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5.我に返る
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そして、今!
「で、どこへ行けばいいんだ?」
衛兵たちに奇異の目で見られながらも王宮の裏口を出たところで、俺の手を引くシヴァが、くるりと振り返った。
「え……!?」
何とシヴァは、何も考えず歩きだしていたらしい。
「お、俺の家っ、ちょっと歩いたところなんで、狭いけど、よければ、そこに……」
「わかった。案内してくれ」
シヴァが俺の横に並ぶと、俺の腰を抱き寄せた。
「……っ!!」
硬直する俺の身体。
人並みには身長もある俺よりも、さらに頭一つ分高いシヴァ。
俺の身体に回された腕は逞しく、時折ふれる身体からはなにやらいい匂いすらする!!
あのシヴァが、今、俺のすぐ隣に!
なんかもう、これ、夢、かな?
っていうか、俺、もうすぐ死ぬのかも!!??
でも、ひと時の夢でもいい!! 神様に見せられた最後の幻でもこの際いい!
ああ、もう、ずっとこのかぐわしい空気を吸っていたい!!
天にも昇る気持ちの俺だったが、家が近づくにつれ、急に俺は我に返った。
――シヴァが、俺のうちに!!??
あの、家というよりは、むしろどちらかというと小屋に近い、あの俺のボロ家に!!??
っていうか、もちろん朝起きてすぐ出てきたからベッドメイキングなんてできているはずもなく、シーツはぐしゃぐしゃ!
王宮内の食堂で働いていた俺は、王宮のあっせんで、王宮に勤める貴族や騎士、職員たちの住むいわゆる王都の高級住宅街のはずれに居をあてがわれていた。
だが、その実態はもちろん立派なお屋敷などではなく、住宅街の端にある小さな森のはずれに隠れるようにしてひっそりと建っている森小屋!
昔は森の管理人が住んでいたのだが、引退して田舎に引っ越してしまったとかで、ちょうど空きがあったため一人暮らしで荷物の少なそうな俺にたまたまあてがわれた、というわけだ。
そしてそこは家というよりは、丸太づくりの小屋といったほうが正確だ。
王宮の下級騎士たちの独身寮よりも、ずっとずっと粗末な住居……。
そんなところに、今を時めく、シヴァ・ミシュラ様を招き入れるなんて……!
――そんな罰当たりなこと、俺にはできないっ!!
「……? どうした?」
急に足を止めた俺の顔を、シヴァはのぞき込んできた。
「あの……、やっぱり、ごめんなさい、俺には、できませんっ!!」
俺はシヴァから離れると、身体を直角に折り曲げて頭を下げた。
「は?」
「俺……っ、見た目もこんなだし、家もあれだし……。だから……、一晩の情けをかけてもらうにしたって、どうしても、あなたには釣り合うとは思えません!
夢はやっぱり、夢のままなんです! だから……、突然大それたことを言って驚かせてしまって、すみませんっ。ですから、さっきのことは忘れてくださいっ……」
「顔を上げろ」
冷たい声に、恐る恐る顔を上げた俺。
凍るほどに冷えた緑色の瞳が俺を見下ろしていた。
シヴァは俺の顎に指をかけた。
「逃がさない」
「え……?」
「いったいいくらで雇われた? どうせ下町の男娼のたぐいだろう?
誰の差し金なのかは知らないが、ここで俺に声をかけたこと、じっくり後悔させてやる!」
シヴァは俺の首根っこを掴むと、まるでズタ袋みたいにひょいと俺を肩に担いだ。
「わああああっ!!」
「ここで痛い目に遭いたくなかったら、さっさとお前の根城を吐け!」
「はっ、はいぃ、わ、わかりましたぁー!」」
――もしかして俺、今からシヴァにボコボコにされたり、する!?
「で、どこへ行けばいいんだ?」
衛兵たちに奇異の目で見られながらも王宮の裏口を出たところで、俺の手を引くシヴァが、くるりと振り返った。
「え……!?」
何とシヴァは、何も考えず歩きだしていたらしい。
「お、俺の家っ、ちょっと歩いたところなんで、狭いけど、よければ、そこに……」
「わかった。案内してくれ」
シヴァが俺の横に並ぶと、俺の腰を抱き寄せた。
「……っ!!」
硬直する俺の身体。
人並みには身長もある俺よりも、さらに頭一つ分高いシヴァ。
俺の身体に回された腕は逞しく、時折ふれる身体からはなにやらいい匂いすらする!!
あのシヴァが、今、俺のすぐ隣に!
なんかもう、これ、夢、かな?
っていうか、俺、もうすぐ死ぬのかも!!??
でも、ひと時の夢でもいい!! 神様に見せられた最後の幻でもこの際いい!
ああ、もう、ずっとこのかぐわしい空気を吸っていたい!!
天にも昇る気持ちの俺だったが、家が近づくにつれ、急に俺は我に返った。
――シヴァが、俺のうちに!!??
あの、家というよりは、むしろどちらかというと小屋に近い、あの俺のボロ家に!!??
っていうか、もちろん朝起きてすぐ出てきたからベッドメイキングなんてできているはずもなく、シーツはぐしゃぐしゃ!
王宮内の食堂で働いていた俺は、王宮のあっせんで、王宮に勤める貴族や騎士、職員たちの住むいわゆる王都の高級住宅街のはずれに居をあてがわれていた。
だが、その実態はもちろん立派なお屋敷などではなく、住宅街の端にある小さな森のはずれに隠れるようにしてひっそりと建っている森小屋!
昔は森の管理人が住んでいたのだが、引退して田舎に引っ越してしまったとかで、ちょうど空きがあったため一人暮らしで荷物の少なそうな俺にたまたまあてがわれた、というわけだ。
そしてそこは家というよりは、丸太づくりの小屋といったほうが正確だ。
王宮の下級騎士たちの独身寮よりも、ずっとずっと粗末な住居……。
そんなところに、今を時めく、シヴァ・ミシュラ様を招き入れるなんて……!
――そんな罰当たりなこと、俺にはできないっ!!
「……? どうした?」
急に足を止めた俺の顔を、シヴァはのぞき込んできた。
「あの……、やっぱり、ごめんなさい、俺には、できませんっ!!」
俺はシヴァから離れると、身体を直角に折り曲げて頭を下げた。
「は?」
「俺……っ、見た目もこんなだし、家もあれだし……。だから……、一晩の情けをかけてもらうにしたって、どうしても、あなたには釣り合うとは思えません!
夢はやっぱり、夢のままなんです! だから……、突然大それたことを言って驚かせてしまって、すみませんっ。ですから、さっきのことは忘れてくださいっ……」
「顔を上げろ」
冷たい声に、恐る恐る顔を上げた俺。
凍るほどに冷えた緑色の瞳が俺を見下ろしていた。
シヴァは俺の顎に指をかけた。
「逃がさない」
「え……?」
「いったいいくらで雇われた? どうせ下町の男娼のたぐいだろう?
誰の差し金なのかは知らないが、ここで俺に声をかけたこと、じっくり後悔させてやる!」
シヴァは俺の首根っこを掴むと、まるでズタ袋みたいにひょいと俺を肩に担いだ。
「わああああっ!!」
「ここで痛い目に遭いたくなかったら、さっさとお前の根城を吐け!」
「はっ、はいぃ、わ、わかりましたぁー!」」
――もしかして俺、今からシヴァにボコボコにされたり、する!?
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