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第二章 シボラ商会
第二十七話 おんぶ
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目が覚めると、横には薄い水色の熊がいた。
昨夜のことが夢でなかったことが分かり、これからも可愛い子が増えると思うとワクワクが止まらない。
「それにしても可愛いなぁ」
うつ伏せで丸まって寝ているユミルが可愛い。
そして魅力的なお腹……。
ベッドとお腹の間に手を入れると、手のひらが歓喜するほどの幸せを感じた。
ぬくぬくとした温かい体温と、モフモフモコモコの毛並みが手のひら全体を包み込み、まるでマッサージをされているようだ。
「グァ」
「……起こしちゃったね。ごめんね」
「グァ」
首を横に振って否定してくれるとは……。
優しい子だ。
「それにしても話せないのは不便ですねー。何か方法はー……」
確かに俺も思う。
もっとたくさん話したい。
「えーと……御朱印帳のユミルのページに手を当てれば話せるみたいですねー。それで慣らせばー、早めに思念が読めるようになるかもですねー」
「そうしよう!」
早速御朱印帳を開き、朝ご飯のことを聞いてみる。
「ユミル、おはよう」
『おはよう』
「おぉーー! 話せる! ご飯は何がいい?」
『同じものがいいー!』
「食べてはいけないものとかある?」
濃い味付けとはいいのかな?
『ない』
「味付けはー、私が大丈夫ですのでー、多分大丈夫だと思いますよー。向こうの世界の生き物は丈夫ですからー」
「よしっ! じゃあ、顔を洗ったら朝ご飯にしよう!」
「ですねー!」
『ごはん』
可愛い。
部屋付きの洗面所で顔を洗い、キッチンに向かう。
ママンたちは朝から重いものは無理って言っていたが、白米と野菜スープなら食べられるようになった。
漬け物代わりのピクルスも一緒に食べているから、貴族にしては健康的だと思う。
なお、白米は炊飯器の作り方が不明であるため、現在は土鍋ご飯だ。
こちらは前世で読んだ料理書に書いてあったし、もし分からなくても林間学校でやった飯盒炊爨で炊く予定だった。
結果的に土鍋ご飯になったが、将来的に飯盒をパシリの基本装備として用意してもいいかも。
「俺たちは肉を一品追加しようか」
「ありがたいですー」
「グァ」
さらっと食べられるものがいいかな。
「牛丼にするか」
「牛っ! 久しぶりですねー!」
「森の奥にしかいないからねー。この一頭もラッキーだったからだしー」
「あなたは【豪運】持ちですからー、ラッキーはほぼ必然ですー!」
「え? そうなんだ! じゃあユミルに出会えたのも必然だったのかな?」
「ですねー!」
「グァグァ」
可愛い。
「でも家族が増えたなら、本格的にパシリを集めないとねー」
「料理人ですねー?」
「あと、家畜の世話係。卵が欲しくない?」
「贅沢品ですねー!」
「牛丼に載せると美味いんだよ?」
「でもこの世界に家畜の概念はないですー」
「ホントに!?」
「ダンジョンから採ってきたりー、森から採ってきたりー。そもそも家畜を放していると魔物が寄ってきますしー、盗賊からしたら食料が道に落ちているようなものですからねー。というかー、卵くらい出せるでしょー!?」
「言い訳が……」
「こういうときこそ毎度お馴染みのー、『森で拾ってきた!』でしょー? 本を拾ったり鞄を拾ったりよりはー、十分現実的ですーー!」
そう言われると……そうかもしれない。
「よしっ! 温玉を載せよう!」
召喚した牛丼のタレと水でタマネギと牛肉を煮て、深皿盛ったご飯の上にかける。
このとき、天辺を凹ませておいて温玉置き場を作っておく。
紅ショウガとピクルスはお好み食べてもらうことにし、スープを盛れば朝ご飯の準備は完了だ。
「完成っ!」
「ちょっと待ってくださいー! ユミルもスプーンで食べたいそうですー!」
「え? 使えるの!?」
「グァ」
胸をポンと叩く仕草が、「任せなさい!」と言っているように見えた。
半信半疑だが、少し大きめの木のスプーンを用意した。
この木のスプーンは、魔霊樹の端材で作った特別製だ。
ちなみに、我が家は全員がこの魔霊樹製の食器を使っている。頑丈で洗いやすく、耐熱性の高いものを選んだ結果、魔霊樹に耐熱や防水などを付与することに決まった。
本来はべらぼうに高いが、俺が採取から加工までしたから無料だ。
……まぁガンツさんたちに知られたらヤバそうだけど。
「母上、メイベル。ご飯ですよー!」
「「……」」
「まだお眠みたいですねー!」
食堂のテーブルの上に食事を並べ、一生懸命椅子に登ろうとしているユミルを持ち上げて椅子に座らせる。
「グァ」
「どういたしまして」
自分も椅子に座り手を合わせる。
本当はお祈りを捧げるらしいけど、心の中で伝えているから大丈夫だろう。
「いただきます!」
スプーンを使って温玉を崩しつつ、黄味がかかった肉とタマネギをスプーンですくう。
そして、紅ショウガを載せて一口。
「うんまぁぁぁーーーい!」
「グァ!」
「ホォー!」
朝ご飯の感想と同時に、それぞれ別のことに驚いている。
俺とグリムは器用にスプーンで食べているユミルに驚き、ユミルは何故かフクロウの鳴き真似をしているグリムに驚いているようだった。
ママンとメイベルは時間が止まったかのように微動だにしていないけど……、何かあったのかな?
「どうしました?」
「……どうしました? って――こっちの台詞よっ! ご飯はいいんですっ! どうせたくさん食べられないからっ! でも……でも、その子はどこから来たの!?」
「その子……?」
「……分からないかしら?」
ギロリと睨まれ、本気の説教モードを察知する。
「熊さんのことですよね!?」
「そう。分かってるじゃない」
「この子はユミルっていう名前の女の子です! 新しい召喚獣ですので、新しい家族でもあります!」
「グァ」
ユミルが椅子に座ったままペコリとお辞儀をする。
素晴らしく可愛い。
「可愛いでしょう?」
「可愛いけど……もっと早く教えて欲しかったわね?」
「すみません! これからも増えると思いますが、全て召喚獣ですので御安心をっ!」
「……カルム。そんなに召喚して大丈夫なの? それとも魔量が豊富なの?」
「魔量は当主資格がない星三つでした。ただ、魔法じゃないから効率がいいんだと思います!」
「……そう」
遠回しに天禀が【召喚】であることと、当主にはならないことを伝えられたはず。
ママン残念そうにしているが、男爵家にこき使われるのは絶対に嫌だ。
◇
朝食の後は教会に行ってメイベルの結晶化証明を発行してもらい、商人ギルドへ行く。
忘れていたことがあるからだ。
それは銭湯。
あれは一応俺が所有権を持っている施設で、安いながらも金銭をもらっているから登録しておこうと思ったのだ。
値段は働ける年齢と、働けない年齢で分けている。
十歳以上は四〇〇スピラで、九歳以下は無料だ。
盗難防止で固定された石鹸も使い放題だし、洗濯所も用意している複合施設だ。
お金がない場合は、掃除をしてもらうことにしている。
一部の村民は男爵家が領民ために用意した公営施設だと思っているらしい。
言いがかりが起きる前に商会のものであることを登録し、『シボラ商会』の看板を立てて誤解を解こうと思っている。
「ユミルちゃん、可愛いね!」
「でしょう!」
「グァ」
「グリムも可愛いけど、なんでホォーって鳴くの?」
「……隠したいんじゃない?」
コクコクと頷いているから、多分正解だと思う。
「ふーん……。悪い人が来るからかな?」
「そうだと思う」
今はメイベルの商人登録と銭湯の登録に、グリムとユミルの魔獣登録もしている最中だ。
魔獣は人間と共存する魔物の総称で、従魔や召喚獣のことでもある。
明確に従魔や召喚と言わないのは、天禀や属性がバレたりしないための配慮らしい。
登録してあれば魔獣盗難で正当性を主張できるし、小型なら室内に入れられるようになり、大型の場合は厩舎の利用も可能になる。
メイベルの商人登録のあと、シボラ商会に加入することと口座内に金貨十枚入れることを伝える。
金貨については断ろうとするメイベルに、半ば無理矢理押しつけて預け入れさせた。銭湯を建てた給料という体で。
魔獣登録もすんなり終わったのだが、何故か銭湯の登録に時間がかかるらしい。
暇だから商人ギルドに併設されているテナントでも冷やかそうと思い、受付嬢に待ち時間を使ってテナントを見ることを伝えて外に行く。
「グァ」
「どうしたの?」
ユミルの視線を追うと、そこはギルドの馬場だった。
ちょうど乗馬の訓練講習が開かれているようで、冒険者らしき人と商人が馬に乗っている。
「あぁー! 冒険者ギルドと商人ギルドが業務提携してるのか!」
「グァ」
「も……もしかして……アレがやりたいの?」
「グァ」
「それでは失礼して……」
ユミルの背中に乗せてもらおうと、背中に手を当てて体重をかける。
「グァ!」
背中に乗られることに気づいたユミルが俺を振り払う。
「……違うんだね?」
「グァ」
「まさか……俺の背中に乗りたいの……?」
「グァ!」
力強く首を縦に振るユミル。
「……おんぶでいいかな?」
「グァ」
メイベルが目を見開いて俺を二度見する。
「えっと……大丈夫なの……?」
「任せてっ!」
腰を落としてしゃがみ、ユミルが背中に乗りやすくする。
肩に手が回ったことを確認して、【観念動】の浮遊と念動でユミルを背中に保持する。
「グァ?」
不思議な感覚に慣れないのだろう。ユミルがそわそわしている。
『最近手加減が上手になったと思っていましたがー、もしかしてずっと念動を使ってましたー?』
『もちろん! 手加減は早々に諦めたからね!』
俺は念動で物を動かし、手は動かしているように見せるため添えているだけだ。
「グァ♪」
【観念動】に慣れたユミルがご機嫌な様子で、甘えた声を出している。
ユミルの可愛い姿も見れたから、そろそろ受付に戻ることにしたのだが――。
「テメェなんてクビだっ!」
という怒声がギルド近くの飲食店から飛び、予定が変更されるのだった。
昨夜のことが夢でなかったことが分かり、これからも可愛い子が増えると思うとワクワクが止まらない。
「それにしても可愛いなぁ」
うつ伏せで丸まって寝ているユミルが可愛い。
そして魅力的なお腹……。
ベッドとお腹の間に手を入れると、手のひらが歓喜するほどの幸せを感じた。
ぬくぬくとした温かい体温と、モフモフモコモコの毛並みが手のひら全体を包み込み、まるでマッサージをされているようだ。
「グァ」
「……起こしちゃったね。ごめんね」
「グァ」
首を横に振って否定してくれるとは……。
優しい子だ。
「それにしても話せないのは不便ですねー。何か方法はー……」
確かに俺も思う。
もっとたくさん話したい。
「えーと……御朱印帳のユミルのページに手を当てれば話せるみたいですねー。それで慣らせばー、早めに思念が読めるようになるかもですねー」
「そうしよう!」
早速御朱印帳を開き、朝ご飯のことを聞いてみる。
「ユミル、おはよう」
『おはよう』
「おぉーー! 話せる! ご飯は何がいい?」
『同じものがいいー!』
「食べてはいけないものとかある?」
濃い味付けとはいいのかな?
『ない』
「味付けはー、私が大丈夫ですのでー、多分大丈夫だと思いますよー。向こうの世界の生き物は丈夫ですからー」
「よしっ! じゃあ、顔を洗ったら朝ご飯にしよう!」
「ですねー!」
『ごはん』
可愛い。
部屋付きの洗面所で顔を洗い、キッチンに向かう。
ママンたちは朝から重いものは無理って言っていたが、白米と野菜スープなら食べられるようになった。
漬け物代わりのピクルスも一緒に食べているから、貴族にしては健康的だと思う。
なお、白米は炊飯器の作り方が不明であるため、現在は土鍋ご飯だ。
こちらは前世で読んだ料理書に書いてあったし、もし分からなくても林間学校でやった飯盒炊爨で炊く予定だった。
結果的に土鍋ご飯になったが、将来的に飯盒をパシリの基本装備として用意してもいいかも。
「俺たちは肉を一品追加しようか」
「ありがたいですー」
「グァ」
さらっと食べられるものがいいかな。
「牛丼にするか」
「牛っ! 久しぶりですねー!」
「森の奥にしかいないからねー。この一頭もラッキーだったからだしー」
「あなたは【豪運】持ちですからー、ラッキーはほぼ必然ですー!」
「え? そうなんだ! じゃあユミルに出会えたのも必然だったのかな?」
「ですねー!」
「グァグァ」
可愛い。
「でも家族が増えたなら、本格的にパシリを集めないとねー」
「料理人ですねー?」
「あと、家畜の世話係。卵が欲しくない?」
「贅沢品ですねー!」
「牛丼に載せると美味いんだよ?」
「でもこの世界に家畜の概念はないですー」
「ホントに!?」
「ダンジョンから採ってきたりー、森から採ってきたりー。そもそも家畜を放していると魔物が寄ってきますしー、盗賊からしたら食料が道に落ちているようなものですからねー。というかー、卵くらい出せるでしょー!?」
「言い訳が……」
「こういうときこそ毎度お馴染みのー、『森で拾ってきた!』でしょー? 本を拾ったり鞄を拾ったりよりはー、十分現実的ですーー!」
そう言われると……そうかもしれない。
「よしっ! 温玉を載せよう!」
召喚した牛丼のタレと水でタマネギと牛肉を煮て、深皿盛ったご飯の上にかける。
このとき、天辺を凹ませておいて温玉置き場を作っておく。
紅ショウガとピクルスはお好み食べてもらうことにし、スープを盛れば朝ご飯の準備は完了だ。
「完成っ!」
「ちょっと待ってくださいー! ユミルもスプーンで食べたいそうですー!」
「え? 使えるの!?」
「グァ」
胸をポンと叩く仕草が、「任せなさい!」と言っているように見えた。
半信半疑だが、少し大きめの木のスプーンを用意した。
この木のスプーンは、魔霊樹の端材で作った特別製だ。
ちなみに、我が家は全員がこの魔霊樹製の食器を使っている。頑丈で洗いやすく、耐熱性の高いものを選んだ結果、魔霊樹に耐熱や防水などを付与することに決まった。
本来はべらぼうに高いが、俺が採取から加工までしたから無料だ。
……まぁガンツさんたちに知られたらヤバそうだけど。
「母上、メイベル。ご飯ですよー!」
「「……」」
「まだお眠みたいですねー!」
食堂のテーブルの上に食事を並べ、一生懸命椅子に登ろうとしているユミルを持ち上げて椅子に座らせる。
「グァ」
「どういたしまして」
自分も椅子に座り手を合わせる。
本当はお祈りを捧げるらしいけど、心の中で伝えているから大丈夫だろう。
「いただきます!」
スプーンを使って温玉を崩しつつ、黄味がかかった肉とタマネギをスプーンですくう。
そして、紅ショウガを載せて一口。
「うんまぁぁぁーーーい!」
「グァ!」
「ホォー!」
朝ご飯の感想と同時に、それぞれ別のことに驚いている。
俺とグリムは器用にスプーンで食べているユミルに驚き、ユミルは何故かフクロウの鳴き真似をしているグリムに驚いているようだった。
ママンとメイベルは時間が止まったかのように微動だにしていないけど……、何かあったのかな?
「どうしました?」
「……どうしました? って――こっちの台詞よっ! ご飯はいいんですっ! どうせたくさん食べられないからっ! でも……でも、その子はどこから来たの!?」
「その子……?」
「……分からないかしら?」
ギロリと睨まれ、本気の説教モードを察知する。
「熊さんのことですよね!?」
「そう。分かってるじゃない」
「この子はユミルっていう名前の女の子です! 新しい召喚獣ですので、新しい家族でもあります!」
「グァ」
ユミルが椅子に座ったままペコリとお辞儀をする。
素晴らしく可愛い。
「可愛いでしょう?」
「可愛いけど……もっと早く教えて欲しかったわね?」
「すみません! これからも増えると思いますが、全て召喚獣ですので御安心をっ!」
「……カルム。そんなに召喚して大丈夫なの? それとも魔量が豊富なの?」
「魔量は当主資格がない星三つでした。ただ、魔法じゃないから効率がいいんだと思います!」
「……そう」
遠回しに天禀が【召喚】であることと、当主にはならないことを伝えられたはず。
ママン残念そうにしているが、男爵家にこき使われるのは絶対に嫌だ。
◇
朝食の後は教会に行ってメイベルの結晶化証明を発行してもらい、商人ギルドへ行く。
忘れていたことがあるからだ。
それは銭湯。
あれは一応俺が所有権を持っている施設で、安いながらも金銭をもらっているから登録しておこうと思ったのだ。
値段は働ける年齢と、働けない年齢で分けている。
十歳以上は四〇〇スピラで、九歳以下は無料だ。
盗難防止で固定された石鹸も使い放題だし、洗濯所も用意している複合施設だ。
お金がない場合は、掃除をしてもらうことにしている。
一部の村民は男爵家が領民ために用意した公営施設だと思っているらしい。
言いがかりが起きる前に商会のものであることを登録し、『シボラ商会』の看板を立てて誤解を解こうと思っている。
「ユミルちゃん、可愛いね!」
「でしょう!」
「グァ」
「グリムも可愛いけど、なんでホォーって鳴くの?」
「……隠したいんじゃない?」
コクコクと頷いているから、多分正解だと思う。
「ふーん……。悪い人が来るからかな?」
「そうだと思う」
今はメイベルの商人登録と銭湯の登録に、グリムとユミルの魔獣登録もしている最中だ。
魔獣は人間と共存する魔物の総称で、従魔や召喚獣のことでもある。
明確に従魔や召喚と言わないのは、天禀や属性がバレたりしないための配慮らしい。
登録してあれば魔獣盗難で正当性を主張できるし、小型なら室内に入れられるようになり、大型の場合は厩舎の利用も可能になる。
メイベルの商人登録のあと、シボラ商会に加入することと口座内に金貨十枚入れることを伝える。
金貨については断ろうとするメイベルに、半ば無理矢理押しつけて預け入れさせた。銭湯を建てた給料という体で。
魔獣登録もすんなり終わったのだが、何故か銭湯の登録に時間がかかるらしい。
暇だから商人ギルドに併設されているテナントでも冷やかそうと思い、受付嬢に待ち時間を使ってテナントを見ることを伝えて外に行く。
「グァ」
「どうしたの?」
ユミルの視線を追うと、そこはギルドの馬場だった。
ちょうど乗馬の訓練講習が開かれているようで、冒険者らしき人と商人が馬に乗っている。
「あぁー! 冒険者ギルドと商人ギルドが業務提携してるのか!」
「グァ」
「も……もしかして……アレがやりたいの?」
「グァ」
「それでは失礼して……」
ユミルの背中に乗せてもらおうと、背中に手を当てて体重をかける。
「グァ!」
背中に乗られることに気づいたユミルが俺を振り払う。
「……違うんだね?」
「グァ」
「まさか……俺の背中に乗りたいの……?」
「グァ!」
力強く首を縦に振るユミル。
「……おんぶでいいかな?」
「グァ」
メイベルが目を見開いて俺を二度見する。
「えっと……大丈夫なの……?」
「任せてっ!」
腰を落としてしゃがみ、ユミルが背中に乗りやすくする。
肩に手が回ったことを確認して、【観念動】の浮遊と念動でユミルを背中に保持する。
「グァ?」
不思議な感覚に慣れないのだろう。ユミルがそわそわしている。
『最近手加減が上手になったと思っていましたがー、もしかしてずっと念動を使ってましたー?』
『もちろん! 手加減は早々に諦めたからね!』
俺は念動で物を動かし、手は動かしているように見せるため添えているだけだ。
「グァ♪」
【観念動】に慣れたユミルがご機嫌な様子で、甘えた声を出している。
ユミルの可愛い姿も見れたから、そろそろ受付に戻ることにしたのだが――。
「テメェなんてクビだっ!」
という怒声がギルド近くの飲食店から飛び、予定が変更されるのだった。
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