【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚

文字の大きさ
上 下
17 / 66

第17話 工場移転

しおりを挟む
 十三歳の誕生日を迎えて半年が過ぎた。

 特に新しい商品の開発はしていないが、売り上げがうなぎ登りなことと、他国から貴族や商人が買い付けに来る人が増え、今の工場では生産が間に合わなくなってきた。
 今後の事を考えた結果、もっと大きい工場に移る必要性が出たことと、いつまでも屋敷まで野草を採りに来てもらうのはベラさん達に負担がかかるため、この際、ハーブの栽培に向いている土地の近くに工場を建てようかと話しに出たのだ。



 父とアルベルトさんは、工場を新たに建てるか空いている屋敷を探すか話し合っていたが、偶然我が家とアーバイン商会の中間に今は誰も住んでいない大きな屋敷があることを聞き、安く手に入れることが出来た。
 その後、屋敷に手を加え工場と住居用に改築して、工場裏にハーブ畑を作った。

 お客様には悪いが、引越しが終わるまで暫し休業だ。
 皆の協力もあり、引越しは意外と早くに終わり残りを休暇にあてた。
 元々休暇を取ってもらおうと長めの休業にしていたので、特に問題はない。
 ベラさん達は落ち着かない様子で、早く仕事を再開したそうにしていたが、説明をするとようやく納得してくれた。
 ベラさん、社畜化してない?




 工場再開まであと五日。
 私は日頃の感謝を込めて食事会を開くことを父に提案した。

「そうだな。皆今まで休まず頑張ってくれた。食事会を開くなら食材はこちらで用意しよう」

 すんなり要望が通り、笑みが自然と零れる。

「ありがとうございます!腕によりをかけますね!」

 私は腕をポンポンと叩き父にアピールする。

「……ミリーが料理するのか?」

 父は期待を込めた目で私を見つめてくるが、過度な期待はしないでほしい。

「……大した料理は作れませんよ」

 最近は、工場の引越しの手伝いにスキルを使って精油、抽出をし、合間に勉強をしていたので、厨房にはずっと入っていなかった。
 それに、マーカスくんとの時間がほしくて料理はソフィアさん達に任せっきりだった。
 ソフィアさんの作る料理は毎日工夫がされていて美味しいのに。
 それまで私が作っていたから、舌が慣れちゃったのかな?
 それはそれで嬉しいけど、期待し過ぎないでね。

「…お父さま。私に宮廷料理みたいなものは期待しないでくださいね。私が作れるのは、ごくごく一般の家庭料理ですから」

「ああ、分かった。あちらの世界の家庭料理か。楽しみだな」

「……」

 ますますプレッシャーが…。
 作ると言った以上、頑張らねば。
 紙に必要な食材を書いて渡すと、部屋に退散した。

 私の背中を見送る父の瞳には、愛情と期待が籠っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシャリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~

明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

ひめさまはおうちにかえりたい

あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました

蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。 家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。 アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。 閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。 養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。 ※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。

処理中です...