、一本一本刺していく度に胸がすいていくのを感じた。
「ほらぁ、殺すんだろ?」
「ひ、火よ……」
「最初からなの?」
スティレットと呼ばれる刺突武器を頬に突き刺し、両頬を貫通させる。
「ぐあぁぁあ……」
「どう? 発音できそう?」
「ひ……火ひょ……」
「あとは鉤爪だけだから頑張って」
「エンジェル・ハグ」
両脇腹に挟むようにして突き刺し、グリグリと奥へ押し込んでいく。
「ぐふ……ぅ……ぅ……」
「やっと終わった」
魔力の残量も百を切ったから、そろそろ休んで回復したい。
「さて、後始末の時間ですね」
面倒くさいけど、このまま放置はできない。
それに終わったら俺も解放だ。
危険領域はさっさと離脱するに限る。
「では、雇い主さんの処遇ですね。といっても、もう雇い主云々は関係ないんですけどね」
「――っ」
理由を聞きたいけど、口を開けないから顔芸でどうにかしようとしているのかな?
「一人ずつ挙手して下さい。指された方のみ質問して構いません。――質問だけですよ?」
直後、全員が挙手した。
「はい、お嬢様」
「えーと……何故雇用関係は関係ないのでしょうか?」
まずは、「助けてくれてありがとうございます」だろ?
質問だけとは言ったが、礼儀を欠けとは言っていないぞ?
そういうところだよ?
自分の尻に火がつかないと思考を始めないというのは、貴族のデフォルトなのか?
「……あなたの首につけているのは何ですか? 現在の所有者は誰だと思いますか? 所有者が所有物を守るのは普通ではありませんか?」
「……? 所有者は誰ですか? というなら、私自身だと思うのですが?」
「は? それは奴隷の首輪でしょ? 違いますか?」
「……そうです」
「ですよね? 逃亡奴隷は犯罪です。だから所有者はつるりんでしたよね? ここまでは分かります?」
「……私は違法奴隷です」
「分かるかと聞いているんだけど?」
「……分かります」
「結構です。では、賊として俺を襲ってきたつるりんを、俺は討伐しました。賊の所有物は誰のものになるでしょうか? 分からない人、いますか?」
「…………」
「そもそもあなた方もつるりんの所有物と、所有物を守る護衛という関係です。つるりんが俺を襲った時点で共犯なんですよ?」
「でも……」
「挙手ぅーー」
今度はお嬢様の隣にいたメイドさんに権利を与える。
「質問の前に、脅威を排除して下さり感謝申し上げます」
深々と頭を下げて謝意を示すメイドさんの姿には好感が持て、ようやく人間と会話していると実感できた。
「あなたほど人間らしい人は初めて見ました。この大陸に来て日が浅いですが、今まで会った人間で御礼を言った人はあなたくらいです。好きなだけ質問して下さい」
礼儀を欠いたお嬢様を遠回しに人間ではないと言い、特別待遇を受ける対象を変更した。
彼女の後に御礼を言う人物に価値はない。
真似っこなら誰でもできるからだ。
「それでは失礼して、契約内容の確認をしたいのですが?」
「契約は、報酬を払うから殲滅対象に入れないという内容でした。戦闘行為を邪魔したせいで、巻き込まれた人が数人死亡しましたが、殲滅されてはいないでしょう? それに、自分のせいで他人が死ぬということが学習できたでしょう? まぁ契約外の実習については、サービスとしておきます」
「……ありがとうございます」
「いいのですよ」
おそらく彼女は、自分が助けられた側だと確信しているのだろう。
それもそのはず。
彼女は悲鳴を上げたお嬢様に一番近かった人物だったのに、お嬢様の悲鳴で死んだ人物は騎士団長だ。
俺は騒動のきっかけが無事というのは納得がいかないことと、魔法がお嬢様に当たる可能性を考えて、少し遠目の騎士団長を攻撃した。
でも、メイドさんが曲解してくれたのだとしたら、それは結果的に良かったかもしれない。
まともに会話できる人間がいれば、後始末をする上で助力を得られそうだ。
「では次に、報酬に関して聞きたいと思います。奴隷商人との戦闘が終わっても私たちが生きている時点で、契約は満了したと思われます。であれば、今後の話をするよりも、先に報酬を払うべきだと思いますので」
「そのとおりですね。素晴らしいです。本来なら雇い主がすることなのですがね……。まぁ物になってしまったので、今回は見逃して差し上げます」
奴隷は物扱いなのだ。
物が交渉という高度な行動をとれなくても仕方ない。
だって、人間じゃないもん。
「俺の希望する報酬は金銭ではございません。新しい契約を結んでもらうことです」
「契約ですか?」
「はい。あなた方は、おそらく王国の貴族でしょう?」
「……はい」
「あっ、家名は言わなくて結構ですよ。契約内容の一部に関わってきますからね」
「具体的にどのようなものでしょうか?」
「貴族は助けられたら、面子を気にして招待しようとするじゃないですか? 普通の危機を救ってもらった場合は、後援という名の首輪をつけようとするでしょ? さらに、家門に関わるような秘事に関わった場合は、飼い殺しか殺処分するでしょ?」
「……私には分かりかねます」
「別に分からなくてもいいのです。俺が分かってますから、分からないことはドンドン聞いて下さい」
「……はい」
分からないという下手くそな言い訳で逃げられると思うなよ?
俺はすでに山登り前に経験済みだからな。
それに、権力者の行動に国境や種族は関係ない。
自己中心的な考えのもと行動し、他人の命など路傍の石のごとき扱いで踏みにじっていくのだ。
お嬢様が奴隷になったという超弩級の不祥事を、彼らの家門がもみ消さないはずがない。
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