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最終話 新たに始まる幸せへの第一歩

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 ディラン様の独占欲まる出しの発言から二月経った。

 お義父さまから譲られた伯爵家で、朝からせっせと土いじりをしている。
 一月前にこの屋敷に居を移し、日当たりの良い場所に自生しているハーブを植えていく。
 ディラン様も手の空いている時は、一緒に手伝ってくれる。

「ミリー。裏庭の奥にまだこんなにハーブが生えていたぞ。これも植えるか?」

 籠の中には様々な種類のハーブが沢山あった。
 私は籠を覗き込み満面の笑みを浮かべた。

「わぁ。オレガノにカモミールにレモングラス。あれ?このハーブは……エルダーフラワー?!しかもこんなに沢山!素晴らしいです!ディラン様、ありがとうございます!これで風邪薬が大量に作れます!」

「お役に立ててなによりだ。でも、ハーブばかり見ないで俺のこともちゃんと見てくれ。いい加減、ハーブに嫉妬してハーブというハーブ全てを何処かに隠したくなる」

 拗ねた様子のディラン様は、ジト目で私を見つめた。

「ふふふ。ごめんなさい。つい興奮しちゃった。それじゃあ、一旦休憩にしましょうか」

「ああ。ガゼボでハーブティーを飲もう」

 そう言うと彼は後方に控えていた従者に告げると、素早く私の腰に手を回して歩き出した。




 ガゼボでハーブティーを飲みながら、私は感慨に耽っていた。

 裕福とは言えなかったが、家族に恵まれ沢山の愛情を注いでもらった。
 領民達も皆真面目で明るく朗らかで笑顔が絶えなかった。
 そして、私の隣には愛する人がいる。
 前世では諦めた望みがこの世界で叶った。

 もし、神さまが本当にいるのなら感謝の気持ちを伝えたい。

「ディラン様。私、今とても幸せです。ディラン様と出会えたことを神さまに感謝します。そして、ディラン様。私を見つけてくれてありがとうございます」

 彼は椅子を私の隣に移動させると手を握って告げた。

「俺の方こそありがとう。俺は君と出会うまでただ何となく生きていた。それが君と出会い前世の記憶が蘇って、ようやく生きる意味を見いだせた。俺の心に欠けていた物、それは君なんだと。本当にありがとう」

 私達は互いを見つめて微笑んだ。

「ディラン様。私、まだまだやりたい事があります。だから長生きしてくださいね」

「もちろんだ。ミリーも健康で俺より一日でも長く生きてくれ」

「はい。努力します!」

 私の元気な返事に彼は笑い出した。

「はははっ!努力か。そうだな。俺も努力しよう」

 ディラン様の笑いにつられて私もクスクスと笑みが零れた。




 二人を風が優しく撫でていき、誰の耳にも届くことがない声がした。

『二人の幸せを祈っているよ~』
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