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29.牽制
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「俺のおかげ? なんで?」
「ほら、よくあるでしょ。手放してから急に惜しくなるっていう話。ワガママ王女様のやりそうなことだよ。
しかも、イーサンとあれこれ経験したおかげで、シヴァは男としての自信もついたんじゃない?
今日のシヴァは、いつもよりエグい色気が出てる気もするしね」
たしかに、私服姿のシヴァは、匂い立つような男の色気というものが漂っていた。
美しいマヤ王女と並んでいると、完成された一つの絵のよう……。
二人を見ていると、俺の心の中に、どうしようもなく嫌な感情が渦巻き始める。
「それって、つまり……」
「マヤ王女らしいよね。自分から振っておいて、いまさら、シヴァの大事さに気づいたんだよ!
だから、あんな風にみんなに二人でいるところを見せつけて!
これは、マヤ王女のいわば牽制だよね! シヴァは自分の男だって、周りに知らしめたいんだよ」
「けん、せい……」
「シヴァがマヤ王女の護衛騎士に返り咲く日もそう遠くないんじゃない?
だから、後ろの新しい護衛騎士は気が気じゃないんだろうね!
ほら見て、シヴァもまんざらじゃなさそう!」
「そっか。そう、なんだ……」
俺がその王族専用の特別席を見上げた時、階下を見下ろしていたシヴァと偶然目が合った。
「……っ!!」
――美しい、翡翠の瞳……。
その瞬間、俺の心はなにか鋭いもので一突きされたみたいな、耐えがたい痛みを覚えた。
「ねえ、イーサン、シヴァがこっち見てるよ」
ラムが俺の耳もとで囁く。
「違うよ……、俺なんか見てるはずない……」
多分、目が合ったと思ったのだって、気のせいにきまってる。
王族の席からここまでは、かなりの距離がある。それに、客席にはこんなにたくさんの人がいるんだ。
「っていうか、シヴァのヤツ、めっちゃ睨んでくるんだけど!! ふーん、そっちがその気なら、僕たちだって見せつけてやろうよ!」
「え!? ラムっ!?」
何を思ったのか、ラムは俺の首に手を回して、思いっきり抱き着いてきた。
「へへっ、イーサンは僕のものだもんねー!」
「おいっ、ラム! アリャンに見られたら誤解されるぞ!」
引きはがそうとするが、ラムはぐいぐいと俺に身体を押し付けてくる。
「どうせアリャンと僕の関係は秘密だからね。ほら、カムフラージュにいつもイーサンが僕の恋人役をしてくれてるだろ!
イーサンも、僕の恋人のふりして!」
「こらっ、離れろってば!」
「このままここでキスでもしちゃう?」
くるくると動く可愛い瞳でラムが迫ったその時、開演の合図とともに客席の明かりが落とされた。
「お静かに!!」
「そういうことは劇場の外でなさってくださいませ!」
周りの貴族たちから注意され、ラムはようやくおれから身体を離したのだった。
「ほら、よくあるでしょ。手放してから急に惜しくなるっていう話。ワガママ王女様のやりそうなことだよ。
しかも、イーサンとあれこれ経験したおかげで、シヴァは男としての自信もついたんじゃない?
今日のシヴァは、いつもよりエグい色気が出てる気もするしね」
たしかに、私服姿のシヴァは、匂い立つような男の色気というものが漂っていた。
美しいマヤ王女と並んでいると、完成された一つの絵のよう……。
二人を見ていると、俺の心の中に、どうしようもなく嫌な感情が渦巻き始める。
「それって、つまり……」
「マヤ王女らしいよね。自分から振っておいて、いまさら、シヴァの大事さに気づいたんだよ!
だから、あんな風にみんなに二人でいるところを見せつけて!
これは、マヤ王女のいわば牽制だよね! シヴァは自分の男だって、周りに知らしめたいんだよ」
「けん、せい……」
「シヴァがマヤ王女の護衛騎士に返り咲く日もそう遠くないんじゃない?
だから、後ろの新しい護衛騎士は気が気じゃないんだろうね!
ほら見て、シヴァもまんざらじゃなさそう!」
「そっか。そう、なんだ……」
俺がその王族専用の特別席を見上げた時、階下を見下ろしていたシヴァと偶然目が合った。
「……っ!!」
――美しい、翡翠の瞳……。
その瞬間、俺の心はなにか鋭いもので一突きされたみたいな、耐えがたい痛みを覚えた。
「ねえ、イーサン、シヴァがこっち見てるよ」
ラムが俺の耳もとで囁く。
「違うよ……、俺なんか見てるはずない……」
多分、目が合ったと思ったのだって、気のせいにきまってる。
王族の席からここまでは、かなりの距離がある。それに、客席にはこんなにたくさんの人がいるんだ。
「っていうか、シヴァのヤツ、めっちゃ睨んでくるんだけど!! ふーん、そっちがその気なら、僕たちだって見せつけてやろうよ!」
「え!? ラムっ!?」
何を思ったのか、ラムは俺の首に手を回して、思いっきり抱き着いてきた。
「へへっ、イーサンは僕のものだもんねー!」
「おいっ、ラム! アリャンに見られたら誤解されるぞ!」
引きはがそうとするが、ラムはぐいぐいと俺に身体を押し付けてくる。
「どうせアリャンと僕の関係は秘密だからね。ほら、カムフラージュにいつもイーサンが僕の恋人役をしてくれてるだろ!
イーサンも、僕の恋人のふりして!」
「こらっ、離れろってば!」
「このままここでキスでもしちゃう?」
くるくると動く可愛い瞳でラムが迫ったその時、開演の合図とともに客席の明かりが落とされた。
「お静かに!!」
「そういうことは劇場の外でなさってくださいませ!」
周りの貴族たちから注意され、ラムはようやくおれから身体を離したのだった。
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