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第49話 カルラの過去(7)

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 前日に顔合わせと挨拶を済ませたギルバート、ミュラーと私達は、神殿から少し離れた場所に来ていた。

「では、マサト殿。今日から剣術の訓練を始めます。基礎を身につけることは一番重要なことですので、しっかり学んで参りましょう」

 ギルバートの号令で私達の訓練が始まった。
 
 剣を握ったことがなかった夫は始めた頃はぎこちなかったが、勇者としての素質があったのかメキメキと頭角を現していった。
 一方、魔法のない世界に住んでいた私達は、魔法の扱いが分からず苦労していた。




 ある日、息抜きを兼ねて治癒魔法を使える神官を訪ねた。

「治癒魔法は想いです。病気が早く良くなりますように、傷が綺麗に塞がりますようにと気持ちを込めて祈るのです。私はそのようにして魔法を発動させています」

 その神官は優しい表情で教えてくれた。

「なるほど。想いですか。分かりました。ありがとうございました」

 少しだけ神官の言った意味が理解出来た。
 私は早速魔法を試してみようと思い、神官にお願いをした。

「すみません。私も治癒魔法を試しても構いませんか?」

「はい。治癒魔法が使える方なら助かります。人手が足りなくて困っていたんです」

 神官は答えると、次に待たせていた患者を連れて来た。
 まだ少年のように見える患者は右腕に包帯を巻いていた。
 白い包帯は血で赤く滲み、血が不足しているのか顔色は悪い。
 私は意を決すると優しく声を掛けた。

「お待たせしました。辛かったですね。今から治癒魔法を掛けます。楽にしてください」

 そう伝えて患部に手を翳してそこに意識を集中させた。
 傷が塞がるイメージと想いを込めて。

「ヒール」

 治癒魔法の一つのヒールを唱えた。
 すると掌から温かい何かがスゥと抜けていく感覚がした。

「ああ、痛みがなくなりました。腕も動きます。傷も跡形もなく治ってる。ありがとうございます!」

 包帯を取り何回か腕を動かして確認していた彼は礼を述べた。
 無事治癒魔法が使えたことで、安堵の息が漏れた。

「他に痛い所はありませんか?」

「いいえ。痛みも傷も全くありません!それに体が軽いんです!本当にありがとうございました!」

 彼は興奮気味で答えると、思い出したかのように慌てて立ち上がり深く頭を下げた。

「それは良かったです。お大事にしてください」

 隣で様子を見ていた神官に半ば強引に部屋を出された少年は、何度も振り返り頭を下げていた。
 私は初めて魔法を使ったことで、ようやくコツが掴めたことに内心驚いていた。

「魔法ってすごい」

 思わずそう呟いていた。
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