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※ふーん、えっちじゃん※
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「詩音、詩音」
遥星ーーこの国の皇帝である人物が、その妻の名を楽しそうに呼ぶ。
「きゃっ」
後ろから抱きかかえられる形となり、バランスを崩しそうになった詩音は、胸の前に回された腕を掴んだ。
「ちょ、陛下…いきなりどうしたんですか」
腕を掴んだまま詩音が後ろを振り返ると、すっとその端正な顔が近づいてきて、唇が重なる。悪戯っぽく微笑むその顔は、少年のようであり、しかし色気も感じさせた。
「もう……公務中ですから、お控えください」
「だって今はこの部屋に私達しかいないではないか」
「いなくても、やらなきゃいけない仕事はあるでしょう?」
「え? 何? お世継ぎ?」
「っ! ち、ちが」
喋っているところに、そのまま口を塞がれた。そして、開いた唇にそのまま相手の舌が入り込んできて、ねっとりと口内を撫で回す。詩音はゆっくり目を閉じ、少し力の抜けた身体を彼に預けた。
「大丈夫だ、詩音。今日はもう仕事は終わらせたから。誰も来ないように言ってあるし、ゆっくりできるぞ」
無邪気に微笑む相手を見て、詩音はふぅっと息を吐いた。
「そうですか。では、お茶でもいただきますか?」
腕の中に入ったまま、おそらく叶わないであろう提案をしてみる。
「んー? それはダメ。後でな」
そう言って遥星は、詩音の服の胸元から手を差し込んだ。
「あ、ちょ、ちょっと……」
胸のふくらみを下から手のひら全体ですくい上げ、ふわふわと揉みながら親指で一点を転がされる。首筋に噛み付かれ、一瞬力が抜ける。そしてくたっとした腰をもう片方の腕で支えられた。
まだ明るい昼下がり、このまま身を委ねるのはさすがに少し抵抗がある。平常心を保とうと試みるも、触れられている肌が余計にくすぐったく感じ、詩音は身体をよじった。
「や、もう……遥さまの、えっち」
詩音がその発言をしたところで、遥星の手が止まった。
「『えっち』って、なんだ?」
「えっ。あ、あー、そのー」
うっかり出た発言に、冷静に意味を求められてしまい詩音は困惑した。これを説明せねばならない、というのもなかなかの苦行だった。
「?」
「え、えーと、その、『こういうこと』が、お好きなんですね……と、いうような意味です。たぶん」
それを聞いた遥星はすっと真顔になった。
(あれ、気を悪くさせてしまったかしら……)
詩音が不安げな表情を浮かべるも、遥星は無表情のまま彼女の膝裏に手を差し込み、「よいしょ」とその身体を持ち上げた。いわゆる、お姫様抱っこというやつで、初めこそ戸惑ったものの、何回かされているうちに詩音も相手が担ぎやすい姿勢というものを身につけていた。
横抱きにされた詩音は、そのまま寝台へふわりと載せられ、ようやく自由を手に入れーー否、逆に捕われたような、不自由な状態に置かれた。
(なんか変なスイッチ入れちゃったかな、うーん?)
「遥、さま?」
詩音の問いかけにも反応せず、遥星は表情を変えずに彼女の服を一枚一枚そっと脱がせていく。部屋の明るさから身体を隠したくなるが、彼の眼差しに脅されているようで、詩音は身動きが取れなかった。
遥星は少し身体を離して、露わになった彼女の上半身をじっと眺めた。
「あ、あの……」
外気に触れた素肌が、その視線によって更なる刺激を与えられ、むずむずする。どうしたらいいか戸惑っていると、そこへ彼が腕をすっと伸ばした。距離を取りながら人差し指で詩音の唇に触れたあと、そこからそのままツーっと下へ指を滑らせる。首筋、鎖骨、そして片方の胸の頂へーー。そこへ指が触れた時、詩音の身体がピクンと跳ねた。
遥星は自分も寝台へ上がり込み、ぷくっと膨らんだ薄桃色のそれを、まじまじと眺めた。
それから、詩音の身体が後ろに倒れないよう片手で背中を支えながら、首筋や胸、お腹に口付けていく。ちゅっちゅっと水の跳ねる音を響かせながら、反対の手はするすると詩音の肌を滑っていった。
「あえて」その可愛らしい突起を避けて愛撫していくと、彼女が頬を紅潮させ、瞳を潤ませてきたのがはっきりとわかった。
「遥さま、ずるいです」
そう言って赤らめた頬を膨らませる様も、この上なく愛らしく彼の目に映った。
彼女を抱き寄せて唇を触れ合わせる。手に触れる肌がしっとり湿り気を帯びてきたのを感じ、その手をだんだんと下の方へ滑らせていく。彼の中指が彼女の泉の入口へ到達した途端、ちゅぷんと音を立ててその指は一気に飲み込まれた。
少し驚いて目を開いた遥星が、そっと囁く。
「詩音……いま、自分で腰浮かせただろ」
その言葉はまた、詩音自身をも驚かせた。
「え、あ、あれ……? どうしよう、私、身体が勝手に」
詩音は喋りながら、ますます顔を紅潮させていった。
その中に指が入った状態のまま、二人は会話を交わす。
「無意識だったのか? こう、座っているだろう、この状態だと、普通なら中に入らない」
そして遥星は中の指をぐりっと動かした。
「ぁんっ」
「そして、抜けない」
内側の壁をゆっくりと、指が這っていく感覚が詩音を襲う。
「ん……はっ」
「そんなに欲しかったのか?……詩音は、『えっち』だな」
耳元でそう囁かれた瞬間、かあっと全身の熱が上がるのを詩音は嫌でも自覚した。そして彼女の身体の中に指を入れている彼もまた、その熱を感じ取った。
「詩音、あつい、急にあつくなったぞ。それに……」
そう言って中の指をわざと音を立てて抜き差しされ、じゅぷじゅぷと卑猥な音が詩音の耳を襲う。
「すごい、びしょびしょだ」
いろいろな意味で顔を真っ赤に染めた詩音は、涙声でもう一度言った。
「遥さま、ずるいです……」
「なにがだ?」
真顔で遥星が問い返す。
「だって、だって……私ばっかり。貴方はまだ服も脱いでないじゃないですか」
「脱いで欲しいのか?」
そう問われて、詩音は先ほどと立場が逆転していたことに気づかされる。最初は向こうから仕掛けてきて、詩音は逃げている立場だったはずだが、今は……。
詩音は彼の顔をじっと見つめて、無言でうなづいた。
「……じゃあ、『私は、えっちです』って言ってみて」
「!?」
更に顔を真っ赤にする詩音に、先ほどから入ったままの状態の指から追加の刺激が加えられる。
「んんっ」
差し込んでいるのと反対の手が、詩音の上半身を抱き寄せる。遥星の舌がそろそろと腰やおへそを這っていき、乳房へ、そしてその薄桃色の頂へ、弱々しい刺激を与える。
彼はわざと力を入れず、掠るか掠らないか程度の感覚で触れていた。先ほどからぷっくり膨らんでいたそこは、更にツンと尖って、艶々と光って次の刺激を待っているようだった。
それでもまだ無表情を崩さない遥星は、詩音のだらしなく垂れていた手を取って、彼女の指先をそこへ誘導した。
「自分で触ってみて。どう?」
「……ゃ、恥ずか、しぃ」
「ほら、その二本の指で摘んでみて。こう」
手に手を重ねられ、強制的に自分自身でそこを挟まさせられる。その瞬間に、そこがより立体的に立ち上がるのを、否が応でも自覚させられた。
羞恥のあまり、彼の顔を見ることができない。斜め下を向いた詩音は、唇を噛んだ。
そんな詩音をみて、遥星が優しくささやく。
「なぁ、詩音。気づいているか? さっきから、私はこの指を動かしていない。なのに詩音のここは、ちゃぷちゃぷって音をたててる。なんでだと思う?」
その理由は、詩音が自分自身で腰を動かしていたからに他ならなかった。
「指もこんなに締め付けられて。自分で自分の乳首弄って。ねぇ、気持ちいい?」
「み、見ないで…見ないで、ください……」
そう言いながらも、詩音は規則的に腰を前後させ、中を締め付ける動きを止められない。それを直接感じている遥星は、彼女の顎を持って正面に向けさせた。
「だめ。見せて、その顔。……もう、ほんと可愛いから」
「ぁ、ぁぅ……」
その言葉に、詩音の中はますます孕む熱を高まらせ、熱い液体がじわじわと垂れてくる。
「詩音、ほら、言ってみて。『私は』…」
「……わ、わたし、は」
視線を合わせたまま、自分では発したことのない言葉を言わされようとしている。目を逸らしたいが、しっかりと射抜かれていて逸らすことができない。
「言わないと、先に進めないぞ」
遥星は中指を入れた掌(てのひら)を詩音の秘部全体に押しつけ、少し揺すった。広い掌が最も敏感な部分に当たり、もう詩音は限界だった。
「わ、わたしは……えっち、です……」
自分の胸の先端を強く摘みながら、ようやく指定された言葉を発する。彼の反応を待っていると、優しい微笑みとともに、頭をそっと撫でられた。
「そうだな、詩音は『えっち』だな。よく、頑張った」
そう言うや否や、唇を重ね合わせ、そのまま勢いよく後ろへ押し倒された。詩音の口内で彼の舌が縦横無尽に躍り、同じように下の口の中へも、もう1本指が侵入してきて、中で暴れ回る。
詩音自身の刺激によってツンと立ち上がっていた乳首も、遥星の硬い手で転がされ、その存在を主張しながら、触れられる喜びを昂らせていく。
焦らしに焦らされて外部の刺激を待ち焦がれていた詩音の身体は、この突然の激しい愛撫を全て受け入れ、快感へと変えていく。
「遥さま、遥さまっ……ぁ、あぁっ!」
あっという間に詩音の意識は高みへ到達し、その身体はくたっと力が抜けた。
遥星が入りっぱなしだった指をゆっくり引き抜くと、それは糸を引きながら、中に溜め込まれていた蜜と共にじゅるりと出てきた。
「……いっちゃったね、詩音。気持ちよかった?」
遥星は詩音の頬をそっと撫でながら、優しく訊いた。
詩音は潤んだ瞳で彼を睨みつけながら、唇を尖らせて答えた。
「……遥さまは、ずるいです」
その唇にちゅっと軽い口付けが施され、そして耳元で「可愛い」という声が響く。その声で、一度達したはずの詩音の中に、再び潤いが増してくる。恥ずかしさから詩音は頭から布をかぶり、全身を隠した。
(……私が、この台詞に弱いって、わかっててやってるよね、もう)
彼の手の上で転がされる自分を悔しく思うも、それに抗う術が思いつかない。いつだって、彼から触れられたら詩音の身体は悦び反応し、刺激を求めずにはいられなくなってしまうのだった。
「詩音、おいで」
その言葉に詩音が布から顔を覗かせると、服を脱いで両手を広げた彼の姿があった。
詩音がそこに吸い寄せられるように体を起こすと、ぎゅうっと上半身を抱きしめられる。前半身全部に、体温が伝わってくる。先程からたくさんの刺激を浴び続けた詩音の二つの突起は、彼の肌と擦れ合って再びその存在を主張し始めた。その擦れる感触で、詩音自身もまた、スイッチが入るのを感じていた。
遥星は一旦身体を少し離し、その主張の激しい二つの膨らみを両手でそれぞれ持ち上げた。優しく揉み上げながら吸い付き、舌でその固いところをコロコロと転がす。
「ぁんっ、ぁ……ゃ……んっ」
今日は、いつも以上にそこが敏感になっている。詩音は、それらの刺激に声を抑えることが出来なかった。
顔を上げた遥星は、詩音の手首を掴んでその場に組み敷いた。唇を触れ合わせた後、首筋に強く吸い付き、そこから、胸、腰、と下へ下へと先を急いでいく。詩音の脚を持ち上げ、太腿の裏を舐め上げる。
その刺激と、これから始まることへの期待と、羞恥と。詩音の泉は蜜を垂らし始め、早く早くと彼を誘なう。遥星はそこをぺろりと一舐めすると、すぐに自分のものを押し込んだ。これまでその存在を隠していたものの、彼女の動き一つ一つに昂る欲望を溜め込んでいたそれは、硬く鋭く、詩音を貫いた。
「ん、あぁ……」
ずっと、ずっと待っていた。
詩音の中は、躊躇うことなく彼を飲み込み、そして、締め付ける。
奥へ奥へと、締め付けるたびに引っ張っていく。
彼の手でされている時は、詩音は完全に支配されている感じがしている。だが、この時ーー彼自身を飲み込んでいる時は、逆に支配しているような感覚に囚われる。
被支配と支配とーーどちらをも行ったり来たりしながら、二人の身体は回を重ねるごとに絆を深めていく。
「詩音」
「はい」
「好きだよ」
その、言葉は。
詩音が教えた、感情を伝える言葉ーー。
普段彼からはあまり聞くことのない、その言葉。
「わたしも、遥さまが大好きです」
詩音が答えると同時に、彼は中で果てた。
既に詩音自身の歓迎する蜜で溢れていたその奥に、別の液体がとくとくと注がれていく。
詩音はその熱をじっくりと味わっていた。
。.:*・゜
「詩音」
彼女の胸に顔を埋めた遥星が、上目遣いに呼びかける。その頭を抱きしめ、髪を撫でる詩音が、顔を彼の方に向ける。
「その、今日は、ごめんな」
「? なにがですか?」
「なんか……意地悪なことしてしまったかと……」
詩音はきょとんとして、そして微笑んだ。
「ふふ、今更ですか?」
「お、怒ってるか?」
「そんなわけ、ないですよ。遥さまは、楽しんでたのかと」
「いや、そりゃまぁ、そうなんだけど」
今日の彼は、少しいつもより歯切れが悪い。一体何を気にしているというのだろう、と詩音は思った。いつもいろんな攻撃を仕掛けてきているくせに。
「つい、始めたはいいんだが……あれ、耐えるの辛かった」
「えー?」
「詩音が自分から言うまで触らないようにしようって、そう頑張ってたんだけど、途中からもう、触りたくてーーめちゃくちゃぐちゃぐちゃにしたくて」
「……すごいことをおっしゃいますね」
「ああああ、すまぬ!」
遥星はそう言ってもう一度顔を埋めた。
(今日は、仔犬モードね。)
この人は、色々な顔を見せてくれる。強気で支配的だったり、優しく柔和だったり、少し冷たい時もあったり、甘えん坊であったり。どんな顔も、詩音は愛しくて堪らない。
「じゃあ、遥さま。今度は、私が『意地悪』しても良いですか?」
「何をする気だ?」
「うーん……あれ、思いつかない……」
「なんだそれは」
「なんか『されたいこと』、あります?」
「え、あぁ……そう言われると、困るな」
二人は同時に、くすくすと笑った。
遥星は、詩音の肩から背中、腰と手を滑らせると、不思議そうに問いかけた。
「なぁ、詩音。詩音の肌は、なんでこんなに気持ちいいんだ?」
「気持ちいい、ですか?」
「うん。するする滑って、でもしっとり吸い付いて、この肌に触れると、どうしても止まらなくなってしまう」
詩音は少し考えてから答えた。
「だとしたら、それは遥さまのせいですよ」
「なぜだ?」
「貴方のこの手に触れられると、私は……もっと触れて欲しい、って……めちゃくちゃに、ぐちゃぐちゃにしてほしいって、そう思ってしまうんです。だから、私の身体が、勝手に反応して、そうなってるのかも」
遥星は会話の間もその肌の滑らかさを楽しみながら、詩音の言葉を聞いてにっこり微笑んだ。
「やっぱり、詩音は『えっち』だなぁ」
「あ、もう! またそれー!」
「可愛い、最高だ」
「……やっぱり、遥さまは『意地悪』です」
詩音は複雑そうな表情をしながら、彼の頭をぎゅっと抱きしめた。
遥星は、自分の顔の前の乳房のふわふわしたところに吸い付き、ちょんちょんと先端を指で押した。
「あ、もぅ、んっ」
「今日は、ここに随分と『意地悪』してしまったかもしれぬ。痛くないか?」
「もー。……正直に言うとですね、今、ちょっとヒリヒリしてます」
「!! そうか、詩音、ごめん。ほんとごめんな」
遥星は、ぎゅうっと詩音の腰にしがみついた。
彼女は、詩音は、自分が何をしても全て受け入れてくれる。大きな心で自分を包み込んで、許してくれる。
感情を掻き乱す存在でありながら、また他では為し得ない安心感を与えてくれる存在だった。
「詩音。私の側から、いなくならないでくれ」
遥星は心からの想いを、そっと呟いた。
「当たり前じゃないですか。私の居場所は、ここしかないんですから。だから、離さないでいてくださいね」
詩音は自分の身体を滑らせ、遥星の胸の中に収まるように抱きついた。
詩音が顔を上げると、視線が交わる。二人は同時にそっと目を閉じ、唇を触れ合わせた。
互いが互いの肌の感触を感じながら、ゆっくり、溶け合うように抱きしめ合った。
遥星ーーこの国の皇帝である人物が、その妻の名を楽しそうに呼ぶ。
「きゃっ」
後ろから抱きかかえられる形となり、バランスを崩しそうになった詩音は、胸の前に回された腕を掴んだ。
「ちょ、陛下…いきなりどうしたんですか」
腕を掴んだまま詩音が後ろを振り返ると、すっとその端正な顔が近づいてきて、唇が重なる。悪戯っぽく微笑むその顔は、少年のようであり、しかし色気も感じさせた。
「もう……公務中ですから、お控えください」
「だって今はこの部屋に私達しかいないではないか」
「いなくても、やらなきゃいけない仕事はあるでしょう?」
「え? 何? お世継ぎ?」
「っ! ち、ちが」
喋っているところに、そのまま口を塞がれた。そして、開いた唇にそのまま相手の舌が入り込んできて、ねっとりと口内を撫で回す。詩音はゆっくり目を閉じ、少し力の抜けた身体を彼に預けた。
「大丈夫だ、詩音。今日はもう仕事は終わらせたから。誰も来ないように言ってあるし、ゆっくりできるぞ」
無邪気に微笑む相手を見て、詩音はふぅっと息を吐いた。
「そうですか。では、お茶でもいただきますか?」
腕の中に入ったまま、おそらく叶わないであろう提案をしてみる。
「んー? それはダメ。後でな」
そう言って遥星は、詩音の服の胸元から手を差し込んだ。
「あ、ちょ、ちょっと……」
胸のふくらみを下から手のひら全体ですくい上げ、ふわふわと揉みながら親指で一点を転がされる。首筋に噛み付かれ、一瞬力が抜ける。そしてくたっとした腰をもう片方の腕で支えられた。
まだ明るい昼下がり、このまま身を委ねるのはさすがに少し抵抗がある。平常心を保とうと試みるも、触れられている肌が余計にくすぐったく感じ、詩音は身体をよじった。
「や、もう……遥さまの、えっち」
詩音がその発言をしたところで、遥星の手が止まった。
「『えっち』って、なんだ?」
「えっ。あ、あー、そのー」
うっかり出た発言に、冷静に意味を求められてしまい詩音は困惑した。これを説明せねばならない、というのもなかなかの苦行だった。
「?」
「え、えーと、その、『こういうこと』が、お好きなんですね……と、いうような意味です。たぶん」
それを聞いた遥星はすっと真顔になった。
(あれ、気を悪くさせてしまったかしら……)
詩音が不安げな表情を浮かべるも、遥星は無表情のまま彼女の膝裏に手を差し込み、「よいしょ」とその身体を持ち上げた。いわゆる、お姫様抱っこというやつで、初めこそ戸惑ったものの、何回かされているうちに詩音も相手が担ぎやすい姿勢というものを身につけていた。
横抱きにされた詩音は、そのまま寝台へふわりと載せられ、ようやく自由を手に入れーー否、逆に捕われたような、不自由な状態に置かれた。
(なんか変なスイッチ入れちゃったかな、うーん?)
「遥、さま?」
詩音の問いかけにも反応せず、遥星は表情を変えずに彼女の服を一枚一枚そっと脱がせていく。部屋の明るさから身体を隠したくなるが、彼の眼差しに脅されているようで、詩音は身動きが取れなかった。
遥星は少し身体を離して、露わになった彼女の上半身をじっと眺めた。
「あ、あの……」
外気に触れた素肌が、その視線によって更なる刺激を与えられ、むずむずする。どうしたらいいか戸惑っていると、そこへ彼が腕をすっと伸ばした。距離を取りながら人差し指で詩音の唇に触れたあと、そこからそのままツーっと下へ指を滑らせる。首筋、鎖骨、そして片方の胸の頂へーー。そこへ指が触れた時、詩音の身体がピクンと跳ねた。
遥星は自分も寝台へ上がり込み、ぷくっと膨らんだ薄桃色のそれを、まじまじと眺めた。
それから、詩音の身体が後ろに倒れないよう片手で背中を支えながら、首筋や胸、お腹に口付けていく。ちゅっちゅっと水の跳ねる音を響かせながら、反対の手はするすると詩音の肌を滑っていった。
「あえて」その可愛らしい突起を避けて愛撫していくと、彼女が頬を紅潮させ、瞳を潤ませてきたのがはっきりとわかった。
「遥さま、ずるいです」
そう言って赤らめた頬を膨らませる様も、この上なく愛らしく彼の目に映った。
彼女を抱き寄せて唇を触れ合わせる。手に触れる肌がしっとり湿り気を帯びてきたのを感じ、その手をだんだんと下の方へ滑らせていく。彼の中指が彼女の泉の入口へ到達した途端、ちゅぷんと音を立ててその指は一気に飲み込まれた。
少し驚いて目を開いた遥星が、そっと囁く。
「詩音……いま、自分で腰浮かせただろ」
その言葉はまた、詩音自身をも驚かせた。
「え、あ、あれ……? どうしよう、私、身体が勝手に」
詩音は喋りながら、ますます顔を紅潮させていった。
その中に指が入った状態のまま、二人は会話を交わす。
「無意識だったのか? こう、座っているだろう、この状態だと、普通なら中に入らない」
そして遥星は中の指をぐりっと動かした。
「ぁんっ」
「そして、抜けない」
内側の壁をゆっくりと、指が這っていく感覚が詩音を襲う。
「ん……はっ」
「そんなに欲しかったのか?……詩音は、『えっち』だな」
耳元でそう囁かれた瞬間、かあっと全身の熱が上がるのを詩音は嫌でも自覚した。そして彼女の身体の中に指を入れている彼もまた、その熱を感じ取った。
「詩音、あつい、急にあつくなったぞ。それに……」
そう言って中の指をわざと音を立てて抜き差しされ、じゅぷじゅぷと卑猥な音が詩音の耳を襲う。
「すごい、びしょびしょだ」
いろいろな意味で顔を真っ赤に染めた詩音は、涙声でもう一度言った。
「遥さま、ずるいです……」
「なにがだ?」
真顔で遥星が問い返す。
「だって、だって……私ばっかり。貴方はまだ服も脱いでないじゃないですか」
「脱いで欲しいのか?」
そう問われて、詩音は先ほどと立場が逆転していたことに気づかされる。最初は向こうから仕掛けてきて、詩音は逃げている立場だったはずだが、今は……。
詩音は彼の顔をじっと見つめて、無言でうなづいた。
「……じゃあ、『私は、えっちです』って言ってみて」
「!?」
更に顔を真っ赤にする詩音に、先ほどから入ったままの状態の指から追加の刺激が加えられる。
「んんっ」
差し込んでいるのと反対の手が、詩音の上半身を抱き寄せる。遥星の舌がそろそろと腰やおへそを這っていき、乳房へ、そしてその薄桃色の頂へ、弱々しい刺激を与える。
彼はわざと力を入れず、掠るか掠らないか程度の感覚で触れていた。先ほどからぷっくり膨らんでいたそこは、更にツンと尖って、艶々と光って次の刺激を待っているようだった。
それでもまだ無表情を崩さない遥星は、詩音のだらしなく垂れていた手を取って、彼女の指先をそこへ誘導した。
「自分で触ってみて。どう?」
「……ゃ、恥ずか、しぃ」
「ほら、その二本の指で摘んでみて。こう」
手に手を重ねられ、強制的に自分自身でそこを挟まさせられる。その瞬間に、そこがより立体的に立ち上がるのを、否が応でも自覚させられた。
羞恥のあまり、彼の顔を見ることができない。斜め下を向いた詩音は、唇を噛んだ。
そんな詩音をみて、遥星が優しくささやく。
「なぁ、詩音。気づいているか? さっきから、私はこの指を動かしていない。なのに詩音のここは、ちゃぷちゃぷって音をたててる。なんでだと思う?」
その理由は、詩音が自分自身で腰を動かしていたからに他ならなかった。
「指もこんなに締め付けられて。自分で自分の乳首弄って。ねぇ、気持ちいい?」
「み、見ないで…見ないで、ください……」
そう言いながらも、詩音は規則的に腰を前後させ、中を締め付ける動きを止められない。それを直接感じている遥星は、彼女の顎を持って正面に向けさせた。
「だめ。見せて、その顔。……もう、ほんと可愛いから」
「ぁ、ぁぅ……」
その言葉に、詩音の中はますます孕む熱を高まらせ、熱い液体がじわじわと垂れてくる。
「詩音、ほら、言ってみて。『私は』…」
「……わ、わたし、は」
視線を合わせたまま、自分では発したことのない言葉を言わされようとしている。目を逸らしたいが、しっかりと射抜かれていて逸らすことができない。
「言わないと、先に進めないぞ」
遥星は中指を入れた掌(てのひら)を詩音の秘部全体に押しつけ、少し揺すった。広い掌が最も敏感な部分に当たり、もう詩音は限界だった。
「わ、わたしは……えっち、です……」
自分の胸の先端を強く摘みながら、ようやく指定された言葉を発する。彼の反応を待っていると、優しい微笑みとともに、頭をそっと撫でられた。
「そうだな、詩音は『えっち』だな。よく、頑張った」
そう言うや否や、唇を重ね合わせ、そのまま勢いよく後ろへ押し倒された。詩音の口内で彼の舌が縦横無尽に躍り、同じように下の口の中へも、もう1本指が侵入してきて、中で暴れ回る。
詩音自身の刺激によってツンと立ち上がっていた乳首も、遥星の硬い手で転がされ、その存在を主張しながら、触れられる喜びを昂らせていく。
焦らしに焦らされて外部の刺激を待ち焦がれていた詩音の身体は、この突然の激しい愛撫を全て受け入れ、快感へと変えていく。
「遥さま、遥さまっ……ぁ、あぁっ!」
あっという間に詩音の意識は高みへ到達し、その身体はくたっと力が抜けた。
遥星が入りっぱなしだった指をゆっくり引き抜くと、それは糸を引きながら、中に溜め込まれていた蜜と共にじゅるりと出てきた。
「……いっちゃったね、詩音。気持ちよかった?」
遥星は詩音の頬をそっと撫でながら、優しく訊いた。
詩音は潤んだ瞳で彼を睨みつけながら、唇を尖らせて答えた。
「……遥さまは、ずるいです」
その唇にちゅっと軽い口付けが施され、そして耳元で「可愛い」という声が響く。その声で、一度達したはずの詩音の中に、再び潤いが増してくる。恥ずかしさから詩音は頭から布をかぶり、全身を隠した。
(……私が、この台詞に弱いって、わかっててやってるよね、もう)
彼の手の上で転がされる自分を悔しく思うも、それに抗う術が思いつかない。いつだって、彼から触れられたら詩音の身体は悦び反応し、刺激を求めずにはいられなくなってしまうのだった。
「詩音、おいで」
その言葉に詩音が布から顔を覗かせると、服を脱いで両手を広げた彼の姿があった。
詩音がそこに吸い寄せられるように体を起こすと、ぎゅうっと上半身を抱きしめられる。前半身全部に、体温が伝わってくる。先程からたくさんの刺激を浴び続けた詩音の二つの突起は、彼の肌と擦れ合って再びその存在を主張し始めた。その擦れる感触で、詩音自身もまた、スイッチが入るのを感じていた。
遥星は一旦身体を少し離し、その主張の激しい二つの膨らみを両手でそれぞれ持ち上げた。優しく揉み上げながら吸い付き、舌でその固いところをコロコロと転がす。
「ぁんっ、ぁ……ゃ……んっ」
今日は、いつも以上にそこが敏感になっている。詩音は、それらの刺激に声を抑えることが出来なかった。
顔を上げた遥星は、詩音の手首を掴んでその場に組み敷いた。唇を触れ合わせた後、首筋に強く吸い付き、そこから、胸、腰、と下へ下へと先を急いでいく。詩音の脚を持ち上げ、太腿の裏を舐め上げる。
その刺激と、これから始まることへの期待と、羞恥と。詩音の泉は蜜を垂らし始め、早く早くと彼を誘なう。遥星はそこをぺろりと一舐めすると、すぐに自分のものを押し込んだ。これまでその存在を隠していたものの、彼女の動き一つ一つに昂る欲望を溜め込んでいたそれは、硬く鋭く、詩音を貫いた。
「ん、あぁ……」
ずっと、ずっと待っていた。
詩音の中は、躊躇うことなく彼を飲み込み、そして、締め付ける。
奥へ奥へと、締め付けるたびに引っ張っていく。
彼の手でされている時は、詩音は完全に支配されている感じがしている。だが、この時ーー彼自身を飲み込んでいる時は、逆に支配しているような感覚に囚われる。
被支配と支配とーーどちらをも行ったり来たりしながら、二人の身体は回を重ねるごとに絆を深めていく。
「詩音」
「はい」
「好きだよ」
その、言葉は。
詩音が教えた、感情を伝える言葉ーー。
普段彼からはあまり聞くことのない、その言葉。
「わたしも、遥さまが大好きです」
詩音が答えると同時に、彼は中で果てた。
既に詩音自身の歓迎する蜜で溢れていたその奥に、別の液体がとくとくと注がれていく。
詩音はその熱をじっくりと味わっていた。
。.:*・゜
「詩音」
彼女の胸に顔を埋めた遥星が、上目遣いに呼びかける。その頭を抱きしめ、髪を撫でる詩音が、顔を彼の方に向ける。
「その、今日は、ごめんな」
「? なにがですか?」
「なんか……意地悪なことしてしまったかと……」
詩音はきょとんとして、そして微笑んだ。
「ふふ、今更ですか?」
「お、怒ってるか?」
「そんなわけ、ないですよ。遥さまは、楽しんでたのかと」
「いや、そりゃまぁ、そうなんだけど」
今日の彼は、少しいつもより歯切れが悪い。一体何を気にしているというのだろう、と詩音は思った。いつもいろんな攻撃を仕掛けてきているくせに。
「つい、始めたはいいんだが……あれ、耐えるの辛かった」
「えー?」
「詩音が自分から言うまで触らないようにしようって、そう頑張ってたんだけど、途中からもう、触りたくてーーめちゃくちゃぐちゃぐちゃにしたくて」
「……すごいことをおっしゃいますね」
「ああああ、すまぬ!」
遥星はそう言ってもう一度顔を埋めた。
(今日は、仔犬モードね。)
この人は、色々な顔を見せてくれる。強気で支配的だったり、優しく柔和だったり、少し冷たい時もあったり、甘えん坊であったり。どんな顔も、詩音は愛しくて堪らない。
「じゃあ、遥さま。今度は、私が『意地悪』しても良いですか?」
「何をする気だ?」
「うーん……あれ、思いつかない……」
「なんだそれは」
「なんか『されたいこと』、あります?」
「え、あぁ……そう言われると、困るな」
二人は同時に、くすくすと笑った。
遥星は、詩音の肩から背中、腰と手を滑らせると、不思議そうに問いかけた。
「なぁ、詩音。詩音の肌は、なんでこんなに気持ちいいんだ?」
「気持ちいい、ですか?」
「うん。するする滑って、でもしっとり吸い付いて、この肌に触れると、どうしても止まらなくなってしまう」
詩音は少し考えてから答えた。
「だとしたら、それは遥さまのせいですよ」
「なぜだ?」
「貴方のこの手に触れられると、私は……もっと触れて欲しい、って……めちゃくちゃに、ぐちゃぐちゃにしてほしいって、そう思ってしまうんです。だから、私の身体が、勝手に反応して、そうなってるのかも」
遥星は会話の間もその肌の滑らかさを楽しみながら、詩音の言葉を聞いてにっこり微笑んだ。
「やっぱり、詩音は『えっち』だなぁ」
「あ、もう! またそれー!」
「可愛い、最高だ」
「……やっぱり、遥さまは『意地悪』です」
詩音は複雑そうな表情をしながら、彼の頭をぎゅっと抱きしめた。
遥星は、自分の顔の前の乳房のふわふわしたところに吸い付き、ちょんちょんと先端を指で押した。
「あ、もぅ、んっ」
「今日は、ここに随分と『意地悪』してしまったかもしれぬ。痛くないか?」
「もー。……正直に言うとですね、今、ちょっとヒリヒリしてます」
「!! そうか、詩音、ごめん。ほんとごめんな」
遥星は、ぎゅうっと詩音の腰にしがみついた。
彼女は、詩音は、自分が何をしても全て受け入れてくれる。大きな心で自分を包み込んで、許してくれる。
感情を掻き乱す存在でありながら、また他では為し得ない安心感を与えてくれる存在だった。
「詩音。私の側から、いなくならないでくれ」
遥星は心からの想いを、そっと呟いた。
「当たり前じゃないですか。私の居場所は、ここしかないんですから。だから、離さないでいてくださいね」
詩音は自分の身体を滑らせ、遥星の胸の中に収まるように抱きついた。
詩音が顔を上げると、視線が交わる。二人は同時にそっと目を閉じ、唇を触れ合わせた。
互いが互いの肌の感触を感じながら、ゆっくり、溶け合うように抱きしめ合った。
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