めざせ魔獣博士!!~筆は剣より強し~

暇人太一

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第1章 転生からの逃亡

第8話 能力確認

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 書物類は本棚に仕舞い直し、食器や道具類は木箱に入れて蓋をする。特に使いそうにないものを。

「本棚があるのに平積みにする意味が分からん。取ったら元の場所に戻せよ」

 俺は綺麗に並んだ本棚を見て悦に浸る人間だからか、収納できるのに平積みになっている本を見るとイライラしてくる。
 収集癖があるというのも関係しているかもしれないけど、抜けとかあるとソワソワが止まらない。

「期待してなかった。倉庫の中の本棚が抜けだらけなのは想定内。本の中身が虫食いになっているのも想定内。だけど……すっきりしないなぁ」

 ほとんどが恋愛小説に哲学書というどうでもいい内容の本しかなく、唯一使えそうな本を見つけたのに虫食いが酷い。
 魔法の使い方と取得方法が記されているんだけど、一番大切な基礎が載っているであろう最初の数枚が壊滅的だ。
 後側の数枚も穴だらけで、無事なのは真ん中だけ。

「一瞬で勉強が終わりそうだ」

 勉強はそこそこに、今はベッドを作っている。
 不要品の木箱を敷き詰めた上に高そうな絨毯を重ねて敷き詰め、現在洗濯中のシーツを被せて完成だ。

 掃除と整理整頓が一段落したため、ご飯をもらいに行こうと思う。
 使用人の交代があるのか、それとも休憩時間なのか知らないが、使用人の多くが倉庫の近くを移動している。

「すみませーんっ! ご飯をくださーい!」

「――えっ!? どちら様ですかっ!?」

 下級侍女というのかな?
 違いはよく分からないけど、かなり若い。
 年功序列の貴族社会で上級ってことはないだろう。
 何より俺について知らない。
 この時期、この場所に珍しい黒髪の少年がいたらおかしいだろうに、誰だと誰何してしまう。
 つまり、召喚のことを知らされていない身分の者だということ。

「異邦の地から参りました、客です」

「お、お客様が……どうしてこちらに?」

「そこの倉庫が新居だからです。食事については何も言われていなかったので、どうすればいいかと確認に来ました」

「か、確認して参ります!」

 新居で待っていろと言われたから、大人しく勉強でもして待つとしよう。


 ◆


 おはよう。
 みんなはよく眠れたかな?
 俺は無理だったよ。
 だって、お腹空いてたからね。

「あのクソメイドっ! 泣かすっ!」

 空腹なら水飲めっ!
 という阿呆がたまに居りますが、煮沸してない水なんか飲めるか。

 ではどうしたか?
 スキル【鑑定】でサルビアの花みたいな花を見つけて、チュウチュウと蜜を吸って空腹を紛らわし、水分の補給もした。
 おかげで眠い割には元気がある。
 植木は死に体だけど。

 あの上級侍女が言っていたことが本当なら迎えが来るみたいだから、その前にステータスの確認をしておこう。
 訓練方針を決めるためにも自分の能力は把握しておかないとね。


【名 前】ソウマ・ハヤシダ
【年 齢】15歳
【性 別】男性
【種 族】上位人族
【職 業】魔獣学者
【レベル】15
【状 態】健康
【従 魔】

【元気量】400
【魔力量】400
【ギフト】筆
【スキル】
〈固 有〉観見の魔眼
     魔獣図鑑
〈常 時〉頑強:2(+1)
     精神耐性:4
     苦痛耐性:5
     魅了耐性:5
     鑑定妨害:5
〈任 意〉魔力感知:4
     魔力操作:5
     闘気操作:1
     身体強化:1
     気配察知:3
     気配遮断:3
     索敵:1  隠形:1
     解析:1  筆術:1
     呼吸:4  歩法:3
     速読:4  暗記:3
     観察:3  料理:3
     鑑定:1  偽装:4
     テイム:1 魔獣親和:1
     火属性魔法:1
     風属性魔法:1
     水属性魔法:1
     土属性魔法:1
     光属性魔法:1
     闇属性魔法:1
     無属性魔法:1
 魔 法:
 称 号:異世界人  (隠蔽)
     生命神の加護(隠蔽)


 偽装を解いたステータスだ。
 ユニークスキルを含めたいくつかの項目が気になるが、上から順番に見ていくとしよう。

「【鑑定】」

 ステータスの表示はともかく、詳細の確認は【鑑定】のスキル等が必要不可欠らしい。
 忘れず取得した自分を褒めてあげたい。

「まずは無難に【魔獣学者】からにしよう」

 説明によると、学者系職業の中でもフィールドワークをするおかげで、戦闘系に関するスキルの習得習熟に対してデメリットはない。
 ただし、戦闘系のような専門的な補正もない。補正があるのは学術系スキルのみ。

 これがメリットとデメリットの表記がなかった理由だ。

 代わりに、学者系共通の特性がある。
 研究ポイントというものだ。
 ラノベで定番のレベルが上がるとスキルポイントがもらえるという特典の、研究版のようなものらしい。
 エルモアールにはスキルポイントというものは存在しないが、それぞれ賞与ポイントが存在する。
 パワーレベリング対策かもしれない。
 先人と被るかもしれないから、結果はともかく研究の過程を神に認められたとき、賞与ポイントがもらえる。
 このポイントは研究のテーマに関係したスキルのレベル上げに使ったり、低確率で進化させられたりするらしい。

 俺は【魔獣学者】だから魔獣関係しか研究できないかと思うが、そういうものではないらしい。
 学者という大きな枠組みは有利に働くらしく、魔法の研究をしていれば研究と魔法の賞与ポイントがそれぞれもらえるといった仕組みらしい。

 素晴らしい。
 学術系だけでは貧弱だけど、魔法の研究をして認められれば魔法師になることはでき、戦力的にも不安は減るだろう。

 ただ、武術の研究って何?
 見たことがない【筆術】の研究でいいのかな?
 多分、ギフトの【筆】と関係していると思われる。

「そもそもギフトってどうやって使うんだ?」

 詠唱とか必要なのか?

「筆よ、――」

 出ろっ! と言う前に右手に握られていた。
 むしろ、右手に筆が握られているようにと想像した時点で出現していた。

「……はずっ」

 思わず周囲を確認してしまうほどの恥ずかしさに体がほてる。

「普通……」

 恥ずかしい思いをするはめになった元凶を確認すると、書道のときに使っていた普通の毛筆用の筆だった。
 木製の持ち手に白い筆部分。
 特に変わった点はない。

 ちなみに前世では書道四段だった。
 いきなり何をと思うかもしれないが、取得した覚えのないスキルが前世由来のボーナススキルだったとしら、書道四段の経験が【筆術】に反映されていなければおかしい。
 それなのにレベルは一のまま。
 つまり、前世で使っていた方法とは違う用途がこの何の変哲もない筆にはあるということだ。

「これで殴るんか? くすぐったそうだぞ? ――あっ」

 恥ずかしさのせいで【鑑定】するのを忘れていた。
 改めて鑑定して説明を読む。

 〈突かば槍、払えば薙刀、持たば太刀、打てば棍棒、隠せば暗器、示せば魔法、開けば綱、飛ばせば針、筆はかくにもはずれざりけり〉

 ……おい。どこかで見聞きしたことがあるぞ。
 杖との共通点は木製なだけだろ。

 〈基本能力〉
  自動召喚 = 念じた場所(半径2m)
  自動送還 = 念じて収納
  自動修復 = 損傷時から(不滅)
  自動洗浄 = 洗浄殺菌 (浄化も)

 〈固有能力〉
  寸法変更 = 大きさ変更
  捕食進化 = 素材+武器
  魔獣武装 = 魔核の吸収
  図鑑連動 = 魔獣図鑑と連動

 なるほど。大きさが変わるなら、筆先がついた杖になるかも。

 ギフトをもらったときに追加された知識に、ギフトは無双型、汎用型、成長型で分けられているとあったが、俺は成長型ギフトらしい。
 無双型は生贄勇者だけということは分かっていたが、まさか自分が大器晩成型ギフトだったとは。

 だって、最初はショボいんだよ?
 器用貧乏の方がよかったのでは? と思わなくもないが、女神様が選んでくれたのだから意味があるのだろう。

 ここは無人だが、誰が監視しているか分からないから大きくするのはやめておこう。
 学者が普通の筆を出したと思われていた方が無駄な期待を持たれずに済む。逃亡もしやすくなるだろう。

 さて、ユニークスキルの【魔獣図鑑】だ。
 これもギフトと同じで召喚できるらしく、早速召喚してみた。
 大きさはA4サイズの本で、中身は再生紙みたいな薄い黄色っぽい色になっている。
 魔獣の情報など一文字も載っていない。
 情報が記載されるだろう枠だけはあるけど。

「これはアレか? 三色の魔獣を選ぶところから始めるのか? いや、俺の場合はネズミになりかけたか……」

 初めて魔獣を見れば情報が載るのかと思ったが、畳まれていた情報を見た瞬間、それは甘い考えだと悟った。
 現状情報を得ることは不可能。
 何故なら、魔獣図鑑や資料の読み取りまたは直接入力が必要だと分かったからだ。

 魔獣図鑑を作成するために、別の魔獣図鑑が必要とか意味不明だろ。
 資料がないからスキルに頼ろうとしているのに……本末転倒だ。

 使い方はよく分からないけど、討伐していけば情報は載るし、何か報酬がもらえるということだけはわかった。

 次は、【頑強】かな。
 病気や毒などに対する体の抵抗力を上げたり、上がったことを意味したりするパッシブスキルだ。
 転生直後なのに上がったということは、大掃除のおかげかもしれない。
 各種耐性スキルとも関連するから、そのうち何かしら耐性系スキルが生えるかもしれないな。

「最後は称号だ」

 一つ目の【異世界人】は、転生者が死んだ場合の死亡通知と死因記録の閲覧が可能という訃報機能らしい。
 知人がいない俺には関係なさそうだ。

 二つ目の【生命神の加護】は、スキルの成長補正一.五倍というありがたい効果に、元気量および魔力量の成長補正二倍という効果も。
 しかも、量補正は俺だけという注意書きもある。

「言えない……言えないよ……」

 バレないようにしないとと思いながら天に向かって感謝を告げていると、【気配察知】が反応する。
 転生から時間が経過したおかげか、徐々にスキルに慣れ始めていた。良いことだ。

「おはようございます。迎えに参りました」


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