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77.剣術戦
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シヴァは審問室の中央に進み出た。
「我こそはシヴァ・ミシュラ。第一騎士団の名に懸けて、貴様を捕らえる!」
明かり窓から差し込む光が、シヴァの艶やかな黒髪を照らす。
構えられたシヴァの剣先からは、鋭い緊張感がただよっていた。
「勇敢な騎士様か。いいぜ。相手してやる。しかし、先に言っておくが、俺はもちろん剣術も大得意でね。魔法と同じくらい大好きなのさ!」
差し向いでは、ディミトリオスが自身の剣を構える。その顏には冷酷な笑みが浮かんでいた。
傍聴席にいた人物たちは、一斉に席を立ち部屋の壁側に後退し、二人の対決を見守っていた。
シヴァが先に仕掛けた。一気に距離を詰め、上段から力強い斬撃を振り下ろす。
だが、ディミトリオスはそれを即座に見切った。
剣と剣が激しくぶつかり合う音が響く。
続けざまに、シヴァは横薙ぎを繰り出すが、ディミトリオスはまるでダンスをしているかのように優雅にかわすと、逆にシヴァに剣を振り下ろした。
「おお、危ない、危ない! こちらの国の騎士は、血の気が多いな!」
ディミトリオスの挑発には応じず、シヴァはさらに斬撃を加える。精鋭の騎士であるシヴァの動きはすべて無駄がなく、重厚で力強い。
だが、ディミトリオスは驚くほどの速さで、シヴァをしなやかにかわしていく。
「シヴァ……!」
思わず声をあげる俺に、アリャンが微笑んだ。
「大丈夫、大事なもんがかかってるんだ。負けるはずはないさ。それにこれはアイツ自身の戦いでもあるんだ!」
激しい応酬が続く中、二人の剣筋は次第に速さを増していった。
シヴァは的確なタイミングで剣を突き出し、ディミトリオスの防御の隙をつくろうとするが、巧妙なステップでかわされてしまう。一方で、ディミトリオスが剣を旋回させながら接近し、シヴァの肩を狙う鋭い一閃を繰り出す。しかし、シヴァはそれを間一髪で受け止め、力強い蹴りを繰り出して距離を取った。
「なかなか、やるじゃないか!」
ディミトリオスの言葉に、再び二人の剣が激突する。今回はディミトリオスが攻勢に転じた。連続で繰り出される斬撃は蛇のように狡猾で、予測不能だったが、シヴァはその全てを冷静に受け流した。
そして戦いが進むにつれ、シヴァの集中力は研ぎ澄まされていくようだった。
「そろそろ勝負はつくな。すでにシヴァは相手の動きを読み切っている」
アリャンの言葉通り、一瞬の隙――ディミトリオスが足をもつれさせた瞬間を見逃さず、シヴァは強烈な斬撃を相手の剣へと打ち込む。ディミトリオスの黒味がかかった剣が軋む音が響き、その手元から剣が放物線を描いて弾き飛ばされた。
シヴァの剣先がディミトリオスの喉元に突きつけられる。
「勝負あったな」
ディミトリオスは僅かに笑みを浮かべたまま、手を上げて降参する姿勢を見せる。
「ったく、最近の俺は、ツキに見放されたようだな! さて、こっちの牢屋は隣国より居心地がいいといいんだが」
「何をしている、捕らえろ! 『月光のアミュレット』も隠し持っているはずだ!」
審問長の声を合図に、今まで及び腰だった衛兵たちが、一斉にディミトリオス確保へと向かった。
「シヴァっ!!」
俺はたまらず、後ろ手に縛られたままシヴァの元へ駆け寄っていった。
「イーサンっ」
シヴァは剣をしまうと、そのまま両腕を広げ、俺を抱きしめた。
「マヤ王女殿下! 私はあなたとの約束を守りました」
シヴァが、俺を抱きしめたまま最奥で成り行きを見守っていたマヤ王女に向かって叫んだ。
マヤ王女はうなずき、ゆっくりと立ち上がった。
「シヴァ、お見事でした。
もちろん、私もあなたとの約束を果たしましょう!
今ここで私は、シヴァ・ミシュラとイーサン・シャルマの婚姻を祝福することを宣言いたします」
「我こそはシヴァ・ミシュラ。第一騎士団の名に懸けて、貴様を捕らえる!」
明かり窓から差し込む光が、シヴァの艶やかな黒髪を照らす。
構えられたシヴァの剣先からは、鋭い緊張感がただよっていた。
「勇敢な騎士様か。いいぜ。相手してやる。しかし、先に言っておくが、俺はもちろん剣術も大得意でね。魔法と同じくらい大好きなのさ!」
差し向いでは、ディミトリオスが自身の剣を構える。その顏には冷酷な笑みが浮かんでいた。
傍聴席にいた人物たちは、一斉に席を立ち部屋の壁側に後退し、二人の対決を見守っていた。
シヴァが先に仕掛けた。一気に距離を詰め、上段から力強い斬撃を振り下ろす。
だが、ディミトリオスはそれを即座に見切った。
剣と剣が激しくぶつかり合う音が響く。
続けざまに、シヴァは横薙ぎを繰り出すが、ディミトリオスはまるでダンスをしているかのように優雅にかわすと、逆にシヴァに剣を振り下ろした。
「おお、危ない、危ない! こちらの国の騎士は、血の気が多いな!」
ディミトリオスの挑発には応じず、シヴァはさらに斬撃を加える。精鋭の騎士であるシヴァの動きはすべて無駄がなく、重厚で力強い。
だが、ディミトリオスは驚くほどの速さで、シヴァをしなやかにかわしていく。
「シヴァ……!」
思わず声をあげる俺に、アリャンが微笑んだ。
「大丈夫、大事なもんがかかってるんだ。負けるはずはないさ。それにこれはアイツ自身の戦いでもあるんだ!」
激しい応酬が続く中、二人の剣筋は次第に速さを増していった。
シヴァは的確なタイミングで剣を突き出し、ディミトリオスの防御の隙をつくろうとするが、巧妙なステップでかわされてしまう。一方で、ディミトリオスが剣を旋回させながら接近し、シヴァの肩を狙う鋭い一閃を繰り出す。しかし、シヴァはそれを間一髪で受け止め、力強い蹴りを繰り出して距離を取った。
「なかなか、やるじゃないか!」
ディミトリオスの言葉に、再び二人の剣が激突する。今回はディミトリオスが攻勢に転じた。連続で繰り出される斬撃は蛇のように狡猾で、予測不能だったが、シヴァはその全てを冷静に受け流した。
そして戦いが進むにつれ、シヴァの集中力は研ぎ澄まされていくようだった。
「そろそろ勝負はつくな。すでにシヴァは相手の動きを読み切っている」
アリャンの言葉通り、一瞬の隙――ディミトリオスが足をもつれさせた瞬間を見逃さず、シヴァは強烈な斬撃を相手の剣へと打ち込む。ディミトリオスの黒味がかかった剣が軋む音が響き、その手元から剣が放物線を描いて弾き飛ばされた。
シヴァの剣先がディミトリオスの喉元に突きつけられる。
「勝負あったな」
ディミトリオスは僅かに笑みを浮かべたまま、手を上げて降参する姿勢を見せる。
「ったく、最近の俺は、ツキに見放されたようだな! さて、こっちの牢屋は隣国より居心地がいいといいんだが」
「何をしている、捕らえろ! 『月光のアミュレット』も隠し持っているはずだ!」
審問長の声を合図に、今まで及び腰だった衛兵たちが、一斉にディミトリオス確保へと向かった。
「シヴァっ!!」
俺はたまらず、後ろ手に縛られたままシヴァの元へ駆け寄っていった。
「イーサンっ」
シヴァは剣をしまうと、そのまま両腕を広げ、俺を抱きしめた。
「マヤ王女殿下! 私はあなたとの約束を守りました」
シヴァが、俺を抱きしめたまま最奥で成り行きを見守っていたマヤ王女に向かって叫んだ。
マヤ王女はうなずき、ゆっくりと立ち上がった。
「シヴァ、お見事でした。
もちろん、私もあなたとの約束を果たしましょう!
今ここで私は、シヴァ・ミシュラとイーサン・シャルマの婚姻を祝福することを宣言いたします」
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