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35.これで最後

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「あんっ、そこっ、やだっ、駄目、だからっ!」

 指で内部をゆっくりこねられると、腰が跳ねてしまう。


 ――こんなことされているのに、信じられないくらい、すごく、すごく気持ちいい!


「ああ、可愛いな。きゅうきゅうと締め付けてくる。
ほら、指を増やしてやろう」

「はっ、はああああんっ!!」

 恥ずかしさを隠すように、俺はシヴァのベルベットのジャケットに顔をこすりつける。

「ああ、イーサン、イーサン、お前のそんな顏、たまらない……、
こんな顔をほかの誰かに見せるのかと思うと、俺はこのまま狂ってしまいそうだ……っ」

「ああっ、中っ、イイっ、もっと、シヴァ……、あ、あ……」

「今ここで、お前をすべて俺のものにしたい……。
もう、誰にも渡さない! いいな、イーサン」


「ああっ、シヴァ、シヴァっ……」

 いつの間にか香油も使われ、俺の後孔はすっかりほぐされている。


「ああ、気持ちいいな、イーサン……、すごく可愛い声だ……」

 シヴァもジャケットをすでに脱ぎ捨て、シャツの前ははだけ、筋肉で包まれた見事な肉体を晒している。

 俺をきつく抱きしめるようにして、シヴァは少しずつ俺の身体を開いていった。


「あっ、あ、シヴァ……っ、んんっ!」


 ぐちゅぐちゅと音を立て、俺の後ろはシヴァの指を悦んで飲みこんでいく。

 指をさらに増やされ、その奥にシヴァの指が届くたび、俺の身体はまるで自分のものじゃないみたいに痙攣した。


「俺を受け入れてくれるだろう、イーサン」

 見ると、シヴァの下腹部はすっかり持ち上がり、はちきれんばかりになっていた。

「……っ!!」

「俺の、ものになってくれ。お前のすべてを、俺に……」


 耳元に熱い息を吹き込まれ、さらに脚を持ちあげられた。

 滾ったそれが俺の後ろに押し当てられ、俺は……。


「いいよ。俺をあなたのものにして……、シヴァ」


 俺は目を閉じ、シヴァの首に手を回した。

「イーサン……っ」

「全部、あなたの好きにして、いいよ。俺は、あなたのものだ……、でも……」


「でも……?」

 触れそうな唇が、一瞬止まる。


「でも、もうこれで最後にしてください。
もう俺たち、こうして会うのは終わりにしましょう」


 最後に一度だけ、シヴァに抱かれる……。

 俺はその思い出を胸に、一生生きていく。


 これ以上、シヴァと関係を続けたら、それこそ俺は深みにはまって、もっともっとと望んでしまう。
 そしてそれは、地獄の入り口だ。

 だから……、

 もうこれで最後にする。


 これだけで、もう十分……。


 絶対に手に入れられない相手……。


 シヴァはまたマヤ王女のもとに戻るのかもしれない。もし、そうでなくても、シヴァにはもっとふさわしい相手がこの世界にはたくさんいる。

 

 俺がこれ以上好きになって、シヴァに醜くすがりつく姿を見られたくはない……。



 それが、俺の精一杯の矜持だった。

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