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61.疑惑

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 結局、捜索はそのまま続行となったのだろう、シヴァが俺のもとに戻ることはなく、俺は一人、森小屋に帰ることになった。

 俺が王宮を出たころには、ほとんどすべての招待客が取り調べを受けた後で、もう着飾った貴族たちの姿はほとんどなく、ただ警備にあたっている騎士団員たちが、あちこちをせわしなく走り回っているだけだった。


 ――結局、予告状通り『月光のアミュレット』は盗まれてしまった。

 アミュレットはいったいいつ偽物とすり替えられたのだろう。

 厳重な警備をしていた王宮に、怪盗がやすやすと入り込めたとは思えない。

 だとすれば、もともと宮殿のなかにいた誰かが怪盗なのか?
 もしくは、怪盗の仲間がもともと宮殿に潜んでいて、その手引きをした?


 考えれば考えるほど、わからなくなる。

 シヴァもロハンも、そしてサンカルも必死になってアミュレットと怪盗を追っていた。

 そしてマヤ王女の不安そうな言葉がよみがえる。

 アミュレットを失ったせいで、もし隣国との友好関係にひびが入るようなことがあれば、それは国としても一大事だ!

 ――シヴァたちは、大丈夫なのだろうか?


 部屋に戻った俺は、しわにならないように上着をかけただけで、そのままベッドに転がった……。


「疲れた……」

 今日はいろいろなことがありすぎた気がする。

 ラムともきちんと話をしなければいけないし……。
 あの時シヴァが言いかけていた言葉は何だったんだろう……?


 着替えもせずにうとうととし始めてしまった俺だったが、突然の荒々しいノックに目が覚めた。


「イーサン・シャルマっ!
そこにいることはわかっている。おとなしく出てこいっ!!」


 ドアの外で叫んでいるのは……、

 ――王女の護衛騎士・サンカル?


 俺は起き上がると、入り口の扉を開けた。

「いったいどうされたんですか? 何か……」

 そして、目の前に立つサンカルの後ろに、黒い制服をきた近衛師団がずらりと並んでいることに息をのんだ。


「貴様、平民の分際で、よくも我々をだましてくれたものだな!
よし、皆の者っ、捜索しろっ!!」

 サンカルの号令を合図に、一斉に押し寄せてくる近衛師団の騎士たち。


「ちょ、ちょっと待ってくださいっ……!」

 止めようとする俺に、サンカルは唇をゆがませた。

「この期に及んで言い逃れはできないぞ、イーサン・シャルマ!
コイツをとらえて縄で縛っておけ!」


「はっ!」

 サンカルの指示通り、あっという間に捕縛された俺。


「サンカル様っ、いったい何なんですか? 俺にもわかるように説明を……」

 床に転がされた俺が声を張り上げたその時、ドアを蹴破るようにして、シヴァが入ってきた。


「イーサンっ、大丈夫かっ!?
サンカル……、貴様っ!」


 腰の長剣に手をかけるシヴァの後ろに立つのは、ロハン。

「イーサンっ、なんてひどいことに!
よし、すぐ私が助けてあげるからね……」


 俺に駆け寄ろうとする二人の前に、サンカルが立ちはだかった。


「待て! この腑抜けどもめが! まだわからないのか?
お前たちはこの男に騙されているのだ!」


「なんだと?」

 シヴァが躊躇なくその長剣を抜こうとしたその時、


「ダヤル様っ! 見つかりましたっ!」

 俺の部屋をあら捜ししていた近衛師団の一人の騎士が声をあげた。


 その手にあるのは、光輝く『月光のアミュレット』。


「どう、して……」


 ――なんで、こんなところに……。


 呆然とする俺に、サンカルは傲慢な笑みを浮かべた。


「ついに尻尾を出したな、イーサン・シャルマ!
お前こそが、国宝のアミュレットを盗み出した怪盗だ!」



 
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