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31.突然の訪問
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森小屋に戻ったころには、すっかり夜が更けていた。
寝る支度を済ませ、ベッドに入ろうとしたところで、小屋の扉が荒々しくノックされた。
慌ててガウンを羽織り、扉を開けた俺。
――でもそこにいたのは、俺が待っていた人ではなかった。
「サンカル、様っ!?」
あからさまに「不満・不快」の表情をうかべ、俺を見下ろすのは、なんとサンカル・ダヤル。
護衛騎士の黒い制服姿のままのサンカルは、俺を見て忌々し気に舌打ちする。
「おい、料理人! 私が庶民たちの間でも名声を轟かせているのは知っているが、私の名はお前のような愚民が軽々しく口にしてよいものではないぞ!
ったく、こんなむさくるしいところ、なぜ私のような高貴な人間が訪れなければならんのだ!」
「あっ、はい、すみません……」
なんだかとてもご立腹の様子なので、とりあえず謝る俺。
「フン、以後気をつけろ。ほら、受け取れ」
押し付けるように、封緘されたクリーム色の封筒を渡される。
「これは……?」
「読めばわかる……って、お前字は読めるのか?」
金茶の瞳が疑わし気に細められる。
「はい、一応は……」
「まあいい、難しい言い回しもあるだろうから、直々に私が説明してやろう。よいか、これは、マヤ王女からのご命令だ!
明日の午後、マヤ王女主催の茶会が王宮の中庭で開かれる。私的だが重要な茶会と聞いている!
お前は、そこで供される菓子を作るのだ。良いなっ!」
「……へ!? なんで、俺が……」
「知らんっ!!」
ふんぞり返る、サンカル。
「え、でも、俺、明日は食堂の仕事が……」
「これだから下々のものは……!! 愚民どもの食事とマヤ王女の茶会と、どちらが大事だと思っているのだ?!
まったく、しがない料理人の分際で、殿下の命令を無視できると思うのかっ、しまいには首を刎ねるぞ!」
「はっ、はい、すみません。でも俺、そんな高貴な場所に出入りできるような人間では、ないので……」
俺が縮こまると、サンカルは鼻を鳴らした。
「ふん、ただの羽虫かと思ったが、身の程はわきまえているようだな。
とにかく、殿下直々の命なのだ! 殿下が急に思い立たれたこととはいえ、お前が断ることは許されぬ!
とにかくお前は、指示通り、明日の午後、指示された場所に来るのだ! 良いな!」
「はい」
断ることは絶対に許されない状況……。俺は素直にうなずいていた。
「これは他言無用であるぞ! 今私がここを訪ねてきたことは、誰にも言ってはならぬ! 良いなっ!
もし一言でも漏らしたら、お前を王宮から追放してやるからそのつもりで!」
「は、はいっ、わかりました」
俺は頭を下げる。
「まったく、あのワガママ姫に付き合わされるこっちの身にもなって欲しいというものだ。
お別れ茶会だのサヨナラ舞踏会だの、一体何回やれば気が済むのだ! 本当に隣国に嫁ぐつもりはあるのかっ!?
さらには、私をこんなところまで差し向わせて……!
おお、こんなみすぼらしい小屋、寒気がするわっ!」
俺の部屋を見回してひとしきり文句を言い終えると、サンカルはその波打つ金髪を揺らして去っていった。
「……」
俺の手には、一通の豪華な封筒が残された。
寝る支度を済ませ、ベッドに入ろうとしたところで、小屋の扉が荒々しくノックされた。
慌ててガウンを羽織り、扉を開けた俺。
――でもそこにいたのは、俺が待っていた人ではなかった。
「サンカル、様っ!?」
あからさまに「不満・不快」の表情をうかべ、俺を見下ろすのは、なんとサンカル・ダヤル。
護衛騎士の黒い制服姿のままのサンカルは、俺を見て忌々し気に舌打ちする。
「おい、料理人! 私が庶民たちの間でも名声を轟かせているのは知っているが、私の名はお前のような愚民が軽々しく口にしてよいものではないぞ!
ったく、こんなむさくるしいところ、なぜ私のような高貴な人間が訪れなければならんのだ!」
「あっ、はい、すみません……」
なんだかとてもご立腹の様子なので、とりあえず謝る俺。
「フン、以後気をつけろ。ほら、受け取れ」
押し付けるように、封緘されたクリーム色の封筒を渡される。
「これは……?」
「読めばわかる……って、お前字は読めるのか?」
金茶の瞳が疑わし気に細められる。
「はい、一応は……」
「まあいい、難しい言い回しもあるだろうから、直々に私が説明してやろう。よいか、これは、マヤ王女からのご命令だ!
明日の午後、マヤ王女主催の茶会が王宮の中庭で開かれる。私的だが重要な茶会と聞いている!
お前は、そこで供される菓子を作るのだ。良いなっ!」
「……へ!? なんで、俺が……」
「知らんっ!!」
ふんぞり返る、サンカル。
「え、でも、俺、明日は食堂の仕事が……」
「これだから下々のものは……!! 愚民どもの食事とマヤ王女の茶会と、どちらが大事だと思っているのだ?!
まったく、しがない料理人の分際で、殿下の命令を無視できると思うのかっ、しまいには首を刎ねるぞ!」
「はっ、はい、すみません。でも俺、そんな高貴な場所に出入りできるような人間では、ないので……」
俺が縮こまると、サンカルは鼻を鳴らした。
「ふん、ただの羽虫かと思ったが、身の程はわきまえているようだな。
とにかく、殿下直々の命なのだ! 殿下が急に思い立たれたこととはいえ、お前が断ることは許されぬ!
とにかくお前は、指示通り、明日の午後、指示された場所に来るのだ! 良いな!」
「はい」
断ることは絶対に許されない状況……。俺は素直にうなずいていた。
「これは他言無用であるぞ! 今私がここを訪ねてきたことは、誰にも言ってはならぬ! 良いなっ!
もし一言でも漏らしたら、お前を王宮から追放してやるからそのつもりで!」
「は、はいっ、わかりました」
俺は頭を下げる。
「まったく、あのワガママ姫に付き合わされるこっちの身にもなって欲しいというものだ。
お別れ茶会だのサヨナラ舞踏会だの、一体何回やれば気が済むのだ! 本当に隣国に嫁ぐつもりはあるのかっ!?
さらには、私をこんなところまで差し向わせて……!
おお、こんなみすぼらしい小屋、寒気がするわっ!」
俺の部屋を見回してひとしきり文句を言い終えると、サンカルはその波打つ金髪を揺らして去っていった。
「……」
俺の手には、一通の豪華な封筒が残された。
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