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大瀬仁菜子
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涼ちゃんー!!圭ちゃんが女の人と歩いてた!」
「だから言ったでしょ。兄さん、多分彼女居るって」
部屋でいつものように音楽を聴いていると、隣に住む幼なじみ、大瀬仁菜子が突然大声を上げて僕の部屋に走り込んで来た。今、何時だと思ってんの?もう、夜の10時過ぎなんだけれども……なんて思いながら重い腰を椅子から上げる。
「ねえ、勝手にベッドに寝ころばないでっていつも言ってるよね?」
「うん。でもお風呂には入ったから綺麗だよ」
「……そういう事言ってんじゃない……」
仁菜子は僕の言葉もお構いなしにベッドの上でひたすらごろごろすると、突然体を起こしたと思うと胡座をかいた。僕はと言えばベッドの横に腰かけて彼女をじーっと見る。
「何で涼ちゃんは知ってたの?圭ちゃんに彼女が居るかもしれないって事」
「何となく。長い休みの日とかはこっちに帰らない事が多かったしさ」
「ああー。知ってたんなら早くに言ってよ」
「言ってたよ。でも仁菜子が聞かなかったんじゃない」
はあ……と盛大なため息を吐きながら彼女を見ると、胡座の姿勢のままベッドにボスンと倒れ込んだ。そして顔を腕で押さえたまま呟く。
「ずっと……好きだったのにな……」
幼なじみの仁菜子は小さな頃から僕の兄の圭の事が好きだ。それが僕が覚えている限りでは物心付いた時からの年季の入りようで、幼稚園の頃には既に「わたし、あきちゃんのおよめさんになるの!」とか言っていた気がする。僕は幼いながらもそんなの無理に決まっているじゃないか……なんて冷めた目で見ていた。
だって、兄は僕たちよりも6歳も年上だ。兄から見れば僕も仁菜子も本当に子供だ。そしてきっと大切な弟と妹。それはきっといつまで経っても、何歳になっても変わらない関係だと思う。「いつまで経っても仁菜子は兄ちゃんにとっては妹のままだと思うよ」……その事をはっきりと仁菜子に言ってやりたいけれど、さすがにそこまでは言えない。それは本人がいつか自分で気付かないといけない事だと思うし、今言った所で僕の意見に耳なんて貸さないだろう。
「ねえ、仁菜子、いい加減自分の家に帰ってくれない?」
「…………」
「聞いてるの?」
返って来ない返事。動かない仁菜子。そんな彼女を見ていると少しだけ苛々とした。どうして僕の前でそんな態度を取れるんだ?って。仁菜子が傷ついたという事は良くわかる。昔から兄一筋だったから。傍で何年その事をずっと見て来たと思ってるんだ?でも……それじゃ、僕は傷つかないとでも思ってんの?仁菜子は勝手すぎるよ。
そんな事を考えながらベッドに寝転がっているままの彼女に手を伸ばす。僕の手が仁菜子に触れた瞬間にびくりと彼女が動いた。
「ごめんね。涼ちゃん。自分勝手なのはわかってる。でも、今はもう少しだけ……このままでいさせて」
まだ腕を顔の上に乗せたまま小さな声で呟く仁菜子を見て、言おうとしていた言葉を飲み込んだ。
「わかった……」
僕は彼女の寝ころんでいるベッドから離れると、自分の机の椅子へと腰かけ、手元にあった週刊誌に目を落とした。
「だから言ったでしょ。兄さん、多分彼女居るって」
部屋でいつものように音楽を聴いていると、隣に住む幼なじみ、大瀬仁菜子が突然大声を上げて僕の部屋に走り込んで来た。今、何時だと思ってんの?もう、夜の10時過ぎなんだけれども……なんて思いながら重い腰を椅子から上げる。
「ねえ、勝手にベッドに寝ころばないでっていつも言ってるよね?」
「うん。でもお風呂には入ったから綺麗だよ」
「……そういう事言ってんじゃない……」
仁菜子は僕の言葉もお構いなしにベッドの上でひたすらごろごろすると、突然体を起こしたと思うと胡座をかいた。僕はと言えばベッドの横に腰かけて彼女をじーっと見る。
「何で涼ちゃんは知ってたの?圭ちゃんに彼女が居るかもしれないって事」
「何となく。長い休みの日とかはこっちに帰らない事が多かったしさ」
「ああー。知ってたんなら早くに言ってよ」
「言ってたよ。でも仁菜子が聞かなかったんじゃない」
はあ……と盛大なため息を吐きながら彼女を見ると、胡座の姿勢のままベッドにボスンと倒れ込んだ。そして顔を腕で押さえたまま呟く。
「ずっと……好きだったのにな……」
幼なじみの仁菜子は小さな頃から僕の兄の圭の事が好きだ。それが僕が覚えている限りでは物心付いた時からの年季の入りようで、幼稚園の頃には既に「わたし、あきちゃんのおよめさんになるの!」とか言っていた気がする。僕は幼いながらもそんなの無理に決まっているじゃないか……なんて冷めた目で見ていた。
だって、兄は僕たちよりも6歳も年上だ。兄から見れば僕も仁菜子も本当に子供だ。そしてきっと大切な弟と妹。それはきっといつまで経っても、何歳になっても変わらない関係だと思う。「いつまで経っても仁菜子は兄ちゃんにとっては妹のままだと思うよ」……その事をはっきりと仁菜子に言ってやりたいけれど、さすがにそこまでは言えない。それは本人がいつか自分で気付かないといけない事だと思うし、今言った所で僕の意見に耳なんて貸さないだろう。
「ねえ、仁菜子、いい加減自分の家に帰ってくれない?」
「…………」
「聞いてるの?」
返って来ない返事。動かない仁菜子。そんな彼女を見ていると少しだけ苛々とした。どうして僕の前でそんな態度を取れるんだ?って。仁菜子が傷ついたという事は良くわかる。昔から兄一筋だったから。傍で何年その事をずっと見て来たと思ってるんだ?でも……それじゃ、僕は傷つかないとでも思ってんの?仁菜子は勝手すぎるよ。
そんな事を考えながらベッドに寝転がっているままの彼女に手を伸ばす。僕の手が仁菜子に触れた瞬間にびくりと彼女が動いた。
「ごめんね。涼ちゃん。自分勝手なのはわかってる。でも、今はもう少しだけ……このままでいさせて」
まだ腕を顔の上に乗せたまま小さな声で呟く仁菜子を見て、言おうとしていた言葉を飲み込んだ。
「わかった……」
僕は彼女の寝ころんでいるベッドから離れると、自分の机の椅子へと腰かけ、手元にあった週刊誌に目を落とした。
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