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第42話 さよなら

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「カルラさんはウォーレン領で薬師をしているんですよね」

 暖かな陽気の中、ハーブティーを飲みながらお気に入りのガゼボで、私とカルラさんはゆったりとした時間を過ごしていた。

「ええ。もう長いこと薬師をしているわ」

 遠くの景色を眺めたまま、カルラさんは答える。
 穏やかな表情ではあるが、感情までは読めない。

「結婚とかは、しているんですか?」

「……えぇ、していたわ」

 カルラさんの表情が少し曇ったのを見て、それ以上この話しに触れるのは止めた。

「ミリーさん。愛する人との結婚は素晴らしいものよ。できればミリーさんには、好きな相手と結婚して幸せな人生を歩んで欲しいと願っているの。伯爵様もそう望んでいるわ。ミリーさんが笑顔で幸せでいることが、皆の幸せにも繋がるの。だから、必ず幸せになってね」

 カルラさんの表情は真剣そのもので、私自身、ずっと後悔していた。
 もし、病気にならなければ違った未来があったかもしれないと。
 今更前世の後悔をしてもどうにもならない。
 二度目の人生は悔いのない生き方をするんだから。

「……はい。必ず」

 決意を新たにカルラさんの言葉を胸に刻み込む。





 カルラさんがウォーレン領に帰る日がやってきた。


「カルラ殿、今まで引き留めてしまい誠に申し訳ございません。ミリーがこんなに懐くなんて。ご迷惑をお掛けしました」

「迷惑だなんて。そんなこと思っていませんわ。居心地が良すぎて長居したのは私の方ですし。それにミリーさんに出会えて良かったと思っております。感謝いたしますわ」

「そう仰っていただけて私共もカルラ殿に感謝しています。またいつでもいらしてください。お待ちしております」

「えぇ、ありがとうございます。また寄らせてもらいますね」

 父との会話が終わると一人一人挨拶を交わし、最後に私に声を掛けた。

「ミリーさん、あなたとの授業は楽しかったわ。私にも良い刺激を与えてもらいました。まだまだ若いのですから、視野を広げて沢山の人と出会い、沢山の経験を積んでください。そして幸せになって。また会いましょう。お元気で」

「はい……はい、幸せになります。そしてまた会いたいです。カルラさんもお元気で」

 涙で視界がぼやけていたが、何とか声を出せた。
 カルラさんの肩も少し震えて見えた。
 私達はいつまでも馬車を見送っていた。




 ウォーレン領に向け走り出した馬車の中で、カルラは景色を眺めていた。
 彼女の長い人生の中のほんの一瞬の邂逅に思いを寄せる。

「優しい家族に恵まれて本当に良かった。あなたの幸せを祈っているわ。

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