1 / 1
救いは簡単に
しおりを挟む
今から5千年前。迷い苦しむ人の元にサルの高僧が現れました。迷いや苦しみをなくす方法を見つけた彼はそこから先何千年と敬われてきたのです。
時は現代。若いサルが一生懸命古めかしい書物を読み漁っています。茶色く変色して端っこがかけている書物を必死に解読しているのです。
「大変だ……!僕たちは大事なことを見落としていたらしい、お父様に相談しなくては」
若きサルは研究した古い文献をレポートにまとめ、尊敬する父が待つ国へ大慌てで帰りました。
「お父様!大変です!今すぐに信者の皆様にお知らせしなくてはいけないことがあります!」
「息子よ、いついかなる時も穏やかな心を持たなくてはいけない。救世主もそのように後世に書き残しているだろう」
「えぇお父様、救世主様が僕たちのために『教え』を書き残してくださったのは存じ上げております。ですが、僕たちが今信じている教典には抜けている部分があったのです!それも救世主様が一番伝えたかったことが抜けていたのです」
「ほう、それは一体どんな内容だ」
「救世主様がお眠りになったという国へ行ってまいりまして見つけたのです、原典を!そこには救世主や教祖を崇め奉れとはどこにも載っておらず、生活の知恵が綴られていました。迷いや苦しみは誰かに消してもらうものではなく、迷いや苦しみを抱えている本人が自分自身で消し方を見つけなくてはいけないのだと!」
「ほう、それで息子よお前はどうしたいのだ?」
「僕は、今信者の皆さんの手元にある教典を直さなくてはいけないと思います。それと皆さんに買ってもらう『闇祓い棒』僕たちはこれを苦しみをなくすのに絶対必要だと思っていましたが、『闇祓い棒』が必要なんて救世主は一言も書いてません!」
「なるほど」
「間違えた教えを、正さなくてはいけません!今すぐ集会を!」
「待ちなさい息子よ」
年老いたサルが、若いサルに言いました。
「教えというのは時代を経て変わりゆくものだ。可哀想な迷える信者たちは自分で苦しみを消す方法を知らない。だから『闇祓い棒』は絶対にいるのだよ」
「しかし原典には今すぐに苦しみを消す方法がわからなくても、じっくり己の心と向き合い続ける事が大事だと」
「まぁ待ちなさい、苦しみを無くす方法を時間をかけて頭を捻って見つけるのは今の時代の人々には合っていない、現代人はなんせ時間がないし、難しいことを考えるのも好きじゃない。『手っ取り早くて簡単で便利なもの』が大好きだ。例え救世主の教えであっても現代に合わない部分は必要ないし、必要があれば新しい教えを足さなくてはいけない」
「……それが『闇祓い棒』という事ですか?」
「さぁ、息子よ。悩み苦しむ人たちをこの『闇祓い棒』で叩いて解放してあげなさい」
「ですが」
「ふむ、お前の中にはまだ迷いがあるようだ。まずはお前自身を『闇祓い棒』で叩かなくてはいけないらしい」
仰々しい椅子に腰掛けていた年老いたサルは、棒を手に立ち上がりました。
「いえ、お父様申し訳ありません!すぐに行って参ります!」
若いサルは、棒を片手に駆け足で部屋を出ていきました。
「……ふぅ、全く。賢い息子を持つと苦労する。危うく棒と私が書いた本が売れなくなるところだった」
時は現代。若いサルが一生懸命古めかしい書物を読み漁っています。茶色く変色して端っこがかけている書物を必死に解読しているのです。
「大変だ……!僕たちは大事なことを見落としていたらしい、お父様に相談しなくては」
若きサルは研究した古い文献をレポートにまとめ、尊敬する父が待つ国へ大慌てで帰りました。
「お父様!大変です!今すぐに信者の皆様にお知らせしなくてはいけないことがあります!」
「息子よ、いついかなる時も穏やかな心を持たなくてはいけない。救世主もそのように後世に書き残しているだろう」
「えぇお父様、救世主様が僕たちのために『教え』を書き残してくださったのは存じ上げております。ですが、僕たちが今信じている教典には抜けている部分があったのです!それも救世主様が一番伝えたかったことが抜けていたのです」
「ほう、それは一体どんな内容だ」
「救世主様がお眠りになったという国へ行ってまいりまして見つけたのです、原典を!そこには救世主や教祖を崇め奉れとはどこにも載っておらず、生活の知恵が綴られていました。迷いや苦しみは誰かに消してもらうものではなく、迷いや苦しみを抱えている本人が自分自身で消し方を見つけなくてはいけないのだと!」
「ほう、それで息子よお前はどうしたいのだ?」
「僕は、今信者の皆さんの手元にある教典を直さなくてはいけないと思います。それと皆さんに買ってもらう『闇祓い棒』僕たちはこれを苦しみをなくすのに絶対必要だと思っていましたが、『闇祓い棒』が必要なんて救世主は一言も書いてません!」
「なるほど」
「間違えた教えを、正さなくてはいけません!今すぐ集会を!」
「待ちなさい息子よ」
年老いたサルが、若いサルに言いました。
「教えというのは時代を経て変わりゆくものだ。可哀想な迷える信者たちは自分で苦しみを消す方法を知らない。だから『闇祓い棒』は絶対にいるのだよ」
「しかし原典には今すぐに苦しみを消す方法がわからなくても、じっくり己の心と向き合い続ける事が大事だと」
「まぁ待ちなさい、苦しみを無くす方法を時間をかけて頭を捻って見つけるのは今の時代の人々には合っていない、現代人はなんせ時間がないし、難しいことを考えるのも好きじゃない。『手っ取り早くて簡単で便利なもの』が大好きだ。例え救世主の教えであっても現代に合わない部分は必要ないし、必要があれば新しい教えを足さなくてはいけない」
「……それが『闇祓い棒』という事ですか?」
「さぁ、息子よ。悩み苦しむ人たちをこの『闇祓い棒』で叩いて解放してあげなさい」
「ですが」
「ふむ、お前の中にはまだ迷いがあるようだ。まずはお前自身を『闇祓い棒』で叩かなくてはいけないらしい」
仰々しい椅子に腰掛けていた年老いたサルは、棒を手に立ち上がりました。
「いえ、お父様申し訳ありません!すぐに行って参ります!」
若いサルは、棒を片手に駆け足で部屋を出ていきました。
「……ふぅ、全く。賢い息子を持つと苦労する。危うく棒と私が書いた本が売れなくなるところだった」
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説



サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。


麗しき未亡人
石田空
現代文学
地方都市の市議の秘書の仕事は慌ただしい。市議の秘書を務めている康隆は、市民の冠婚葬祭をチェックしてはいつも市議代行として出かけている。
そんな中、葬式に参加していて光恵と毎回出会うことに気付く……。
他サイトにも掲載しております。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる