怪物転生者は早期リタイアしたい~チートあるけど、召喚獣とパシリに丸投げする~

暇人太一

文字の大きさ
上 下
85 / 85
第三章 フドゥー伯爵家

閑話1 悪口計画開始

しおりを挟む
「まさか魔物使いの正体が賞金首の男だったなんて……」
「くくく、意外だったか?まあ当然だな。俺は表向きは傭兵として振舞ってきたからな……俺の正体が魔物使いだと知る人間はお前等が初めてだ」
「大人しく投稿しろ!!もうお前を守る魔物はいないぞ!!」


レノは室内ではあるが弓を抜いてセマカに構えた。相手の位置さえ分かれば狙いを外さず、もしもセマカが怪しい動きをすればすぐに弓で射抜けるように準備を行う。だが、セマカに弓を向けた際にレノは腕が震えてしまう。


(くそ、また腕が……!?)


人を撃ったことがないレノは相手が悪党だと分かっていても躊躇してしまい、上手く狙いが定まらない。一方で弓を取り出したレノを見てセマカは冷や汗を流す。


「その弓……そうか、俺の手下《しもべ》を殺したのはお前だったか。いったい何なんだお前は?」
「い、いいから降りて来いよ!!もう逃げられると思うなよ、三人相手に勝てると思ってるのか!?」
「……三対一か、確かに俺の方が分が悪いな」


ダインの言葉にセマカは自分が不利であることを認めるが、妙に余裕のある態度の彼にレノ達は訝しむ。状況的に考えればレノ達が圧倒的に有利であり、もうセマカに勝ち目はないはずだった。


(なんだこいつ……どうしてこんなに落ち着いているんだ?まさか他に仲間がいるのか?いや、それは有り得ない)


屋敷に入る前にレノは魔力感知で屋敷の中にはセマカ以外に誰もいないことは把握している。セマカには仲間どころか自分を守る魔物もいないはずだが、追い詰められた人間とは思えないほどに堂々とした態度を取る。


「い、何時まで強がってんだよ!!お前に勝ち目はないんだぞ!?大人しく武器を捨てて投稿しろ!!」
「おいおい、勘違いしているのはそっちじゃないのか?勝ち目がないのはお前等の方だよ」
「な、何を言ってるの?」
「くくく……ここまで俺を追い詰めたことは褒めてやる。だがな、ここへ来たのが運の尽きだったな」
「どういう意味だ!?」


セマカの言葉にレノ達は意味が分からなかったが、会話の直後に玄関の扉の方からウルの鳴き声が響く。



――ウォオオオンッ!!



屋敷の中にまで伝わる程のウルの鳴き声が外から響き、それを聞いてレノは嫌な予感を抱く。セマカは階段の段差を利用して座り込み、外へ出ていくように促す。


「外を確かめて来い。安心しろ、俺は逃げやしねえよ」
「な、何を言ってんだ!?どうせそんなことを言って逃げるつもりだろ!?」
「で、でもダイン君……何だか外が騒がしいよ?」
「……まさか!?」


ダインはセマカの言葉など信用しなかったが、ハルナと同じくレノも外の様子が気になった。レノは仕方なく弓を下ろして二人にセマカを任せて外の様子を伺いに行く。


「二人とも!!そいつが逃げないように見張ってて!!」
「あっ!?レノ君!?」
「おい、何処へ行くつもりだよ!?」


二人を置いてレノは玄関へ向かうと、扉を開いて外の様子を確認した。そして最悪の光景を目にする。



――屋敷の外には数十匹のゴブリンが押し寄せており、玄関の前には唸り声を上げて威嚇するウルの姿があった。既に屋敷はゴブリンの大群に取り囲まれており、それを理解したレノは愕然とした。



少し前まではゴブリンの気配など微塵も感じられなかったが、いつの間にか集まったゴブリンの群れにレノは戸惑う。魔物使いは従えていたのは村を襲ったゴブリンの群れとホブゴブリンだけではなく、100匹近くのゴブリンをまだ従えていたのだ。


(これだけのゴブリンが隠れていたのか!?そんな馬鹿な……有り得ない!!)


先ほど魔力感知を発動した際は廃村の中には確かに魔力は感じられなかった。それならばここに集まったゴブリンは廃村の外から駆けつけてきたことになる。レノはゴブリンの大群を観察すると、その手には金目の物が握りしめられていた。


(まさか……襲われていた村は一つじゃなかったのか!?)


レノは自分が訪れた村を襲ったゴブリンの群れがこれまで被害を受けた村を襲ってきたと思い込んでいだが、どうやらレノが撃退したゴブリンの群れは村を襲撃していたゴブリンの大群の一部でしかなく、セマカはゴブリンの大群を分けて複数の村を同時に襲わせていたことが発覚した。

ここに集まったゴブリンの大群は襲撃した村から奪い取ってきた金品を主人に渡すために戻ってきたのであり、セマカはゴブリンの大群が戻ってくることを知っていたからこそ余裕の態度を取っていたのだ。


(くそっ!!罠に嵌められた!!)


屋敷の前に集まったゴブリンの大群は100匹近くは存在し、流石にこれだけの数のゴブリンを倒す手段は持ち合わせていない。レノは咄嗟にウルを抱き上げて屋敷の中に戻る。


「こっちだ!!」
「ウォンッ!?」
『ギィイイイッ!!』


ウルを抱き寄せてレノは屋敷の中に戻ると当然ながらゴブリンの大群が追いかけてきた。レノはゴブリンの大群が入ってこれないように扉を閉めて抑えつける。強化術を発動させて身体能力を限界まで強化した上で扉を抑え込む。


『ギィアアアアッ!!』
「うわっ!?くそっ、抑えるんだ!!」
「ウォンッ!!」


扉から強い衝撃が走り、外側から無数のゴブリンの鳴き声が響き渡る。レノは必死に扉を抑えて突破されないように防ぐが、彼だけでは持ちこたえられずにウルも身体を押し寄せて手伝う。


(ここを突破されたら終わりだ!!こんな狭い場所じゃ戦えない!?)


もしもゴブリンの大群が屋敷の中になだれ込めば数の暴力でレノ達は抵抗する暇もなく押し潰される。それを避けるには扉だけは死守しなければならず、どうにかレノは抑え込もうとすると声を聞きつけたハルナが駆けつけた。


「ど、どうしたの!?レノ君何してるの!?」
「ハルナ!?丁度良かった……俺の代わりにここを抑えて!!」
「ええっ!?」


ハルナを見てレノは彼女の怪力ならば自分よりも扉を抑えつける役目に相応しいと判断し、彼女に扉を抑える役目を代わってもらう。ハルナは戸惑いながらも言われた通りに扉を抑えつけると、レノは彼女とウルに任せて階段へ向かう。


「そのまま扉を抑えてて!!ウルはハルナを守れ!!」
「よ、よく分からないけど……頑張る!!」
「ウォンッ!!」
『ギィイイッ……!!』


扉の守護はハルナとウルに任せてレノはダインが見張ってるはずのセマカの元へ向かう。セマカがゴブリンの大群を従えているのであれば彼を捕まえて人質にすれば襲われることはない。そう考えたレノは一刻も早くセマカを捕まえに向かうが、階段にいるはずのダインとセマカの姿がない。

二人の姿が見えないことにレノは焦りを抱き、慌てて階段を上がって二人を探す。そして二階の窓の傍で逃げ出そうとするセマカの片足に抱きつくダインの姿を発見した。


「くそっ!?離しやがれこのガキ!!」
「うぐぅっ!?に、逃がすわけないだろ……僕の杖を返せ!!」
「ダイン!?」


どうやらセマカはダインの黒杖を奪い取ったらしく、それを必死に取り返そうとダインはセマカの足にしがみついていた。それを見てレノはどうしてダインが影魔法を使わないのか疑問を抱く。


(どうして影魔法で拘束しないんだ!?まさかあの杖がないと魔法が使えないのか!?)


ダインの影魔法は魔物でも拘束できるほどの強力な魔法だが、彼は杖がないと影魔法が使えないのか必死にセマカに抱きついて逃げるのを食い止めていた。それを見てレノはすぐに助けに向かおうとしたが、直後に窓から黒い影が差す。
しおりを挟む
感想 17

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(17件)

かいと
2025.02.11 かいと
ネタバレ含む
暇人太一
2025.02.13 暇人太一

感想ありがとうございます。

今のところ辞めるつもりはないです(^^)

解除
テツ
2021.11.12 テツ
ネタバレ含む
暇人太一
2021.11.19 暇人太一

いつも感想ありがとうございます。

隠居生活を満喫していたはずが……(つд`)

しかし、平穏な生活を手放している者が続出している中、カルムが転生する原因の一端となった男爵家は裕福になり、比較的平穏な生活を送れているので、カルムパパの命名は間違いではなかったはず(^_^)b

解除
テツ
2021.11.05 テツ

狼に衣装×(゜m゜;)
狼の意匠○(-.-)y-~

暇人太一
2021.11.07 暇人太一

いつも感想ありがとうございます。

誤字報告もありがとうございますm(_ _)m
読み返しで見落としましたm(_ _)m

解除

あなたにおすすめの小説

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

神になった私は愛され過ぎる〜神チートは自重が出来ない〜

ree
ファンタジー
古代宗教、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教…人々の信仰により生まれる神々達に見守られる世界《地球》。そんな《地球》で信仰心を欠片も持っていなかなった主人公ー桜田凛。  沢山の深い傷を負い、表情と感情が乏しくならながらも懸命に生きていたが、ある日体調を壊し呆気なく亡くなってしまった。そんな彼女に神は新たな生を与え、異世界《エルムダルム》に転生した。  異世界《エルムダルム》は地球と違い、神の存在が当たり前の世界だった。一抹の不安を抱えながらもリーンとして生きていく中でその世界の個性豊かな人々との出会いや大きな事件を解決していく中で失いかけていた心を取り戻していくまでのお話。  新たな人生は、人生ではなく神生!?  チートな能力で愛が満ち溢れた生活!  新たな神生は素敵な物語の始まり。 小説家になろう。にも掲載しております。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

間違い転生!!〜神様の加護をたくさん貰っても それでものんびり自由に生きたい〜

舞桜
ファンタジー
「初めまして!私の名前は 沙樹崎 咲子 35歳 自営業 独身です‼︎よろしくお願いします‼︎」  突然 神様の手違いにより死亡扱いになってしまったオタクアラサー女子、 手違いのお詫びにと色々な加護とチートスキルを貰って異世界に転生することに、 だが転生した先でまたもや神様の手違いが‼︎  神々から貰った加護とスキルで“転生チート無双“  瞳は希少なオッドアイで顔は超絶美人、でも性格は・・・  転生したオタクアラサー女子は意外と物知りで有能?  だが、死亡する原因には不可解な点が…  数々の事件が巻き起こる中、神様に貰った加護と前世での知識で乗り越えて、 神々と家族からの溺愛され前世での心の傷を癒していくハートフルなストーリー?  様々な思惑と神様達のやらかしで異世界ライフを楽しく過ごす主人公、 目指すは“のんびり自由な冒険者ライフ‼︎“  そんな主人公は無自覚に色々やらかすお茶目さん♪ *神様達は間違いをちょいちょいやらかします。これから咲子はどうなるのか?のんびりできるといいね!(希望的観測っw) *投稿周期は基本的には不定期です、3日に1度を目安にやりたいと思いますので生暖かく見守って下さい *この作品は“小説家になろう“にも掲載しています

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。