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第16話 ポプリ

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 という訳で私は次の商品開発に着手することにした。
 香水は魔法で抽出、精油すれば良いが、私一人ではどうしても数に限りがある。
 それにガラスは一つ一つ手作りのため、量産は難しい上にコストが掛かる。
 
 もっと安価で気軽に買いたくなる物はないだろうか。
 …ポプリなんてどうだろう…。
 器に入れて芳香剤にしても良いし、布に入れて持ち歩くのも良さそう。
 材料は布と紐だけだし、端切れがあれば十分なはず。
 私は早速試作品を作ることにした。
 
 
 乾燥させたハーブの中から、ラベンダーとローズマリーを選んだ。
 この二つは香りが強いからエッセンシャルオイルを使わなくても大丈夫だ。
 薔薇も欲しいところだが、それは追々。

 着れなくなった服を丁寧に解き、四方にカットした布を縫い合わせて乾燥させたラベンダーを入れて紐で可愛く結べば出来上がり。
 手に取り鼻の前でゆらゆらと左右に振ると、ラベンダーの香りがふんわりと漂い、同様にローズマリーの香りを確かめる。
 自己満足だが、良く出来たと思う。
 私は真っ先に母の元へ駆けて行った。

「お母さま~、贈り物です!」

 またドアをノックするの忘れちゃった。
 それでも母は気にする様子はなく、微笑んで迎えてくれた。

「まあ、贈り物?今度は何かしら?」

 贈り物という単語に母は瞳を輝かせた。
 本当に少女のような人だ。

「ふふ、ポプリと言います。良い香りがしますよ」

 そう言ってポプリを渡した。

「ぽぷり?」

 クンクンとポプリの入った布袋を嗅ぐと、大きく目を見開いた後、笑顔になる。

「まあ~、良い香りだわ。ミリー、ありがとう」

 布袋を大事そうに両手で胸に抱える姿に、喜んでもらえたことより、私に対する深い愛情が伝わり思わず涙が零れ落ちそうになる。
 お母さまの娘に生まれて本当に良かった。

 最近では、髪も肌も綺麗に手入れされて、ますます美人度が上がり、父は嬉しく思いながらも他の人の目に触れさせたくないようで、時間をみつけては寄り添っていた。
 父の独占欲の強さに周りの人間は引いていた。
 夫婦仲が良いのは素敵なことだね。
 私もいつか父と母のような愛情溢れる家庭を持てたらいいな。




 父に新商品をお披露目したら、翌日にはアルベルトさんが瞳をギラつかせて屋敷に訪れていた。
 フットワーク軽いね、アルベルトさん。
 行動力の速さに父も私も引き気味だったが、きちんと説明して価格設定は安めにとお願いしたよ。
 渋々ながらも、了承したアルベルトさんに袖の下(男性用香水)を数本渡すと、お任せくださいと笑顔で胸を叩いて足取り軽く屋敷を去って行った。



 香水は主に貴族の間で瞬く間に広がり、ポプリは平民女性の人気アイテムとして爆発的に売れた。
 後日、ホクホク顔のアルベルトさんから聞かされて、もう少し従業員を増やさなきゃと思った。
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