身代わりで隣国に嫁がされましたが、チー牛王子となんやかんや仲良く生きていきま、す?

佐伯 鮪

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 教会から少し離れた路地裏で、先程の青年と落ち合った。

「あ、思ったより早かったね! どうだった?」

 彼は仔犬のように目を輝かせ、こちらに走り寄って来た。
 私が残念そうに首を横に振ると、その勢いは失われ、わかりやすく萎れてしまった。

「貴方と同じ顔の女の子は、とりあえず見つからなかった。それと厄介だと思ったのが、あの人達は個人の名前をあえて聞かないようにしているらしいの。だから名前を聞いて回ることも、無意味かもしれない」
「え?」
「そういう教義らしいのよ」

 なんだそれ、とぼやく青年に、有益な情報が持って来られなくて申し訳ない、と少し思った。

「でもまぁ、今日入った場所にいなかっただけかもしれないし。私達、また教会に行くつもりだからさ、もし見つけたら連絡するから」
「ほんと!? ありがとう。いきなり頼んじゃったのに親切にしてくれて……君、優しいね」

 彼は私の両手を取って握りしめた。
 なんだか、顔が近い。

「君、名前なんて言うの? どこに住んでる?」
「えっ……えっと、」
「……あ、あ、あおああ、あの!」

 私が返答に困っていると、さっきから全然会話に入っていなかった晃瑛コウエイが声を震わせながら、私と彼の間に割って入った。

「あ、君、いたの? 何?」
「て、て、て、はな、はなして」
「なんで? 君、この子のなに?」

(はい、不敬罪ーーー! 一兵卒が王太子殿下に向かってなんて態度ーー!)

 当然、彼は殿下の身分は知らないとはいえ、冷や汗ものだ。まぁ自分も、不敬罪と言って他人を断罪できるような立場ではないのだが。
 殿下は彼の態度には言及せず、握られた手に自分の手をかけて解かせた、

「お、お、お、お、おっと……」
「あぁ、弟か。姉ちゃんに触って怒っちゃった?」

 もうこれ以上勘弁してくれ、と堪らなくなって、私は割って話題を切り替えた。

「私は、香香シャンシャン。こっちは、コウ。家には内緒で出て来てるから、場所は教えられないの。ところで、貴方の名前も教えてよ」
「……ま、いいや。俺は、琉玖ルゥク
琉花ルゥファ琉玖ルゥクね、覚えたわ。ところで、城の兵士って言ってたけど、所属はどこなの? もし情報があったら、そっちを尋ねるわ」
「え、俺の所属? 王城警備第三部隊九班だけど……普段は城内担当だから、君たち入ってこれないと思うよ? それよりも、家に来てくれた方が助かるけど」

 それから琉玖ルゥクの言った自宅の場所を聞いて、私と晃栄コウエイは目を見合わせた。

ーー三番通り三つ目の角のかんざし屋。

 そこは確か、武大臣と会う際に指定された店だった。
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