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51.私のパートナー
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しかし、そんな俺の夢の世界は、舞踏会の会場到着後早々に打ち砕かれることになった。
「あなたがあのイーサンとやらね! ふんっ、やっぱり、ぜーんぜんっ、大したことないじゃないっ!!」
「まあ! 旦那様があれほど夢中になっているというからどんな素晴らしい方かと思いきや、本当に凡庸な方ですこと! すこしがっかりしてしまいましたわ」
ここは舞踏会のメインホール。
招待客でひしめく中、シヴァがちょっと離れたそのすきに、待ってましたとばかりに、俺の前に立ちふさがる二人の美しいご婦人。
「あの……、えーっと……」
「いいことっ、思い上がるのもたいがいにしないと、私たちが黙っていませんわよっ!」
俺から向かって右に立っているのは、ド金髪の巻き毛の女性。
愛らしく丸みを帯びた幼い顔立ちで、パフスリーブのアイボリーのドレスが、とても可愛らしい印象だった。ドレスのスカートは広がりのあるベル型で、裾には小さなフリルが幾重にもつき、胸元にはピンクゴールドのリボンが可憐に彩っている。
「いったいどんな手を使って旦那様に取り入ったんでしょう、この小賢しい子狐は!」
そしてその隣にいるのが、赤紫の髪をアップにまとめたなんとも妖艶な女性。
黒い羽根の扇子で口元を隠したその女性は、深いスリットの入った暗い赤紫のサテンのドレスを着こなしている。
目のやり場に困るほどざっくりとあいた胸元には漆黒の宝石が飾られ、ミステリアスかつ官能的な雰囲気を漂わせている。
纏った黒いベールからは、一種の毒気と、秘めた魔力が揺らめいているようにも見えた。
「あの、俺、いったい、なんのことか……」
っていか、誰!?
どこかで会ったことある?
もしや以前、食堂で俺が粗相を!?
でも、こんな貴婦人たちが、第3食堂なんて利用するはずないのだが!?
「まあ、聞きました、ザラ様っ! この子、すっとぼけるつもりですわよっ!」
甲高い声の金髪巻き髪の女性が、俺にずいっと近づいてきた。
「ザラ様、ほら、見てください、この大したことのないお顔!
ちょっとばかし、珍しい髪と瞳の色だからって、それがどうしたって言うのかしらっ!
それに、このお肌……! フン、ちょっと色つやがいいからって……、ちょっとあなた、どこの化粧品を使っているのか私に教えなさいっ!」
綺麗な青い瞳が、俺を責め立てる。
「え!? 俺、化粧品、なんて、何も……」
朝は顔を洗って、それで終わりなのだが……。
「んまああああっ! 教えないつもりですわねっ! そんなウソをいって、旦那様を誘惑するために、毎晩毎朝、高級クリームを塗りたくっているんでしょうっ!? 私の目は誤魔化せませんわよっ!
それに、なんだかいい匂いもしますわっ!! 本当に、なんて嫌味な子なんでしょうっ!」
そう言って、俺の手の甲をぎゅっとつねってきた。
「痛っ……!」
もちろん、可憐な少女のような小さな白い手でつねられたところで、大した威力はないのだが……、でも地味に痛い!!
「おやめなさい。ミーナさん。そんなことをしても、何も得られるものはありませんわ。
ねえ、イーサンさん、もったいぶらずに私たちに教えて下さらないかしら?」
ザラと呼ばれたその色気たっぷりの女性は、俺に近づくと、その細い指で俺の顎を持ち上げた。
「あ、あの……」
髪の色と同じ赤紫の瞳。じっと見つめられると、そのまま吸い込まれてしまいそうで……。
――この人、ぜったいとんでもない魔力をもってる!!
「私も、手荒なことはしたくはありませんのよ。
イーサンさん、どうやって私たちの旦那様を誑かしたのか、素直に教えてくださいな。
どこの闇魔道具ですの? それとも、闇の術師から秘薬を購入されたのかしら? もしや、いにしえに伝わる禁断の……っ!!」
「……っ!」
ひいぃっ! 目の前がぐるぐる回って、何かよくわからない魔法にかけられてしまいそうっ!!!!
と、その時、不意に視界が昏くなった。
「私のパートナーに何か御用ですか?」
落ち着いた静かな声とともに、俺とザラと呼ばれた女性との間に、シヴァが割って入っていたのだ。
「あなたがあのイーサンとやらね! ふんっ、やっぱり、ぜーんぜんっ、大したことないじゃないっ!!」
「まあ! 旦那様があれほど夢中になっているというからどんな素晴らしい方かと思いきや、本当に凡庸な方ですこと! すこしがっかりしてしまいましたわ」
ここは舞踏会のメインホール。
招待客でひしめく中、シヴァがちょっと離れたそのすきに、待ってましたとばかりに、俺の前に立ちふさがる二人の美しいご婦人。
「あの……、えーっと……」
「いいことっ、思い上がるのもたいがいにしないと、私たちが黙っていませんわよっ!」
俺から向かって右に立っているのは、ド金髪の巻き毛の女性。
愛らしく丸みを帯びた幼い顔立ちで、パフスリーブのアイボリーのドレスが、とても可愛らしい印象だった。ドレスのスカートは広がりのあるベル型で、裾には小さなフリルが幾重にもつき、胸元にはピンクゴールドのリボンが可憐に彩っている。
「いったいどんな手を使って旦那様に取り入ったんでしょう、この小賢しい子狐は!」
そしてその隣にいるのが、赤紫の髪をアップにまとめたなんとも妖艶な女性。
黒い羽根の扇子で口元を隠したその女性は、深いスリットの入った暗い赤紫のサテンのドレスを着こなしている。
目のやり場に困るほどざっくりとあいた胸元には漆黒の宝石が飾られ、ミステリアスかつ官能的な雰囲気を漂わせている。
纏った黒いベールからは、一種の毒気と、秘めた魔力が揺らめいているようにも見えた。
「あの、俺、いったい、なんのことか……」
っていか、誰!?
どこかで会ったことある?
もしや以前、食堂で俺が粗相を!?
でも、こんな貴婦人たちが、第3食堂なんて利用するはずないのだが!?
「まあ、聞きました、ザラ様っ! この子、すっとぼけるつもりですわよっ!」
甲高い声の金髪巻き髪の女性が、俺にずいっと近づいてきた。
「ザラ様、ほら、見てください、この大したことのないお顔!
ちょっとばかし、珍しい髪と瞳の色だからって、それがどうしたって言うのかしらっ!
それに、このお肌……! フン、ちょっと色つやがいいからって……、ちょっとあなた、どこの化粧品を使っているのか私に教えなさいっ!」
綺麗な青い瞳が、俺を責め立てる。
「え!? 俺、化粧品、なんて、何も……」
朝は顔を洗って、それで終わりなのだが……。
「んまああああっ! 教えないつもりですわねっ! そんなウソをいって、旦那様を誘惑するために、毎晩毎朝、高級クリームを塗りたくっているんでしょうっ!? 私の目は誤魔化せませんわよっ!
それに、なんだかいい匂いもしますわっ!! 本当に、なんて嫌味な子なんでしょうっ!」
そう言って、俺の手の甲をぎゅっとつねってきた。
「痛っ……!」
もちろん、可憐な少女のような小さな白い手でつねられたところで、大した威力はないのだが……、でも地味に痛い!!
「おやめなさい。ミーナさん。そんなことをしても、何も得られるものはありませんわ。
ねえ、イーサンさん、もったいぶらずに私たちに教えて下さらないかしら?」
ザラと呼ばれたその色気たっぷりの女性は、俺に近づくと、その細い指で俺の顎を持ち上げた。
「あ、あの……」
髪の色と同じ赤紫の瞳。じっと見つめられると、そのまま吸い込まれてしまいそうで……。
――この人、ぜったいとんでもない魔力をもってる!!
「私も、手荒なことはしたくはありませんのよ。
イーサンさん、どうやって私たちの旦那様を誑かしたのか、素直に教えてくださいな。
どこの闇魔道具ですの? それとも、闇の術師から秘薬を購入されたのかしら? もしや、いにしえに伝わる禁断の……っ!!」
「……っ!」
ひいぃっ! 目の前がぐるぐる回って、何かよくわからない魔法にかけられてしまいそうっ!!!!
と、その時、不意に視界が昏くなった。
「私のパートナーに何か御用ですか?」
落ち着いた静かな声とともに、俺とザラと呼ばれた女性との間に、シヴァが割って入っていたのだ。
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