上 下
58 / 66

第58話 愛しています

しおりを挟む
 ディラン様から告白されてからというもの、屋敷のガゼボで私達はハーブティーを一緒に飲むようになった。
 アリスとジークさんは気を利かせて、私達から離れたところで待機している。

「ミリーが淹れてくれたハーブティーはとても美味しい。心がこもっているからかな」

 彼は事あるごとに褒めてくるし、髪に触れたり手を握ってくる。
 恥ずかしい気持ちはあるが、悪い気はしないし心地良い。
 触られる度に鼓動が早くなり、まともに顔を見るのも照れるが、心がじんわりと温かくなるのを感じる。

「ふふ。ありがとうございます。短い時間でもこうして毎日来て下さるので、用意するのが楽しみになりました。ディラン様はカモミールがお好きなようですので、今日はレモンバームをブレンドしました。心身を落ち着ける効果がありますので、是非飲んでください」

 どんなに忙しくても毎日短時間でも、必ず会いに来る彼が心配だった。
 そんな彼のために体調に合わせたハーブを選ぶことが楽しくなっていた。
 
「ああ。頂こう」

 そう言うと一口飲んでふぅと安堵の息を零した。

「先程のハーブティーより味に深みがあって旨いな。いくらでもいける」

「それは良かったです。それにしても毎日いらしてますが、お疲れではありませんか?無理はなさらないでくださいね」

「無理なんて。そんなことはないよ。ミリーに会えれば疲れなんて吹き飛ぶさ」

 事もなげに甘い言葉をサラッと言われた私は、一瞬で顔に熱が上がる。
 両手で頬をおさえて俯いた。

「ところでミリー。一度リオーレスト王国に戻るのだが、その前に貴女のご両親に改めて挨拶をしたいと思っている。正式な婚姻の申し込みは国に戻ってからになるが、貴女の気持ちを聞かせてほしい」

 頬をおさえていた手が彼の大きな手に包まれ、視線が合う。
 ゆっくりと片膝をついた彼は、私を見上げて告げた。

「ミリアーナ嬢。私はずっと貴女に出会える日を心待ちにしていた。貴女と過ごしたこの数日は私の心を満たしてくれた。貴女以外考えられない。どうか私と一生を共に歩んでほしい」

 真摯な言葉と真っ直ぐに私を見つめる瞳は、不安そうに揺れている。

「はい。承知いたしました。私でよろしければお受けいたします。ディラン様のお傍に置いてください」

「あ、ありがとう!ミリー!愛している。愛しているよ」

 愛の言葉と共に彼の腕に包まれて温もりを感じる。
 私は背中にそっと手を回して抱きしめ返した。

「私も…愛しています」

 私達から離れた場所では、アリスとジークさんが微笑ましく見守っていた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界でショッピングモールを経営しよう

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:10,644pt お気に入り:1,827

転生幼女はお願いしたい~100万年に1人と言われた力で自由気ままな異世界ライフ~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,422pt お気に入り:3,692

所詮、愛を教えられない女ですから

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:171,338pt お気に入り:3,800

【本編完結】愛しい人、妹が好きなら私は身を引きます。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:8,903pt お気に入り:3,892

迷惑ですから追いかけてこないでください!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:38,332pt お気に入り:603

魔術師の卵は憧れの騎士に告白したい

BL / 連載中 24h.ポイント:5,008pt お気に入り:111

私は底辺からのしあがる

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:71

記憶喪失で婚約破棄された聖女は隣国の王子に溺愛されます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:99

処理中です...