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18.第一騎士団の青い制服
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俺を抱きしめていたロハンの腕が緩む。
「相手が嫌がっているのがわからないのか? 王宮内で狼藉を働くとは、いい度胸だな、ロハン・タクル!」
ロハンの肩越しに声がした方を見ると、何とそこにいたのは、シヴァ・ミシュラ!!
――こんなところで、またシヴァに会えるだなんて!!!!
「貴様こそっ! 神聖な図書館内で攻撃魔法を使うとはどういうことだっ!」
ロハンは俺から身体を離すと、シヴァに向き合った。
「そうでもしないと、お前はこの男から離れなかっただろう?
それとも、この場でお前を剣でたたき切った方がよかったか?」
馬鹿にしたようなシヴァの物言いに、ロハンは悔し気に歯ぎしりした。
「フン、マヤ殿下の護衛騎士の任務を解かれたと思ったら、やることがないから王宮内のパトロールでもしているのか?
時間を持て余しているとは、うらやましいことだな。
もちろん聞いているぞ。さっそく近衛師団から第一騎士団に所属替えになったとか。その青い制服、似合っているじゃないか、シヴァ!」
ロハンの言葉に、俺はシヴァがいつもの近衛師団の黒い制服ではなく、キリカと同じ青い制服を身に着けていることに気づいた。
深い海のようなロイヤルブルーを基調とした立ち襟の制服。襟元と前立てには銀のボタンが整然と並び、胸元には騎士団の獅子の紋章が映えている。
――んもう、黒でも青でも、どっちにしろ、似合いすぎてかっこよすぎぃ!!!!
「黙れ、妻帯する身でありながら、他の人間を毒牙にかけようとする下種め!」
そう言うとシヴァは、ロハンの側にいる俺に、責めるようなまなざしを向けてくる。
「毒牙だと? シヴァ、お前はいったい何を見ていたんだ?
俺とこのイーサンは、お前なぞにはわからない強い絆で結ばれているんだ。将来を誓い合う仲といっても過言ではない。ねえ、イーサン?」
「へ?」
色っぽい流し目で急に話を振られても、俺は即座に対応することなどできない。
「本当なのか? お前、ロハンにまで……」
シヴァが苛立ちの表情を浮かべている。
「いえ、そのっ、俺は……」
「ねえ、イーサン、私の元へ、来てくれるよね?」
猫なで声で、また俺の腰を抱き寄せようとしてくるロハン。だが俺は、それより先にシヴァに強く手を引かれていた。
「わあっ!」
「……今夜の約束、忘れていないだろうな?」
シヴァに抱き込まれるようにして、ロハンには聞かれないように耳元で囁かれると、俺の頭はぼわっと熱くなった。
「ふぁ、ふぁいっ!」
「もしかして迷惑だったか? お前は本当は、あの白魔導士に抱き着かれて喜んでいたのか?」
探るようなシヴァの翡翠の瞳。
くっ、明るいところで間近で見ると、さらに、エモい……!!
「そんなこと、ありません! 俺、うれしかったです! 助けていただき、ありがとうございます」
俺の小声の返事に、シヴァはふわりとほほ笑んだ。
――ぐぅ。このままでは、なんか、俺のいろんなところから変な感情がダダ漏れになってしまいそう!
「なんなんだ、何をこそこそ二人で話しているんだ!? シヴァお前、まさかイーサンの知り合いなのか?」
ロハンが慌てたように言う。
「別に? ただ困っていた人間を助けたまでのことだ」
シヴァのすまし顔。
「嘘をつくな! おかしいじゃないか、王女以外には興味のないお前が、なぜそこまで……。
まさか、お前まで……っ」
「行くぞ。安全なところまで、送り届けてやろう」
ロハンをきれいに無視すると、当然のようにシヴァは俺の腰に手を回してきた。
「あ、ありがとうございますっ!!」
「イーサン、行かないでっ! そんな男より、私の方がよっぽど資産があるよっ!! 高級食材でもなんでも、欲しいものみんな、何だって買ってあげるからぁ!!」
訳の分からない主張を始めだしたロハンを置いて、俺はシヴァといっしょに王宮図書館を後にした。
――なぜか、シヴァにぴったりと密着されたまま!
「相手が嫌がっているのがわからないのか? 王宮内で狼藉を働くとは、いい度胸だな、ロハン・タクル!」
ロハンの肩越しに声がした方を見ると、何とそこにいたのは、シヴァ・ミシュラ!!
――こんなところで、またシヴァに会えるだなんて!!!!
「貴様こそっ! 神聖な図書館内で攻撃魔法を使うとはどういうことだっ!」
ロハンは俺から身体を離すと、シヴァに向き合った。
「そうでもしないと、お前はこの男から離れなかっただろう?
それとも、この場でお前を剣でたたき切った方がよかったか?」
馬鹿にしたようなシヴァの物言いに、ロハンは悔し気に歯ぎしりした。
「フン、マヤ殿下の護衛騎士の任務を解かれたと思ったら、やることがないから王宮内のパトロールでもしているのか?
時間を持て余しているとは、うらやましいことだな。
もちろん聞いているぞ。さっそく近衛師団から第一騎士団に所属替えになったとか。その青い制服、似合っているじゃないか、シヴァ!」
ロハンの言葉に、俺はシヴァがいつもの近衛師団の黒い制服ではなく、キリカと同じ青い制服を身に着けていることに気づいた。
深い海のようなロイヤルブルーを基調とした立ち襟の制服。襟元と前立てには銀のボタンが整然と並び、胸元には騎士団の獅子の紋章が映えている。
――んもう、黒でも青でも、どっちにしろ、似合いすぎてかっこよすぎぃ!!!!
「黙れ、妻帯する身でありながら、他の人間を毒牙にかけようとする下種め!」
そう言うとシヴァは、ロハンの側にいる俺に、責めるようなまなざしを向けてくる。
「毒牙だと? シヴァ、お前はいったい何を見ていたんだ?
俺とこのイーサンは、お前なぞにはわからない強い絆で結ばれているんだ。将来を誓い合う仲といっても過言ではない。ねえ、イーサン?」
「へ?」
色っぽい流し目で急に話を振られても、俺は即座に対応することなどできない。
「本当なのか? お前、ロハンにまで……」
シヴァが苛立ちの表情を浮かべている。
「いえ、そのっ、俺は……」
「ねえ、イーサン、私の元へ、来てくれるよね?」
猫なで声で、また俺の腰を抱き寄せようとしてくるロハン。だが俺は、それより先にシヴァに強く手を引かれていた。
「わあっ!」
「……今夜の約束、忘れていないだろうな?」
シヴァに抱き込まれるようにして、ロハンには聞かれないように耳元で囁かれると、俺の頭はぼわっと熱くなった。
「ふぁ、ふぁいっ!」
「もしかして迷惑だったか? お前は本当は、あの白魔導士に抱き着かれて喜んでいたのか?」
探るようなシヴァの翡翠の瞳。
くっ、明るいところで間近で見ると、さらに、エモい……!!
「そんなこと、ありません! 俺、うれしかったです! 助けていただき、ありがとうございます」
俺の小声の返事に、シヴァはふわりとほほ笑んだ。
――ぐぅ。このままでは、なんか、俺のいろんなところから変な感情がダダ漏れになってしまいそう!
「なんなんだ、何をこそこそ二人で話しているんだ!? シヴァお前、まさかイーサンの知り合いなのか?」
ロハンが慌てたように言う。
「別に? ただ困っていた人間を助けたまでのことだ」
シヴァのすまし顔。
「嘘をつくな! おかしいじゃないか、王女以外には興味のないお前が、なぜそこまで……。
まさか、お前まで……っ」
「行くぞ。安全なところまで、送り届けてやろう」
ロハンをきれいに無視すると、当然のようにシヴァは俺の腰に手を回してきた。
「あ、ありがとうございますっ!!」
「イーサン、行かないでっ! そんな男より、私の方がよっぽど資産があるよっ!! 高級食材でもなんでも、欲しいものみんな、何だって買ってあげるからぁ!!」
訳の分からない主張を始めだしたロハンを置いて、俺はシヴァといっしょに王宮図書館を後にした。
――なぜか、シヴァにぴったりと密着されたまま!
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