単なるセフレだったはずの王宮騎士団のイケメンエースが、なぜか身分違いの俺に激しく執着しはじめて、周囲をドン引きさせているって本当ですか!?

.mizutama.

文字の大きさ
上 下
18 / 84

18.第一騎士団の青い制服

しおりを挟む
 俺を抱きしめていたロハンの腕が緩む。


「相手が嫌がっているのがわからないのか? 王宮内で狼藉を働くとは、いい度胸だな、ロハン・タクル!」

 ロハンの肩越しに声がした方を見ると、何とそこにいたのは、シヴァ・ミシュラ!!


 ――こんなところで、またシヴァに会えるだなんて!!!!



「貴様こそっ! 神聖な図書館内で攻撃魔法を使うとはどういうことだっ!」

 ロハンは俺から身体を離すと、シヴァに向き合った。

「そうでもしないと、お前はこの男から離れなかっただろう?
それとも、この場でお前を剣でたたき切った方がよかったか?」


 馬鹿にしたようなシヴァの物言いに、ロハンは悔し気に歯ぎしりした。

「フン、マヤ殿下の護衛騎士の任務を解かれたと思ったら、やることがないから王宮内のパトロールでもしているのか?
時間を持て余しているとは、うらやましいことだな。
もちろん聞いているぞ。さっそく近衛師団から第一騎士団に所属替えになったとか。その青い制服、似合っているじゃないか、シヴァ!」


 ロハンの言葉に、俺はシヴァがいつもの近衛師団の黒い制服ではなく、キリカと同じ青い制服を身に着けていることに気づいた。

  深い海のようなロイヤルブルーを基調とした立ち襟の制服。襟元と前立てには銀のボタンが整然と並び、胸元には騎士団の獅子の紋章が映えている。

 ――んもう、黒でも青でも、どっちにしろ、似合いすぎてかっこよすぎぃ!!!!


「黙れ、妻帯する身でありながら、他の人間を毒牙にかけようとする下種め!」

 そう言うとシヴァは、ロハンの側にいる俺に、責めるようなまなざしを向けてくる。


「毒牙だと? シヴァ、お前はいったい何を見ていたんだ?
俺とこのイーサンは、お前なぞにはわからない強い絆で結ばれているんだ。将来を誓い合う仲といっても過言ではない。ねえ、イーサン?」

「へ?」

 色っぽい流し目で急に話を振られても、俺は即座に対応することなどできない。


「本当なのか? お前、ロハンにまで……」

 シヴァが苛立ちの表情を浮かべている。


「いえ、そのっ、俺は……」

「ねえ、イーサン、私の元へ、来てくれるよね?」

 猫なで声で、また俺の腰を抱き寄せようとしてくるロハン。だが俺は、それより先にシヴァに強く手を引かれていた。

「わあっ!」


「……今夜の約束、忘れていないだろうな?」

 シヴァに抱き込まれるようにして、ロハンには聞かれないように耳元で囁かれると、俺の頭はぼわっと熱くなった。


「ふぁ、ふぁいっ!」

「もしかして迷惑だったか? お前は本当は、あの白魔導士に抱き着かれて喜んでいたのか?」


 探るようなシヴァの翡翠の瞳。

 くっ、明るいところで間近で見ると、さらに、エモい……!!


「そんなこと、ありません! 俺、うれしかったです! 助けていただき、ありがとうございます」

 俺の小声の返事に、シヴァはふわりとほほ笑んだ。


 ――ぐぅ。このままでは、なんか、俺のいろんなところから変な感情がダダ漏れになってしまいそう!


「なんなんだ、何をこそこそ二人で話しているんだ!? シヴァお前、まさかイーサンの知り合いなのか?」

 ロハンが慌てたように言う。


「別に? ただ困っていた人間を助けたまでのことだ」

 シヴァのすまし顔。


「嘘をつくな! おかしいじゃないか、王女以外には興味のないお前が、なぜそこまで……。
まさか、お前まで……っ」

「行くぞ。安全なところまで、送り届けてやろう」

 ロハンをきれいに無視すると、当然のようにシヴァは俺の腰に手を回してきた。


「あ、ありがとうございますっ!!」


「イーサン、行かないでっ! そんな男より、私の方がよっぽど資産があるよっ!! 高級食材でもなんでも、欲しいものみんな、何だって買ってあげるからぁ!!」

 訳の分からない主張を始めだしたロハンを置いて、俺はシヴァといっしょに王宮図書館を後にした。


 ――なぜか、シヴァにぴったりと密着されたまま!








 
しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

【完結】婚約破棄された僕はギルドのドSリーダー様に溺愛されています

八神紫音
BL
 魔道士はひ弱そうだからいらない。  そういう理由で国の姫から婚約破棄されて追放された僕は、隣国のギルドの町へとたどり着く。  そこでドSなギルドリーダー様に拾われて、  ギルドのみんなに可愛いとちやほやされることに……。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

処理中です...