怪物転生者は早期リタイアしたい~チートあるけど、召喚獣とパシリに丸投げする~

暇人太一

文字の大きさ
上 下
30 / 85
第二章 シボラ商会

第二十九話 集会所

しおりを挟む
大規模な戦いから1ヶ月が経過した。アストリア王国の宮殿では、世界各国の代表者たちが集まり、新たな国際秩序について話し合う会議が開かれていた。

セラとアレクは、その会議の中心にいた。彼らは今や、単なる一国の守護者ではなく、世界の平和を象徴する存在となっていた。

「では、『境界石』の管理については、各国の同意の下、新たに設立される『世界評議会』が担当することで合意いたしました」アレクが会議を締めくくった。

参加者たちが頷く中、セラは静かに部屋を見渡していた。そこには、かつての敵だったリリアナの姿もあった。彼女は今、自らの過ちを償うべく、平和構築に尽力していた。

会議が終わり、セラとアレクは宮殿の庭園で一息ついていた。

「疲れたね」アレクが溜息をつく。

セラは微笑んで答えた。「でも、世界は確実に変わりつつあります」

二人が寄り添っていると、新たな「影の守護者」たちが近づいてきた。

「セラさん、アレクさん」レイラが声をかけた。「私たち、これからどうなるんでしょうか?」

アレクは彼らを見つめ、優しく微笑んだ。「君たちは、これからも世界の平和を守る重要な存在だ。ただし、もう影に潜む必要はない」

「そう」セラが続けた。「私たちは、光と影のバランスを保つ守護者。世界の人々の前に、堂々と姿を現すのよ」

カイが不安そうな表情を浮かべた。「でも、僕には父の過去が...」

セラはカイの肩に手を置いた。「過去は変えられないわ。でも、未来は自分で作れる。あなたの行動が、きっと人々の心を動かすはず」

カイは、少し勇気づけられたように頷いた。

その時、ガレスが近づいてきた。

「みんな、重要な報告がある」彼の表情は厳しかった。

全員が緊張して耳を傾けた。

「世界各地で、まだ『影の評議会』の残党が活動しているという情報が入った。そして...」

ガレスは一瞬言葉を切った。

「古代の予言に、もう一つの『境界石』の存在が示唆されているんだ」

「なんだって!?」アレクが驚いて声を上げた。

セラの表情も厳しくなる。「それは、どこにあるんですか?」

ガレスは首を振った。「まだわからない。だが、それを見つけ出し、適切に管理しなければ、再び世界が危機に晒される可能性がある」

新たな「影の守護者」たちの間にも、緊張が走る。

「私たちに、何ができますか?」ナオミが尋ねた。

セラとアレクは顔を見合わせ、頷いた。

「新たな任務だ」アレクが宣言した。「世界を巡り、『境界石』の手がかりを探す。同時に、『影の評議会』の残党の動きも監視する」

「そして」セラが続けた。「各地で人々を助け、光と影の調和の大切さを伝えていくのよ」

マーカスが興奮気味に拳を上げた。「よし!新たな冒険の始まりだな!」

エリックも、珍しく熱心な表情を見せた。「僕も、全力を尽くします」

レイラが不安そうに尋ねた。「でも、私たち...まだ未熟です。本当にできるでしょうか?」

アレクは優しく微笑んだ。「大丈夫さ。君たちには、素晴らしい可能性がある。それに...」

彼はセラの方を見た。

「俺たちが、常に君たちを支える」

セラも頷いた。「そうよ。私たちは、一つのチーム。家族のようなものね」

新たな「影の守護者」たちの目に、決意の色が宿る。

その夜、セラとアレクは宮殿の屋上で、星空を見上げていた。

「新たな冒険か」アレクが呟いた。「また大変なことになりそうだ」

セラは、アレクの手を握った。「でも、私たちには仲間がいる。そして...」

彼女はアレクの目をまっすぐ見つめた。

「あなたがいる」

アレクは、セラを優しく抱きしめた。

「ああ、君がいてくれて本当に良かった」

二人の唇が重なる。

月明かりに照らされた二人の姿は、まるで光と影が溶け合うようだった。

しかし、その穏やかな瞬間も束の間のものだった。

遠くの空に、不思議な光が走る。

「あれは...」セラが息を呑む。

「ああ」アレクが頷く。「新たな冒険の始まりを告げる合図みたいだな」

セラは、自分の左腕の印を見つめた。

それは今や、希望と責任の象徴だった。

「行きましょう、アレク」セラが静かに言った。「私たちにしかできない使命が、待っているわ」

アレクは頷き、セラの手を強く握った。

新たな「影の守護者」たちも、決意に満ちた表情で二人の後に続く。

彼らの前には、未知の冒険が広がっていた。

世界の平和を守り、光と影の調和を実現する。

その大きな使命と共に、彼らの新たな旅が始まろうとしていた。

空には、希望に満ちた朝日が昇り始めていた。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~

春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。 冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。 しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。 パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。 そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件

桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。 神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。 しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。 ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。 ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

自由都市のダンジョン探索者 ~精霊集めてダンジョン攻略~【第一部:初級探索者編完結】

高田 祐一
ファンタジー
 祖父の死をきっかけに村を出て、自由都市のダンジョンで探索者を目指すユーリの成長の物語。最初はウサギ相手にも苦戦しますが、徐々に召喚精霊達を仲間に加え、人々に支えられながら、やがてダンジョンの危機に立ち向かう探索者に成長する物語です。 【第一部:初級探索者編】完結しました。 同時投稿中:魔族に荒らされた異世界をスキルの力でゲーム世界に改編する物語 【転生したのはAIでした ~精霊として転生した私は《特殊スキル》システム管理AIで村の復興から始めます~】 あわせて宜しくお願い致します。

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

処理中です...