星屑のビキニアーマー

ぺんらば

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第2章 星屑のビキニアーマー

調査依頼

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「さて少年。鳥籠に囚われたキミは今、この私が怖いかね?」

 一人になったタケルに、ガーランドは不気味に微笑む。

「怖くないですよ。僕みたいな奴にまで保険をかけるような臆病者に、恐れる理由なんて無いですから」

 随分と刺々しい言い方だが、これがタケルの本心だ。この部屋で嘘をつけば命を失うことになる。ガーランドは自分がここまで臆病に見られていることに、思わず声に出して笑ってしまった。

「ふふふ。すまない。確かにその通りだな」

「笑えば良いですよ。あなたはそうやって僕を下に見て楽しいのでしょうけど、僕はあなたを上だなんて思っていません。それと、魔法をかけられている方が、むしろ都合が良いんです。話すこと全てを信じてもらえるんですから」

「うむ。すまなかった。では、さっそく話を聞かせてもらおう」

 タケルは自分が知り得る全ての情報をガーランドに話した。もちろん、クロナが死ぬことも全てだ。ガーランドはしばらく考え込んでいたが、深くため息をつき、そして杖を高く振りかざした。

「魔法解除!」

 部屋の中が真っ白に輝く。ガーランドはこの部屋にかけている全ての魔法を解いたのだ。張り詰めていた緊張の糸が緩むのをタケルは感じた。

「先にも伝えた通り、私の時空魔法はまだ完成していない。そして、未来の私がキミに放つ時空魔法も未完成なのだろう。故に、キミだけが今、この時代にきている」

 それはおかしいのではとタケルは思った。この世界に飛ばされてきたのはタケルだけではない。勇敢な柔道部の部長と、生徒会書記の少女も一緒に来ているはずなのだ。

「剛田くんたちは来ていないんですか?」

「キミが話しているその二人は時空の扉を使ったのだろう。ならば、降りる時代を間違えることはない」

 未完成な時空魔法と違い、賢者の腕輪から発生させられる扉の先は一本道だ。剛田たちは、崩壊したラグラークの時代に飛ばされたことになる。

「私が時空魔法を使えるようになるには最低でも二年はかかる。つまり、キミの友人たちをこの世界に連れてくるのは、それより先になるはずだ。二年の猶予があれば未来を変えることも不可能ではない。どうだね? 私に協力して、世界を救ってはくれないか?」

 タケルに断わる理由は無い。死ぬ運命にある友人を救えるのなら、どんな危険なことにでも挑戦し、やり遂げる覚悟だった。

「で、僕は何をすれば良いんです?」

「まずはレナスに向かい、地下階の調査をしてもらう」

「地下階の……調査ですか?」

 ラグラークの隣国、レナスには、他国の者には決して踏み入ることの許さない地下への階段がある。階段は各世帯ごとにあるのだが、ガーランドはその地下にあるの調査をタケルに依頼した。

「私はレナスで魔法を教えていたことがある。しかし、生まれは遥か北の地。つまり、レナスの民ではない。故に、地下にある像について詳細を知ることはできなかった。しかし、あの像には何かある。魔物の出現と、何か関係してるのではないかと私は思うのだ」

「だけど、レナスの人たちがすんなり地下に通してくれるとは思えませんが」

「許可などいらぬさ。街から少し離れた森に、クロナの家があるのは知っておろう。そこならば誰にも邪魔されず調査ができるはず」

 不法侵入をしろと、ガーランド言っている。

「そんな……。それってクロナさんを裏切る行為じゃないか」

 タケルはその指示に従う気など無かったが、今はただ頷くだけにした。クロナなら、話せば協力してくれるはず。それに、地下のことについても、知っていれば話してくれると思ったからだ。

「タケルよ。明日にでも出発してもらうことはできるか?」

「はい。でも、クロナさんはここに残るんですよね……。僕一人でレナスまで行ける自信は無いなぁ。同行者をつけてもらうことはできませんか?」

「もちろんそのつもりだ。護衛には、我が娘をつけよう。剣の腕ならばラグラークの騎士団長と互角かそれ以上。さらに、回復と補助魔法も使える……。命をかけてキミを守ってくれることだろう」

「……それは、心強いです」

 魔法の解かれた部屋の中では、二人の会話にどこまで真実があるのかを知る術は無い。

「長い旅になるだろう。旅中は素性を隠すため、旅商人を演じてもらう。鎧売りの商人だ。クロナに授けたビキニアーマーとやらを、レナスに到着するまでに二百用意してもらいたい」

「ビキニアーマーを、二百着もですか?」

「数日おきに我が兵を向かわせる。その者に完成させたビキニアーマーを渡すのだ。材料と報酬は出す。キミにとって悪い話ではないと思うが」

 ガーランドはタケルにビキニアーマーを発注した。が、それは女性用ではなく、男性用のものだった。ガーランドは王直下の騎士たちに、ビキニアーマーを着せると言っているのだ。

 部屋を出たタケルは、ガーランドの目が本気だったことを思い出し、僅かながら恐怖していた。この世界では、あの鎧に恥じらう気持ちなど、一切持ち合わせていないのだ。
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