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17.三人目の妻
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ロハンが俺の顔を覗き込むようにして、その美しい顔を近づけてくる。
その水色の瞳にじっと見つめられると、俺はなんだか落ち着かない気分になってしまう。
「なにか、お困りごとでも?」
「そうなんだ! すごく困ってるんだよ、イーサン!
君と一緒に考えた『黄金のスープ』なんだけど、先日レシピ通りに作ったというのに、なにか、こうピンとこない出来栄えになってしまったんだよ!」
ロハンは、悩ましげに首を振った。
「薬草は全部入れたんですか?」
「いれたよ、もちろん最後の金箔も忘れずに!」
ロハンの考案により、俺がレシピづくりを手伝った「黄金のスープ」は、若返りや美容にもよい高価な薬草を惜しげもなくつかい、最後は表面を金箔でいろどるという徹底ぶりだ!
かなりの数の高級食材を使っているのだが、レシピ通り作れば、味が決まらないなんてはず、ないのだが……。
「イーサン、このままでは納得できないから、私の屋敷に来て一緒にスープを作ってくれないか?」
ロハンの顔は真剣だ。
「でも……」
「ぜひ妻たちにも、私と君が二人で考案した黄金のスープを飲ませたいんだよ!」
なんとロハンには、すでに妻が二人!
どちらも政略結婚らしいのだが、貴族のご令嬢である二人の妻との関係は良好らしい。
ロハンをめぐって妻同士が喧嘩にならないのかと、平民出の俺は心配してしまうが、位の高すぎる貴族になると結婚生活も一般的な感覚とは違うのだろうか?
「でも俺なんかが、ロハン様のお屋敷にお邪魔するのは……」
「イーサン、実はね! 私は近々、3人目の伴侶を迎えたいと思ってるんだ。
つまりは、料理上手で、心根の優しい、私の良き理解者を……。
だからね、イーサン、君にはその準備の一段階として、ぜひ一度私の屋敷に来て、妻たちにも会ってもらって、屋敷での生活をイメージしてもらいたいんだ! 妻たちも君との面会に乗り気でね!
実はもう、君の部屋まで準備しているんだよ。
……私の言っている意味、分かってくれるよね?」
ロハンの息が耳にかかってくすぐったい。
「ええ、もちろん」
俺はにっこり笑った。
――つまりは、ロハンは3人目の妻を迎えるための準備として、俺を専属の住み込みシェフとして雇いたいと……!
「よかったイーサン、私は心から君を必要としているんだ!」
ロハンは俺の手をとって、両手で包み込んだ。
実を言えば、ロハンからこの手の誘いは以前から受けていたが、俺はいつもやんわりと断り続けていた。
一流の貴族になると、その召使たちでさえ、それなりの家柄のものであるものがほとんどであると聞いている。
いくら俺の料理の腕を買ってくれているといっても、大衆食堂で働く俺が、高位貴族のお抱えシェフになるだなんて、やっぱり何かが違う。
俺はそっとロハンの手をはずした。
「ロハン様、大変ありがたいお申し出ではあるのですが、俺は今の職場を気に入っているんです。
今の暮らしに不満はありませんし、それに俺みたいな人間が、ロハン様のお屋敷で暮らすっていうのは、やっぱり……」
「そんなあああ! イーサンっ!!」
ロハンは叫ぶと、俺に抱き着いてきた。
「ぐえっ!」
「お願いだよ、そんなこと言わないでくれ。私は本気なんだ。
君のことを、心からっ……」
「ろ、ロハンさまっ、く、くるし……っ」
細身の見た目よりはずっと逞しいその身体に、ぎゅうぎゅうと力いっぱい締め上げられ、息も絶え絶えになってしまったその時……。
「離れろ!!」
鋭い声とともに、緑色の閃光があたりを包んだ。
その水色の瞳にじっと見つめられると、俺はなんだか落ち着かない気分になってしまう。
「なにか、お困りごとでも?」
「そうなんだ! すごく困ってるんだよ、イーサン!
君と一緒に考えた『黄金のスープ』なんだけど、先日レシピ通りに作ったというのに、なにか、こうピンとこない出来栄えになってしまったんだよ!」
ロハンは、悩ましげに首を振った。
「薬草は全部入れたんですか?」
「いれたよ、もちろん最後の金箔も忘れずに!」
ロハンの考案により、俺がレシピづくりを手伝った「黄金のスープ」は、若返りや美容にもよい高価な薬草を惜しげもなくつかい、最後は表面を金箔でいろどるという徹底ぶりだ!
かなりの数の高級食材を使っているのだが、レシピ通り作れば、味が決まらないなんてはず、ないのだが……。
「イーサン、このままでは納得できないから、私の屋敷に来て一緒にスープを作ってくれないか?」
ロハンの顔は真剣だ。
「でも……」
「ぜひ妻たちにも、私と君が二人で考案した黄金のスープを飲ませたいんだよ!」
なんとロハンには、すでに妻が二人!
どちらも政略結婚らしいのだが、貴族のご令嬢である二人の妻との関係は良好らしい。
ロハンをめぐって妻同士が喧嘩にならないのかと、平民出の俺は心配してしまうが、位の高すぎる貴族になると結婚生活も一般的な感覚とは違うのだろうか?
「でも俺なんかが、ロハン様のお屋敷にお邪魔するのは……」
「イーサン、実はね! 私は近々、3人目の伴侶を迎えたいと思ってるんだ。
つまりは、料理上手で、心根の優しい、私の良き理解者を……。
だからね、イーサン、君にはその準備の一段階として、ぜひ一度私の屋敷に来て、妻たちにも会ってもらって、屋敷での生活をイメージしてもらいたいんだ! 妻たちも君との面会に乗り気でね!
実はもう、君の部屋まで準備しているんだよ。
……私の言っている意味、分かってくれるよね?」
ロハンの息が耳にかかってくすぐったい。
「ええ、もちろん」
俺はにっこり笑った。
――つまりは、ロハンは3人目の妻を迎えるための準備として、俺を専属の住み込みシェフとして雇いたいと……!
「よかったイーサン、私は心から君を必要としているんだ!」
ロハンは俺の手をとって、両手で包み込んだ。
実を言えば、ロハンからこの手の誘いは以前から受けていたが、俺はいつもやんわりと断り続けていた。
一流の貴族になると、その召使たちでさえ、それなりの家柄のものであるものがほとんどであると聞いている。
いくら俺の料理の腕を買ってくれているといっても、大衆食堂で働く俺が、高位貴族のお抱えシェフになるだなんて、やっぱり何かが違う。
俺はそっとロハンの手をはずした。
「ロハン様、大変ありがたいお申し出ではあるのですが、俺は今の職場を気に入っているんです。
今の暮らしに不満はありませんし、それに俺みたいな人間が、ロハン様のお屋敷で暮らすっていうのは、やっぱり……」
「そんなあああ! イーサンっ!!」
ロハンは叫ぶと、俺に抱き着いてきた。
「ぐえっ!」
「お願いだよ、そんなこと言わないでくれ。私は本気なんだ。
君のことを、心からっ……」
「ろ、ロハンさまっ、く、くるし……っ」
細身の見た目よりはずっと逞しいその身体に、ぎゅうぎゅうと力いっぱい締め上げられ、息も絶え絶えになってしまったその時……。
「離れろ!!」
鋭い声とともに、緑色の閃光があたりを包んだ。
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