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53.しっちゃかめっちゃか
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ロハンは白いローブ姿の威厳に満ちた礼装で、肩に金とブルーの布をかけ、首元には独特の輝きを放つ大きな紫色の魔法石が飾られていた。
「旦那様っ! さきほど私たち、シヴァ様から聞き捨てならないことをうかがいましてよっ!」
さっそく長身のロハンの腕にぶら下がるようにして、ミーナが言う。
「旦那様がこの髪の色以外取り立てて目立ったところのない若者に、こっぴどく振られたとか! こんなに麗しくて偉大な旦那様を袖に振るなんて、まさかそんなことあり得ませんわよねっ!?」
反対側からロハンにしなだれかかるザラ。
――なんかちょっと話が微妙にずれているような……。
「残念ながら本当のことですよ。イーサンも困っているのです。
嫌がっているのにこのロハンにしつこく付きまとわれて、ねえ、イーサン?」
「えっ、俺っ!?」
急に甘い声でシヴァに話を振られて、戸惑う俺。
「おいっ、シヴァっ! 貴様いったいどういうつもりだっ。
なぜイーサンをここに連れてきている! すぐにイーサンから離れろ!」
ロハンの剣幕にも動じず、シヴァはせせら笑った。
「イーサンは俺のパートナーだ。
舞踏会に自分のパートナーを連れてくるのは当たり前のことだろう?
ほら、お前も美しいご婦人を二人も同伴しているじゃないか」
「まあ、美しいだなんて」
「きゃっ、シヴァ様に褒められちゃった!」
「なにが、パートナーだ。どうせ、無理矢理脅しでもして連れてきたのだろう。
イーサン、もう大丈夫だよ。保護してあげるから私の元においで。
この二人も今は少々気が立っているが、本当は君が屋敷に来るのを心待ちにしているんだよ!」
俺に手を伸ばしてくるロハンだったが、
「旦那様ぁっ!」
「なんですのっ、そのデレた口調はっ!」
両側のミーナとザラがロハンに詰め寄る。
「いたたたっ、ミーナっ、つねるのはやめなさいっ!
こらザラっ、私に毒魔法を使うんじゃないっ!
イーサン、ほら、これを見たらわかるだろうっ!?
私には君が必要なんだっ!!」
「なにが、必要、よっ、キィーっ!! 私たちというものがありながらっ!」
「そうですわ、私たちのどこに不満があるというのですっ! もう二度とよそ見できないようにして差し上げますわっ!」
なんだか二人にしっちゃかめっちゃかにされているロハン。
「ごめんなさいっ!」
俺は深く頭を下げた。
「ロハン様のお申し出は大変ありがたいです……、でも俺、今はシヴァ様と一緒にいるのであなたとはご一緒できません。
あと、やっぱりロハン様のお屋敷で働くのは、俺には絶対無理だと思いますっ!」
――うん、やっぱり最初から断っておいてよかった。
こんな強烈な奥方たちのいるお屋敷で、俺なんかが上手くやれっこない。
それに会ったこともないはずなのに、俺はすでに二人に相当嫌われているみたいだし……。
「そんなあ、イーサンっ!!」
情けない声をあげるロハン。
「これでわかっただろう? もうイーサンに近づくな!」
シヴァは俺の肩を抱くと、そのまま立ち去るように俺を促した。
「イーサンっ! 待って、その可愛い姿を私にもっとよく見せておくれ!!
シヴァっ、こんなことをして許さないぞっ! イーサンっ、私は絶対あきらめないからねっ!」
夫人二人にもみくちゃにされながらも、ロハンは叫ぶ。
「旦那様っ、屋敷に戻ったら、私の毒魔法でたっぷり反省してもらいますからねっ!」
「ちょっとイーサンっ、クリームとリボンの件、忘れたら絶対許さないんだからぁっ!!」
「……」
あの第二夫人・ミーナとは、もしかしたらちょっとだけ仲良くなれるかもしれないと、俺は思った。
「旦那様っ! さきほど私たち、シヴァ様から聞き捨てならないことをうかがいましてよっ!」
さっそく長身のロハンの腕にぶら下がるようにして、ミーナが言う。
「旦那様がこの髪の色以外取り立てて目立ったところのない若者に、こっぴどく振られたとか! こんなに麗しくて偉大な旦那様を袖に振るなんて、まさかそんなことあり得ませんわよねっ!?」
反対側からロハンにしなだれかかるザラ。
――なんかちょっと話が微妙にずれているような……。
「残念ながら本当のことですよ。イーサンも困っているのです。
嫌がっているのにこのロハンにしつこく付きまとわれて、ねえ、イーサン?」
「えっ、俺っ!?」
急に甘い声でシヴァに話を振られて、戸惑う俺。
「おいっ、シヴァっ! 貴様いったいどういうつもりだっ。
なぜイーサンをここに連れてきている! すぐにイーサンから離れろ!」
ロハンの剣幕にも動じず、シヴァはせせら笑った。
「イーサンは俺のパートナーだ。
舞踏会に自分のパートナーを連れてくるのは当たり前のことだろう?
ほら、お前も美しいご婦人を二人も同伴しているじゃないか」
「まあ、美しいだなんて」
「きゃっ、シヴァ様に褒められちゃった!」
「なにが、パートナーだ。どうせ、無理矢理脅しでもして連れてきたのだろう。
イーサン、もう大丈夫だよ。保護してあげるから私の元においで。
この二人も今は少々気が立っているが、本当は君が屋敷に来るのを心待ちにしているんだよ!」
俺に手を伸ばしてくるロハンだったが、
「旦那様ぁっ!」
「なんですのっ、そのデレた口調はっ!」
両側のミーナとザラがロハンに詰め寄る。
「いたたたっ、ミーナっ、つねるのはやめなさいっ!
こらザラっ、私に毒魔法を使うんじゃないっ!
イーサン、ほら、これを見たらわかるだろうっ!?
私には君が必要なんだっ!!」
「なにが、必要、よっ、キィーっ!! 私たちというものがありながらっ!」
「そうですわ、私たちのどこに不満があるというのですっ! もう二度とよそ見できないようにして差し上げますわっ!」
なんだか二人にしっちゃかめっちゃかにされているロハン。
「ごめんなさいっ!」
俺は深く頭を下げた。
「ロハン様のお申し出は大変ありがたいです……、でも俺、今はシヴァ様と一緒にいるのであなたとはご一緒できません。
あと、やっぱりロハン様のお屋敷で働くのは、俺には絶対無理だと思いますっ!」
――うん、やっぱり最初から断っておいてよかった。
こんな強烈な奥方たちのいるお屋敷で、俺なんかが上手くやれっこない。
それに会ったこともないはずなのに、俺はすでに二人に相当嫌われているみたいだし……。
「そんなあ、イーサンっ!!」
情けない声をあげるロハン。
「これでわかっただろう? もうイーサンに近づくな!」
シヴァは俺の肩を抱くと、そのまま立ち去るように俺を促した。
「イーサンっ! 待って、その可愛い姿を私にもっとよく見せておくれ!!
シヴァっ、こんなことをして許さないぞっ! イーサンっ、私は絶対あきらめないからねっ!」
夫人二人にもみくちゃにされながらも、ロハンは叫ぶ。
「旦那様っ、屋敷に戻ったら、私の毒魔法でたっぷり反省してもらいますからねっ!」
「ちょっとイーサンっ、クリームとリボンの件、忘れたら絶対許さないんだからぁっ!!」
「……」
あの第二夫人・ミーナとは、もしかしたらちょっとだけ仲良くなれるかもしれないと、俺は思った。
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