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第46話 カルラの過去(4)
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翌日、神殿長に呼ばれて二人は応接室に向かっていた。
応接室に行く途中、すれ違う者達の好奇の視線に晒され落ち着ける訳もなく、前を歩く神官の背中に視線を固定して応接室に着くまでやり過ごした。
応接室の前には物々しい護衛が扉の両脇に控えていた。
神官は扉の前まで来ると振り返り告げた。
「神殿長がお待ちです。どうぞお入りください」
応接室に入るように促された。
室内は昨日通された部屋より、更に豪華で広々として置物も高級な物で溢れていた。
応接室では神殿長が笑みを浮かべて歩み寄って来た。
二人はジッと見つめていた。
「ようこそお越しくださいました。勇者様。聖女様。改めましてご挨拶を。アースヴァル国王都の神殿長を任されております、ローランド.フリスキーと申します。以後、よろしくお願いいたします。立ち話しもなんですから座りましょう。どうぞ。お席へ」
はっきり言って昨日はしっかりと顔を見る余裕がなかったため、こうして真面に対面するのは初めてだった。
ローランドと名乗った神殿長は、金糸で刺繡が施されたローブを纏い面長の顔には立派な顎髭を蓄えたふくよかな初老の男性だ。
やはり胡散臭い、その一言につきる。
二人は言われるままソファに座り、目で合図をすると神殿長の様子を窺うことに決めた。
「勇者様。聖女様。召喚に応じて頂き誠にありがとうございます。昨夜はゆっくりと休養は摂れましたか?」
「はい。お気遣いいただきありがとうございます」
「それは良かったです。夕食はお口に合いましたか?苦手な物があれば仰ってください」
「はい。美味しかったです。苦手な物はありませんので本当にお気遣いなく」
神殿長は体調を心配しているような口ぶりだが、舐めまわすような視線が気持ち悪い。
貼り付けたような笑顔も、噓くさい。
「そうですか。承知いたしました。ところで勇者様と聖女様に大事なお話しがございます。その前に、この世界のことを少しご説明いたしましょう。この世界には魔王が存在します。魔王は海を挟んだ大陸の深淵の森と呼ばれる場所を拠点としているそうです。魔王が発する瘴気がこの世界を覆った時、ありとあらゆる生物が正気を失くし死に至ると言われています。その時異世界より神気を纏った者が現れ魔王を倒すだろうと。それがあなた方なのです」
「……俺達にその魔王とやらを倒せと?戦ったことがない只の人間に?魔法も知らないんだぞ?」
「はい。三百年前の古文書に記されていたのを読みましたので、理解しています。ですので、そのための知識と魔法、剣術をお教えいたします。ですからどうか、この国を、世界をお救いください!」
なるほど、そういう事か。
しかし、本当にそれだけなのだろうか?
何れにせよ情報が少な過ぎる。今は大人しくしておいた方が良さそうだ。
「分かりました。よろしくお願いします」
短めに返事をして、私達は部屋を後にした。
応接室に行く途中、すれ違う者達の好奇の視線に晒され落ち着ける訳もなく、前を歩く神官の背中に視線を固定して応接室に着くまでやり過ごした。
応接室の前には物々しい護衛が扉の両脇に控えていた。
神官は扉の前まで来ると振り返り告げた。
「神殿長がお待ちです。どうぞお入りください」
応接室に入るように促された。
室内は昨日通された部屋より、更に豪華で広々として置物も高級な物で溢れていた。
応接室では神殿長が笑みを浮かべて歩み寄って来た。
二人はジッと見つめていた。
「ようこそお越しくださいました。勇者様。聖女様。改めましてご挨拶を。アースヴァル国王都の神殿長を任されております、ローランド.フリスキーと申します。以後、よろしくお願いいたします。立ち話しもなんですから座りましょう。どうぞ。お席へ」
はっきり言って昨日はしっかりと顔を見る余裕がなかったため、こうして真面に対面するのは初めてだった。
ローランドと名乗った神殿長は、金糸で刺繡が施されたローブを纏い面長の顔には立派な顎髭を蓄えたふくよかな初老の男性だ。
やはり胡散臭い、その一言につきる。
二人は言われるままソファに座り、目で合図をすると神殿長の様子を窺うことに決めた。
「勇者様。聖女様。召喚に応じて頂き誠にありがとうございます。昨夜はゆっくりと休養は摂れましたか?」
「はい。お気遣いいただきありがとうございます」
「それは良かったです。夕食はお口に合いましたか?苦手な物があれば仰ってください」
「はい。美味しかったです。苦手な物はありませんので本当にお気遣いなく」
神殿長は体調を心配しているような口ぶりだが、舐めまわすような視線が気持ち悪い。
貼り付けたような笑顔も、噓くさい。
「そうですか。承知いたしました。ところで勇者様と聖女様に大事なお話しがございます。その前に、この世界のことを少しご説明いたしましょう。この世界には魔王が存在します。魔王は海を挟んだ大陸の深淵の森と呼ばれる場所を拠点としているそうです。魔王が発する瘴気がこの世界を覆った時、ありとあらゆる生物が正気を失くし死に至ると言われています。その時異世界より神気を纏った者が現れ魔王を倒すだろうと。それがあなた方なのです」
「……俺達にその魔王とやらを倒せと?戦ったことがない只の人間に?魔法も知らないんだぞ?」
「はい。三百年前の古文書に記されていたのを読みましたので、理解しています。ですので、そのための知識と魔法、剣術をお教えいたします。ですからどうか、この国を、世界をお救いください!」
なるほど、そういう事か。
しかし、本当にそれだけなのだろうか?
何れにせよ情報が少な過ぎる。今は大人しくしておいた方が良さそうだ。
「分かりました。よろしくお願いします」
短めに返事をして、私達は部屋を後にした。
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