【R18】月下の華は淫靡に拓く

佐伯 鮪

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※塗り替えて。ぜんぶ、暴いて、何もかも※

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「詩音は俺のものだ。誰にも触らせない」


 先日の遥星の発言を思い出し、詩音はニヤける頬を抑えきれず、両手で口元を覆った。
 いつも自分のことを「私」という彼が、あの時だけ「俺」と言う――そんな特別感が、詩音は嬉しくてたまらなかった。そして、自分ばかり追いかけてきたと思っていたが、彼もまた自分のことを想ってくれていたのだとわかり、その幸福感もまた、詩音の心を満たしていた。



「―――詩音? おーい」


 目の前でひらひらと手を振られ、はっと我に返る。
 
 詩音は今、いつもの寝台の上にいた。
 いざという時なのに、別のことを考えてしまっていたことを恥じる。


「ご、ごめんなさい遥さま! ちょっと考え事を……」


 今度は反対に、遥星が何かを考えこむように黙ってしまう。


「……遥さま?」


 詩音が問うと、遥星は詩音の手を取って、ぽつぽつと話し出した。


「詩音、そなたは、初めてではないのであろう? ようやくこうしてこの手に抱けるようになった訳だが、過去にそなたに同じようにした男がいるのだと思うと、悔しくて悔しくてたまらないのだ」


―――橘 詩音、28歳。
 この世界に来る前は、普通に都会のOLをしていた。
 2年近く彼氏はいなかったが、決してモテないわけではなかったし、何人かと付き合ったこともある。
 その状態で処女でい続けるというのは、よっぽどの強い信念でもない限り、なかなかいないだろう。


(元カレのことなんて、すっかり忘れてたけど)


「……年上でも人妻でも気にしないって、以前おっしゃっていましたのに」


 詩音は遥星の手を優しく握り返しながら言った。


「あぁ……そうだな、確かに言った。だがあの時は、他人事だったんだ、たぶん。今は、詩音の身体に触れる度に、愛しい気持ちと、その過去を引き剥がしたい気持ちが湧いてきて、自分が情けなくなる」


「遥さま……」


 詩音は握った手を持ち上げ、その甲にちゅっと口づけを落とした。


「私には、もう貴方しか見えません。過去は変えられませんが……正直、私自身もうあまり覚えてもいないことです。今のこの私は、すべて貴方のものですから。これから先、貴方以外にこの身体を開くことは誓ってありません」


 寝台の上に座って向き合った状態の二人だったが、詩音はくっと身体を伸ばして遥星にキスをした。

 そして、帯に手をかけ、そろそろと彼の服を脱がしていく。ごつごつと骨ばった肩や鎖骨、お腹にもキスをしながら、自分自身の服もするすると落としていった。

 あらわになった遥星のそこは、相変わらず天を向いて直角に屹立きつりつし、行燈あんどんの淡い灯りを受けて妖しい存在感を放っている。


 詩音は自分の二つの乳房でそれを挟み、上下に揺すった。


「……しお、ん」


 呼ぶ声に上を見上げ、視線が交わる。


「遥さま……私、何でもしますから。ご奉仕させてください。貴方が安心できるまで、いくらでもお好きなように。全て暴いて、塗り替えてください」


 そして詩音は、そそり立つそこに口付け、ぺろりと舐めた。


 詩音は片手で根元をそっと握りながら、剥き出しになってつるつるした部分をそっと口で覆う。口の中を自身の唾液で満たしながら、その首元を周るように舌を這わせる。すると遥星がぴくっと身体を震わせ、息を漏らしたのがわかった。


(…この、段差が……いつもこれが、私の中に)


 そう思うと、自分自身の身体も熱くなってくるのを如実に感じた。
 右手はその根元を優しくしごきながら、左手で睾丸をころころともてあそぶ。その奥の筋――女性だったら割れているはずの場所にも指を添わせながら、口の方は同じ動きを続けていく。


「し、詩音……だめ、だっ」


 そう言うか否かのタイミングで、びゅるるるっと勢いよく詩音の口内に熱い液体が注がれた。


「ん…ふ……」


 詩音はそれを全て飲み込み、余すことなく舐めとった。
 申し訳なさそうな顔をする遥星に、詩音は少し疲れた顎で微笑んで言う。


「ふふ、私の口の中もお腹の中も、遥さまでいっぱいになっちゃいました。……もっと、もっと貴方で満たしてください。私の中も外も、ぜんぶ」


 それを聞いた遥星は、そっと詩音の髪に指を差し込み、ふわりと撫でた。詩音を優しく組み敷くと、その首筋や胸、お腹、いたるところを強く吸い込んでいく。その度に、詩音はじんわりと痺れを感じ、身体をくねらせた。
 やがて身体中に沢山の花が咲いた。
 それは暗い灯りの中でも見て取れるほどだった。


 遥星は自分自身も寝ころび、詩音を自分の上に乗るように促した。音を立てて深い口づけを交わした後、少し身体を下げて詩音の乳房を口に含む。下を向いていつもより大きく見えるそこを、両手でゆらゆらと弾力を楽しみながら、舌で遊ぶように転がしていく。
 さっきあんなに出したばかりだというのに、彼のそこは再び硬くなってお尻にこつこつと当たっているのを感じ、詩音は湧き上がってくる熱を止められずにいた。


「よう、さま......」


 上がる呼吸の中、愛しい人の名前を呼ぶ。


「詩音、こっち。もっと、よく見せて」


 遥星は詩音の腰を掴んで、その場で回転するように誘導する。詩音は、彼のそこを目の前にするのと同時に、自分自身の後ろを彼に向けていることになる。


「......恥ずか、しいです...」

「全部暴けと言ったのは、そなただろう? ほら、もっと開いて、奥まで見せろ」

「ん、やぁ......っ」


 穴の周りにぐっと手をかけ広げられ、いつも風を受けることはないそこに、スースーと空気を感じる。


「赤い、こんななってるのか」

「そん、な......自分でも見た事ない、のにっ」

 
 顔は見えないがまじまじと眺められていることがわかってしまう。それを考えるとじんじん震え、詩音のそこはとろとろと蜜を溢れさす。
 詩音がその羞恥に耐えていると、急に芯の部分に熱が与えられ、じゅるり、と音が響いた。

「あっ......はぁ、んっ」

 それが彼によって舐められたのだと理解したのは、自分が声を上げた後だった。


「まだ触れてもいなかったのに、こんなにいやらしく蜜を垂らして......まだ出るのか」

「だって、そんなの、見られるなんて......っ」

「見るだけで、感じるのか? それだけで?」

「うぅ......」


 自分自身でもとめどなく溢れてくる蜜を感じながら、詩音は目の前で赤黒くそびえているものを口に含み、わざと音を立ててそれを啜る。前から、後ろから、水の跳ねる音が響き、羞恥心を奪っていく。


「あ、あぁっ」

 溢れる蜜壺の中に、異物が侵入してくる感触に声を上げた。

 それは何かを探るように踊ったり、ボコボコした壁を行き来する。
 さっきよりもさらに大きな水音が、詩音の耳を犯していく。
 泉を溢れさせる点を見つけたその指は、執拗に、しかし焦ることなく、繰り返し繰り返しその点を刺激する。


「んっ、は、ぁん、あ」


 刺激を与えられる度に脳が痺れ、自分の意思などそこに介在しないように、身体が勝手にくねくねと踊る。
 限界が見えそうになった頃、詩音の剥き出しになった突起のところに、熱いものが這う感触が与えられた。


「あぁっ、そんな、だめ、だめです……いっちゃ、あぁっ!」


 ゆっくり繰り返された、もう少し激しくして欲しいと思うくらいの中への刺激の最中に、入口の芯に降ってきた感触と相まって、そこからあっという間に果ててしまった。

 くったりと身体を落とす詩音のそこから溢れてくる蜜を、遥星が優しく丁寧に舐めとる。
 それが終わったあと、詩音は上に乗っているのが申し訳なくなり、身体を横に回転させて降りた。


「甘い。詩音のこの蜜、すごく甘い」


 そう言いながら、遥星は身体を起こした。


「よう、さま」

「詩音……気持ち、良かったか?」

「……はい、おかしくなりそうなくらい。もう、なってるかもしれませんが」


 遥星は詩音の髪を撫でながら、まだ鋭さのある目を向けながら言う。


「でも、ごめんな。まだ終われないんだ」

 
 そう言って、自身の膨らんだそこを一撫でして見せつけた。
 詩音はとろんとした目で見つめながら、そこに手を伸ばす。


「もちろんです、もっと、私を壊してください」


 それを聞くや否や、遥星はもう一度詩音をうつ伏せにし、腰を浮かすように指示をした。

 一旦水の引いたそこにもう一度指を差し込み、状態を確認する。
 引いたと見えたのは外側のみで、中の方はまだまだ充分に潤いを残していた。

 
 羞恥と、そして、期待と。


 詩音は大人しく従い、顔の見えない中で彼を待った。


 腰を両側から掴まれるとすぐに、そこに当てられる感覚が走る。
 遥星は最初は小さく入口付近を往復し、徐々に侵入する深度を上げてゆく。


 そしてまた詩音の泉は溢れ出し、奥へ奥へといざなっていく。
 

「あんっ、あんっ、あんっ」


 規則的な動きに反応し、自分の声までそれに合わせて奥へ当たる度に一定のリズムで弾む。
 肌のぶつかる音と声が、部屋の中にこだまする。


 詩音の脳は、奥へぶつかる硬くて柔らかい刺激だけを求め、他の何かを考えるということをさせない。
 よりところに当たるように、勝手に身体を動かし、リズムを刻んでいく。

 一度絶頂を迎えたそこは、欲望に貪欲に、絞るように収縮を繰り返す。


「……しおん、も、出るっ」
「遥さまっ…きて、きてくださいっ」


 最後に激しく打ち付けてきた時、詩音は首をぴんと仰け反らせた。


「あぁっ……」
「くっ…」


 どくどくと熱い液体が注ぎ込まれる感覚が、再び絶頂を迎えた詩音に追い打ちをかけるように快感を与える。
 遥星が自身を抜き取ると、それはすぐにこぼれ、脚を伝って垂れていった。


「はぁ、はぁ」

 
 そして会話もそこそこに、すぐに眠りに落ちてしまった。




.+*:゚+。.☆



 外から聞こえる小鳥のさえずりで目を覚ます。
 白い光が部屋に差し込み、今が朝だということがわかった。

 
 目の前で愛らしいあどけない顔が、寝息を立てているのを見て詩音は笑みがこぼれた。


(こんなに可愛いのに、結構Sっ気あるんだよね…)

 
 詩音がその頬をそっと撫でると、長い睫毛がゆっくりと開いた。
 自分の顔を寄せ、そっとキスをする。


「……愛しています、遥さま」


 遥星は寝ぼけながら微笑み、詩音の首筋を撫でた。


「詩音……今日は、公の場には出るな」

「?」


 不思議に思って寝台の横から手鏡を取って自分の身体を見てみると、昨夜咲かされた花びらが全身に――首筋や腕など服の上からでも見えるところも含めて――無数に散らばっていた。
 白い光の下で、より鮮やかに咲き誇っている。


 詩音は咄嗟に布団を被って、目から上だけ出した。


「もう、遥さまったら……今日はお部屋で、事務処理でもしてます」

「というか、別にそんなに仕事しなくてもいいんだが」

「それは好きでやってるので。やらせてください」


 
 それから、公務のための支度を終えた遥星が部屋から出ていくのを見送ったあと、詩音は身体に添えられた花に指を這わす。

 彼の不安は、解消されただろうか。
 自分の気持ちは、覚悟は、彼に伝わっただろうか。

 確かに人前に出れないのは困るのだが、刻まれた痕が嬉しくもあり、いつまででも残しておきたいと思うのだった。
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