【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚

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第4話 クッキーの形

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 翌日、私は厨房でハーブ入りクッキーを作っていた。

 カモミールやレモングラス、ローズマリー等を使い、葉を刻んだ物、ハーブティーにして液体を少量いれた物を種類別に用意した。
 厨房はクッキーの甘い香りとハーブの香りで充満していた。



 あ、今更だが、家は貧乏だからメイドを雇う余裕はない。
 したがって料理も洗濯も掃除も私と母と時々弟で行っている。
 当然、執事もいない。

 何故、急にこんな話しをしたかというと、母は嫁いで来るまで料理の経験は当然ない。
 この家に嫁いで来るまで、普通の貴族令嬢だったのだから当たり前だ。
 少しだけ勉強をしたらしいのだが、味付けも盛り付けも独創的だ。
 私のクッキーを食べた家族が、クッキー以外の料理も作れるのではと考え、母の調理の補佐をするように頼んできた。
 前世では自炊をしていたから多少料理に詳しいが、豪華な食事は作れない。
 それでも良いならと引き受けた。
 手始めに作ったサンドイッチは、好みの食材を挟むだけだから手間がかからない上に、母でも簡単に作れると思ったから教えた。
 マヨネーズは材料が足りなくて作れなかったけど、それなりに美味しく出来たと思う。
 家族の反応も上々だったよ。



 さて、話しは戻って私は今、様々なハーブクッキーを作っている。
 所謂試作品というところだ。
 それぞれの皿の下にどのハーブを使用したか書いておくことも忘れない。
 ワゴンにクッキーを乗せ、家族が待っているダイニングへ運んだ。

「お待たせしました!ハーブクッキーをお持ちしました!」

 どこぞの店員宜しく恭しくテーブルに並べていく。
 その間、皆の視線は皿の上のクッキーに集まっていた。

「まあ、色んな形があるのね。……この形は?」

 ハート型のクッキーを指して母が問いかける。

「これはハートです」

「はあと?」

 ハートを知らないようで、何て説明しようか考えて口を開いた。

「…ハートは心や気持ちを表すもので、相手に感謝や愛情を示す時に使うことが多いです」

 これで伝わるかな?ごめんね、私の語彙力がなくて。

「まあ、素敵ね!ハートって言うのね。じゃあ、これは?」

 次に指差したのは、星型のクッキー。
 星って説明しても分かるのかな?

「え~と、これは星と言って夜空に輝く光りをこの形に解釈して作ったものです」

 母は小首を傾げて逡巡した後、満面の笑みになった。

「まあまあまあ!夜空に光るあれはホシと言うのね!」

 きゃっきゃっと弾む声を出し、興奮している姿は少女のようで可愛い。

「なるほど、ハートにホシか。ミリーは物知りだな」

 父はうんうんと頷き、母の横に座っているマーカスはキラキラの瞳を私に向けていた。
 はぁ。うちの弟可愛い。


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