めざせ魔獣博士!!~筆は剣より強し~

暇人太一

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第2章 モフモフ天国

第25話 モフ菓子作り

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 おはようございます。
 最高の景色を臨みながらの起床は気持ちのいいものですね。
 ――下を見なければ。

「やっぱりいるぅーー……」

 川に近いからか、そこそこ大きい蛙が木の下にひしめき合っている。
 ギフトの【筆】を召喚して、槍モードに変えた。本来なら槍にしたところで届かないのだが、蛙くんたちは跳びはねてくれるため、ひたすら叩き落とすだけで良い。
 俺だって蛙の素材が大量に手に入っても、蛙くんをどうすればいいか分からないのだ。
 だから積極的に狩りはしない。

 ちなみに蛙くんの種族は、大蟇蛙ビッグトードというらしい。
 彼らに注意しながら戦力確認をする。


【名 前】ソウマ・ハヤシダ
【年 齢】15歳
【性 別】男性
【種 族】上位人族
【職 業】魔獣学者
【レベル】23
【状 態】健康
【従 魔】

【元気量】720
【魔力量】720
【ギフト】筆
【スキル】
〈固 有〉観見の魔眼
     魔獣図鑑
     無詠唱
〈常 時〉頑強:5
     悪食:5
     「特殊耐性」
     精神耐性:6
     苦痛耐性:7  
     飢餓耐性:3
     疲労耐性:5
     封印耐性:4
     即死耐性:5
     「環境耐性」
     不浄耐性:4
     塵埃耐性:5
     「異常耐性」
     毒耐性 :5
     病気耐性:3
     硬直耐性:4
     魅了耐性:7
     恐怖耐性:5
     恐慌耐性:4
     「物理耐性」
     打撃耐性:5
     衝撃耐性:3
     斬撃耐性:3
     貫通耐性:3
     「魔法耐性」
     火炎耐性:3
     烈風耐性:3
     水魔耐性:3
     岩土耐性:3
     閃光耐性:2
     闇影耐性:2
     鑑定妨害:7
     無音歩行:─
     身体制御:─
〈任 意〉魔力感知:10
     魔力操作:10
     闘気操作:1
     身体強化:3
     気配遮断:5(+1)
     気配察知:6
     危機察知:4
     魔力察知:3
     気配感知:5
     索敵:4(+3)
     隠形:2(+2)
     筆術:3  呼吸:10
     合気:6  気功:─
     幽歩:6  転歩:3(+2)
     硬身:5  柔身:3
     投擲:4  雷声:3(+2)
     料理:4  裁縫:3
     掃除:3  洗濯:1
     速読:4  暗記:3
     解析:4  鑑定:5
     偽装:5  観察:10
     テイム:1
     魔獣親和:2
     火属性魔法:5
     風属性魔法:5
     水属性魔法:5
     土属性魔法:5
     光属性魔法:5
     闇属性魔法:5
     無属性魔法:5
【魔 法】
〈Lv1〉魔力撃 着火 送風 清水 
     掘削  光  闇  念動
〈Lv2〉魔力弾 加熱 警報 乾燥
     清潔  手当 無臭 念板
     小火弾 微風弾 滴水弾
     石礫弾 閃光弾 暗転弾
【称 号】異世界人  (隠蔽)
     生命神の加護(隠蔽)
 

 レベルが上がったのは蛙くんのおかげだろう。
 最初の一匹は必ずレベルが上がるらしいから、今回も蛙くんの分がもらえたはず。
 それに人間を殺してもレベルは上がらないしね。スキルレベルが上がるだけマシだ。そうでなければ対人戦なんか時間の無駄でしかない。

 今日はモフ菓子を作りたいから、蛙くんに構っている余裕はない。
 素材はもったいないけど、あの中に飛び込みたくないからそのまま逃げよう。駄犬の足の速さを見せてやる。

「さらば」

 ――【転歩】。

 木から木に飛び移り、【気配遮断】を発動しつつ次々に飛び移っていく。

「ここまで来ればなんとか……」

 なったかと思ったのだが、次はオークの登場だ。
 何なんだ、この山は。
 次から次へと魔獣が現れおってからに。

「プゴッ」

「プゴップ」

 さっさと行け。
 持ち運びできれば討伐しても良かったが、山越えの序盤も序盤で大量の荷物など抱えたくない。
 それに解体の仕方も分からないし、血の臭いで魔獣が集まっても困る。

 この場合の最適解は、無視である。

「プゴッ?」

「プゴップゴッ」

 おい。井戸端会議してるなよ。
 帰ってメシ作ったりしないといけないだろ?
 家族が待っているぞ。
 早く帰ってあげろよ。

「プゴーーッ」

「プゴップゴッ」

 やっと帰った。
 話が長いんだよ。

「ご主人様、すでに心が折れそうです……」

 修業のときに何度も心が折れかけたが、その度に「やれば水スライムを渡す。やらねば殴る」という激励を受けた。
 それを思い出し、自分の心に活を入れる。

「ご主人様の御褒美が待っているんだ」

 樹上移動で気をつける点は三つ。
 空からの奇襲、擬態した魔獣の存在、そして毒持ちの植物。
 落下は基本的すぎて気をつけるまでもない。

 気持ち的には小学生の時に散々遊んだ、『白線から落ちたら地獄行き』と同じ心境だ。
 実際木から落ちたら、化け物級の魔獣がわんさかやってきて、昨日以上の集団戦に引きずり込まれるだろう。
 そうなれば、軽く死ねる。

「あっ、植物だ……。果物に見えるけど……」

 見たことないものを見つけたときは、【鑑定】、知識様、【解析】のコンボ解析をするように決めている。
 まずは【鑑定】で名前を明らかにし、知識様による予習をした後、【解析】をして詳細を調べることで漏れや抜け埋めていく。

 【トリルの実】
  分類:果実
  品質:高品質
  詳細:活力が漲る果実
     魔素が豊富な場所限定で実る
     各種魔法薬や薬剤に使用される
     鮮度が落ちるのが早い
     毒ありの実と酷似している
     適正購入価格=時価
     適正販売価格=時価
  備考:モフ菓子にすると美味しいよ

「おぉ。水スライムを超える御褒美の登場か? あと、最後の文章は無視でいいかな」

 でも、ご主人様や先輩にも食べさせて上げたいからなぁ。結局作らざるを得ないのか。
 なんか釈然としないんだよな。

「とりあえず一つ食べてみよう。もぎたてなら鮮度を気にしなくてもいいし」

 西洋梨そっくりの果物を優しくもいで、《清潔クリーン》で綺麗にする。
 そしてそのまま口へと持っていき、豪快にかぶりついた。

 ――美味いっ!

 緑の状態のなつめの実のようにシャリシャリとした食感が気持ちよく、味もさっぱりしている。
 控え目な甘さや香りから果物というよりは木の実に近く、薬剤の素材に使用されるというのも納得できた。
 それでも水スライム以外で初めての甘味に心が満たされ、体から疲れがとれたように感じられた。

「素晴らしい実だ」

 できる限りたくさん採っていこうと決め、背負っていた背嚢から大きな布を取り出す。
 風呂敷バッグのようなものを作って、一個一個【鑑定】しながら採取していった。

「モフ菓子の材料なんだからポーチに入れさせてくれればいいのに……」

 ズルをさせないためなのか、モフ菓子以外に使わせないようにしているポーチに対し、若干の不満をぶつける。

「伝説級の魔導具なのに……」

 もう少し融通を利かせて欲しいものだ。
 誰の意思か知らないけど、モフ菓子製造機を送ってきた相手の注文は最後に回させてもらう。

「よし、終わった」

 まだ少し残っているけど、周囲の魔獣も食べるだろうから残しておこうと思う。
 採り尽くしたせいで俺が襲われるとかは絶対に嫌だからね。

「少し移動したら、悪くなる前にモフ菓子を作ろうかな」


 ◆


 見通しの良い丘のような場所があり、そこで休憩がてらモフ菓子製造機を起動することにした。
 まずは、トリルの実のドライフルーツを作るところから始めよう。
 というのも、モフ菓子製造機に登録されているレシピの中で、今すぐ作れそうな物はドライフルーツしかないのだ。

 ドライフルーツさえ作れば、ドライフルーツを材料にした別のレシピが作れる。

「モフ菓子製造機は伝説級に見合った性能だね。何もしなくていいところが特に」

 材料を入れてレシピを選択する。
 あとはスタートボタンを押すだけだ。

 まぁ一応下処理で《清潔クリーン》をかけたり、種の部分をくり抜いたりしたけどね。

「種の周りは俺がもらおう」

 栄養豊富だと言われる場所をリスみたいのカリカリと食べ続けていき、薬の素材にもなる種を取り出す。
 食後にまとめて水洗いして商材にするつもりだ。

「あれ? もしかして……」

 トリルの実を食べながら魔力循環していると、ほんの少しだが体に吸収された気がした。
 ステータスで確認してみても変化がないため、本当に微々たる量の吸収しかされていないか、吸収する方法が間違っているかだろう。

「まだまだ知らないことだらけだな」

 自分の無知に情けなさを感じ、同時に色々教えてくれたご主人様への感謝の気持ちが強まる。

「そういえば、御礼のお使いがあったなー。同僚や同族に手紙を届けるんだっけ」

 ……ん? 同僚? 同族?

「え? 同僚っ!?」

 ご主人様の種族は知らない。
 だって【鑑定】したら殴るって言われたし。
 でも……でも……職業は知ってる……。

「アルカナ大迷宮の管理者……」

 同僚って、そういうことなの?
 違うって言って……。

「ご主人様みたいに第一階層に来てくれないかな……」

 基本的に管理者は最奥にいるから、必然的に大迷宮の踏破をしなければいけないことになる。

「この駄犬めは無知で無能なのです……。どうか間違いであって欲しいっ!」

 ――チーン。

 俺の悩みはお呼びでないと。
 タイミング良く鳴りやがって。

「……はいはい。今行きますよ」



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