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第1章 転生からの逃亡
第1話 転生準備
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俺の名前は、林田壮真。
親の転勤に合わせて転校することになったため、新しい高校の見学に訪れている。
本当は田舎の学校になど行きたくはない。
受験の苦労は何だったのかと自問自答してしまう。
だが、生活のために一人で残るとも言えない。
「はぁ……。――あれ? ここどこ?」
校内案内中に考え事していたせいで迷子になってしまったみたいだ。
幸い、教室に生徒や教師がいる。彼らに聞けば何とかなるだろう。
「あのー――」
そこで一度意識が途切れた。
また持病の発作かな?
最近はコントロールできていたのに……。
それにしてもいつになった声が出るようになるんだ?
周りの風景も保健室に運ばれた感じでもない。ひょっとして、もう病院に運ばれたとか? いつもはその前に目が覚めるのに。
――現実逃避はここまでにしておこう。
おそらく教室にいた人たちのほぼ全員が真っ白の空間にいる。
この状況は小説や漫画でよくあるパターンだ。
『全員目が覚めましたね』
何もない白い空間に、突然女性の声が聞こえてきた。
心なしか疲れているような印象を受ける怠そうな声だ。
『一度しか言いません。とある事故により、皆さんは仲良く死亡しました。心を痛めた女神様が慈悲をお与え下さるそうです』
ということは、声の主は天使様ってこと?
『転生を望む者はこちらの門を潜って先へ進んで下さい。望まない者は地球に帰ります。そちらの門を潜って下さい』
いや……。地球に帰ったら死ぬだろ。
俺は当然転生用の門だ。
声は出ないけど、体は普通に動く。
不思議だけど答えは出ないだろうから、門の先に進もう。
『それぞれ個室にお入り下さい』
先ほどとは別の声が門の先の案内を担当しているようで、俺は指示通り一番近い個室の扉を開く。
アレだ。テレワークのスペースにソックリだ。
設備は、正面に画面。机上にマイクとタッチパネルがある。
元々知り合いもいなかったから、個室の方がほっとする。
『皆さん初めまして。私はエルモアールの生命を司る女神です』
目の前の画面に女神様が映り、その美しい姿に一瞬見とれるも、反射的にあいさつを返す。
「初めまして。――あっ、声出た」
癖で返したあいさつのおかげで声が出る事実を知る。
その間も女神様の説明が続く。
要約すると、大規模な神隠しが発生して反動で死んだと。
事故に際して、神の介入は一切なかった。
心の底からお悔やみ申し上げますとのことだ。
『皆さんの転生をお手伝いする代わりに、私たちの困り事を解決してもらえないでしょうか? そこまで難しいことではないのです。私の敬虔な信徒に会っていただきたいだけです』
魔獣の王種のことを魔王と呼ぶ以外に魔王は存在しておらず、使命も特にないとのこと。
ただ単に、神はいつでも見守っているという証明をしてくれればいいと。
地球よりも神様に近い世界ということが垣間見える。
果たして、向かう国は普通の国なのか。
テロ予備軍とかじゃないことをただただ祈る。
まぁ転生の手伝いをしてもらっている時点で、答えは決まっているようなものでしょ。
というか……断る人いる?
『もし、王城以外に行きたい場所の希望があれば、マイクに向かって話してくれれば、その方は希望通りにさせていただきます』
王城……。王族決定だ。
『希望がなかった方々は自動的に王城行きとなりますが、よろしかったですか?』
「はい」
マイクの使い方が分からないから聞こえているかどうか不明だけど、一応返事しておく。
『では、ここから先は二人の天使に説明を変わらせていただきます』
女神様は忙しいんだろうな。
かなりの人数を転移させるわけだから。
『担当を変わりました。よろしくお願いします』
「お願いします」
今度は真面目そうな天使様だ。
どちらかというと可愛い系かな。
不敬だろうけど。
『王城行きを選んだ方はタッチパネルに片手の手のひらを当てて下さい。一瞬違和感があると思いますが、画面の光が消えるまでは手のひらを離さないで下さい』
「――おぉっ!」
静電気みたいになるかと思ったら、何か侵入してきたみたいにくすぐったかったという予想外の感覚に思わず声が出た。
「消えた」
そして気づく。
「人族至上主義国家か……。しかもキ○ガイ王女とか……ヤバっ」
前から知っていたことのように次々と情報を思い出していく。
『王城行きを選んでいただいた皆さんにささやかな御礼をさせていただきました』
「ありがとうございます」
知らずに転生とか……地獄しか想像できない。
『続きまして、ステータスの設定に移らせていただきます。エルモアールは剣と魔法の世界で、スキル制となっています。分からない方もいるかと思いますが、今は分からずとも後ほど設定時に質疑応答が可能となっていますので御安心下さい』
そう言えば、何故かおっさんもいたもんな。
スキル制とか知らなくても無理はないか。
『まずは【職業】を選んでいただきますが、各種一人ずつで早い者勝ちになっております。もし負けてしまった場合は、選択権の行使も一度だけですので、こちらで選ばせていただきます。それから、どの職業を選ばれたとしても、所謂チートというものは存在しませんので悪しからず』
天使様が映っていた画面に【職業】の階級が表示される。
特殊:臨時で創造
天級:選択不可
超級:エリート
上級:一般人
中級:十五歳で昇格可能
初級:選択不可
選択権は一度だけだ。
競争率が激しい特殊や超級はやめておこう。
基本的にスキル制の世界に転生する以上、ほとんどのスキルレベルは一だろう。
地道にレベル上げするなら、【職業】も一番下から始めた方がいい気がする。
ということは、中級かな。
「さて、どれを選ぼうかなー」
親の転勤に合わせて転校することになったため、新しい高校の見学に訪れている。
本当は田舎の学校になど行きたくはない。
受験の苦労は何だったのかと自問自答してしまう。
だが、生活のために一人で残るとも言えない。
「はぁ……。――あれ? ここどこ?」
校内案内中に考え事していたせいで迷子になってしまったみたいだ。
幸い、教室に生徒や教師がいる。彼らに聞けば何とかなるだろう。
「あのー――」
そこで一度意識が途切れた。
また持病の発作かな?
最近はコントロールできていたのに……。
それにしてもいつになった声が出るようになるんだ?
周りの風景も保健室に運ばれた感じでもない。ひょっとして、もう病院に運ばれたとか? いつもはその前に目が覚めるのに。
――現実逃避はここまでにしておこう。
おそらく教室にいた人たちのほぼ全員が真っ白の空間にいる。
この状況は小説や漫画でよくあるパターンだ。
『全員目が覚めましたね』
何もない白い空間に、突然女性の声が聞こえてきた。
心なしか疲れているような印象を受ける怠そうな声だ。
『一度しか言いません。とある事故により、皆さんは仲良く死亡しました。心を痛めた女神様が慈悲をお与え下さるそうです』
ということは、声の主は天使様ってこと?
『転生を望む者はこちらの門を潜って先へ進んで下さい。望まない者は地球に帰ります。そちらの門を潜って下さい』
いや……。地球に帰ったら死ぬだろ。
俺は当然転生用の門だ。
声は出ないけど、体は普通に動く。
不思議だけど答えは出ないだろうから、門の先に進もう。
『それぞれ個室にお入り下さい』
先ほどとは別の声が門の先の案内を担当しているようで、俺は指示通り一番近い個室の扉を開く。
アレだ。テレワークのスペースにソックリだ。
設備は、正面に画面。机上にマイクとタッチパネルがある。
元々知り合いもいなかったから、個室の方がほっとする。
『皆さん初めまして。私はエルモアールの生命を司る女神です』
目の前の画面に女神様が映り、その美しい姿に一瞬見とれるも、反射的にあいさつを返す。
「初めまして。――あっ、声出た」
癖で返したあいさつのおかげで声が出る事実を知る。
その間も女神様の説明が続く。
要約すると、大規模な神隠しが発生して反動で死んだと。
事故に際して、神の介入は一切なかった。
心の底からお悔やみ申し上げますとのことだ。
『皆さんの転生をお手伝いする代わりに、私たちの困り事を解決してもらえないでしょうか? そこまで難しいことではないのです。私の敬虔な信徒に会っていただきたいだけです』
魔獣の王種のことを魔王と呼ぶ以外に魔王は存在しておらず、使命も特にないとのこと。
ただ単に、神はいつでも見守っているという証明をしてくれればいいと。
地球よりも神様に近い世界ということが垣間見える。
果たして、向かう国は普通の国なのか。
テロ予備軍とかじゃないことをただただ祈る。
まぁ転生の手伝いをしてもらっている時点で、答えは決まっているようなものでしょ。
というか……断る人いる?
『もし、王城以外に行きたい場所の希望があれば、マイクに向かって話してくれれば、その方は希望通りにさせていただきます』
王城……。王族決定だ。
『希望がなかった方々は自動的に王城行きとなりますが、よろしかったですか?』
「はい」
マイクの使い方が分からないから聞こえているかどうか不明だけど、一応返事しておく。
『では、ここから先は二人の天使に説明を変わらせていただきます』
女神様は忙しいんだろうな。
かなりの人数を転移させるわけだから。
『担当を変わりました。よろしくお願いします』
「お願いします」
今度は真面目そうな天使様だ。
どちらかというと可愛い系かな。
不敬だろうけど。
『王城行きを選んだ方はタッチパネルに片手の手のひらを当てて下さい。一瞬違和感があると思いますが、画面の光が消えるまでは手のひらを離さないで下さい』
「――おぉっ!」
静電気みたいになるかと思ったら、何か侵入してきたみたいにくすぐったかったという予想外の感覚に思わず声が出た。
「消えた」
そして気づく。
「人族至上主義国家か……。しかもキ○ガイ王女とか……ヤバっ」
前から知っていたことのように次々と情報を思い出していく。
『王城行きを選んでいただいた皆さんにささやかな御礼をさせていただきました』
「ありがとうございます」
知らずに転生とか……地獄しか想像できない。
『続きまして、ステータスの設定に移らせていただきます。エルモアールは剣と魔法の世界で、スキル制となっています。分からない方もいるかと思いますが、今は分からずとも後ほど設定時に質疑応答が可能となっていますので御安心下さい』
そう言えば、何故かおっさんもいたもんな。
スキル制とか知らなくても無理はないか。
『まずは【職業】を選んでいただきますが、各種一人ずつで早い者勝ちになっております。もし負けてしまった場合は、選択権の行使も一度だけですので、こちらで選ばせていただきます。それから、どの職業を選ばれたとしても、所謂チートというものは存在しませんので悪しからず』
天使様が映っていた画面に【職業】の階級が表示される。
特殊:臨時で創造
天級:選択不可
超級:エリート
上級:一般人
中級:十五歳で昇格可能
初級:選択不可
選択権は一度だけだ。
競争率が激しい特殊や超級はやめておこう。
基本的にスキル制の世界に転生する以上、ほとんどのスキルレベルは一だろう。
地道にレベル上げするなら、【職業】も一番下から始めた方がいい気がする。
ということは、中級かな。
「さて、どれを選ぼうかなー」
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