最強の騎士様も武器がなければ戦えない

かれは

文字の大きさ
上 下
9 / 15
マメ太

9.マメ太

しおりを挟む
どれだけの時間落下していたのかわからない。
けれど無事に着地することができた。

シュウメイのおかげで。

シュウメイの身体能力はもはや人間ではないようだ。

どこかに降り立って足元を確認する。足元はしっかりしている。

暗くてよく見えないが建造物なのかもしれない。

その時。



ようこそ。



頭に声が響いた。

先ほどの声と同じものだ。

「君は誰なんだ?」

シュウメイが問いかけるとすぐに返答が返ってきた。

「僕はマメ太。」

えっ。

今度は足元から声が聞こえた。

「正確には君たちがマメ太と呼んでいる‥」

「「まっ、マメ太ーッッ」」


「マメ太が喋った。」

「信じられない。」

夢でも見ているのか。でもそれならどこからが夢?今日起こっていること全て?もしかして、シュウメイと会ったことすら夢だったりして。

混乱する僕たちを見て、マメ太は少し引いていた。

「少し落ち着いてくれないかな。まだ話の途中なんだけど。」

「これが落ち着いていられるかっ。これはすごいことだぞ、何せモンスターがしゃべったんだから。はっ、まさか魔王の遣いなのか。倒すか?うん。倒そう。」

シュウメイは自分以上におかしくなっているのを見て何だか少し冷静になれた。


「シュウメイ。落ち着こう。一旦落ち着いて話を聞こう。ねっ。」

シュウメイは深く深呼吸した。

「そうだね。落ち着こう。まずは落ち着いてからだ。」

マメ太の方を見る。

「あっ、大丈夫ね。じゃあ話すね。」


「僕はね。魔王なのよ。」

‥‥‥。

‥‥‥。


「「は?」」

「んなわけあるかっ。」

シュウメイがキレのあるツッコミを入れる。

「そんなわけあるんだよ。」

「いやいや、魔王がこんなちっこい犬なわけないだろーがー。」

「まあ、確かに、そうかもしれない。だがこれは仮の姿。真の姿を見たら驚くよ。絶対に。」

「じゃあ、なってみろ。真の姿とやらに。」

「それが、今はできないんだなー。これが。」

「‥よし。じゃあ、今のうちに倒すか。」

シュウメイは腕を回す。

まぁ、確かにこいつが本当に魔王なんだとしたら。何らかの理由で弱体化している今がチャンスなのは間違いない。だけど違ったとしたらこの可愛い生物を倒すなんて、できない。

「シュウメイ‥。」

「?どうした。ユア。」

「まだ、その時じゃない。」

「えっ?」

「つまり、こいつを倒すのはまだ後だってこと。」

「なんで。」

「考えてもみなよ。こんなちっちゃい生物が魔王だなんて。第一、魔王が護衛も付けずにこんなところにいる?それに仮にこの言葉が本当だったとしても無害な今の状態で倒しても後味悪いでしょ。真の魔王の姿になってから倒してこそ。世界を救ったっていう実感ができると思うんだよ。」

自分でもよくわからないことを言ってしまった。

「うーん。確かに、そうかもしれない。」

あっ、いいんだ。

「こいつが魔王かなんてまだわからないもんな。弱そうだし。まあ、とにかくここから脱出することを第一に考えよう。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

出来損ない王女(5歳)が、問題児部隊の隊長に就任しました

瑠美るみ子
ファンタジー
魔法至上主義のグラスター王国にて。 レクティタは王族にも関わらず魔力が無かったため、実の父である国王から虐げられていた。 そんな中、彼女は国境の王国魔法軍第七特殊部隊の隊長に任命される。 そこは、実力はあるものの、異教徒や平民の魔法使いばかり集まった部隊で、最近巷で有名になっている集団であった。 王国魔法のみが正当な魔法と信じる国王は、国民から英雄視される第七部隊が目障りだった。そのため、褒美としてレクティタを隊長に就任させ、彼女を生贄に部隊を潰そうとした……のだが。 「隊長~勉強頑張っているか~?」 「ひひひ……差し入れのお菓子です」 「あ、クッキー!!」 「この時間にお菓子をあげると夕飯が入らなくなるからやめなさいといつも言っているでしょう! 隊長もこっそり食べない! せめて一枚だけにしないさい!」 第七部隊の面々は、国王の思惑とは反対に、レクティタと交流していきどんどん仲良くなっていく。 そして、レクティタ自身もまた、変人だが魔法使いのエリートである彼らに囲まれて、英才教育を受けていくうちに己の才能を開花していく。 ほのぼのとコメディ七割、戦闘とシリアス三割ぐらいの、第七部隊の日常物語。 *小説家になろう・カクヨム様にても掲載しています。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

捨て猫はエリート騎士に溺愛される

135
BL
絶賛反抗期中のヤンキーが異世界でエリート騎士に甘やかされて、飼い猫になる話。 目つきの悪い野良猫が飼い猫になって目きゅるんきゅるんの愛される存在になる感じで読んでください。 お話をうまく書けるようになったら続きを書いてみたいなって。 京也は総受け。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた! どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。 そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?! いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?! 会社員男性と、異世界獣人のお話。 ※6話で完結します。さくっと読めます。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

過食症の僕なんかが異世界に行ったって……

おがとま
BL
過食症の受け「春」は自身の醜さに苦しんでいた。そこに強い光が差し込み異世界に…?! ではなく、神様の私欲の巻き添えをくらい、雑に異世界に飛ばされてしまった。まあそこでなんやかんやあって攻め「ギル」に出会う。ギルは街1番の鍛冶屋、真面目で筋肉ムキムキ。 凸凹な2人がお互いを意識し、尊敬し、愛し合う物語。

処理中です...