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4.傷心の護衛騎士
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「で、殿下……?」
あっけにとられた様子のシヴァを後目に、マヤ王女はまくし立てた。
「あのね、シヴァ! あなたとは幼馴染で、私のことを姉のように慕ってくれてるのはよくわかっているのよ。でもね、はっきりいって、私はあなたに自分のことを犠牲にしてまでそばにいられたくはないの!
私はね、あなたにそんなものを求めてはいないの。あなたには、ちゃんとした相手を見つけて幸せになってほしいのよ」
「殿下……っ!?」
シヴァも、そして陰から見守っていた俺も、豹変したマヤ王女に度肝を抜かれていた。
「シヴァ、あなたは見た目もいいし、剣の腕も確かだし、家柄もいい!
はっきりいって引く手あまたよ! それなのに、どう? 私といるせいで、いまだに婚約者の一人もいないじゃない。
私は嫌なのよ。私のせいであなたがずっと独り身で、さみしく朽ちていくなんて!
どうせ、私に遠慮して、デートもしたことがないんでしょう! 当然、そういう経験も皆無に違いないわね!
二十歳を過ぎた騎士が童貞だなんて、ああ、なんということでしょう!」
「どっ、どうて……? 殿下っ!?」
まさか王女の口からそんなセリフが出てくるとは!?
たおやかでおしとやかな姫君で通っていたマヤ王女だが……。
驚きのあまり固まってしまった様子のシヴァに、マヤ王女はにっこりを微笑んだ。
「これでわかったでしょう? さあ、もう戻らないと。きっと今頃血眼になって、サンカルが私を探していますわ」
「殿下っ……」
シヴァの絶望に満ちた声。
「シヴァ、あなたはもう舞踏会に戻る必要はないわ。私にはもうサンカルがついていますからね。
あなたもこれまで、いつも私の側にいてばかりで、ほとんど自由のない生活だったでしょう?
これからは羽を伸ばして、じっくりとあなたにお似合いの可愛い伴侶を探してちょうだい。
素敵な出会いが、あるといいわね!」
「そんなっ、殿下……っ!」
「また、明日、謁見の間で会いましょう。王命が下るより先に、私からあなたに伝えておきたかったのよ。ではごきげんよう」
縋りつくように伸ばされたシヴァの腕をするりとかわすと、マヤ王女はくるりとシヴァに背を向けて、俺がいるのとは反対方向の茂みに歩いていってしまった。
足音を立てずに優美に歩くその姿は、高貴で美しい猫のようだった。
「殿下……っ、殿下……っ、どう、してっ……」
がくりと片膝をつくシヴァ。
――シヴァ……!!
そして一部始終を目撃してしまった俺は、がっくりとうなだれるシヴァに、ついに声をかけたのであった。
あっけにとられた様子のシヴァを後目に、マヤ王女はまくし立てた。
「あのね、シヴァ! あなたとは幼馴染で、私のことを姉のように慕ってくれてるのはよくわかっているのよ。でもね、はっきりいって、私はあなたに自分のことを犠牲にしてまでそばにいられたくはないの!
私はね、あなたにそんなものを求めてはいないの。あなたには、ちゃんとした相手を見つけて幸せになってほしいのよ」
「殿下……っ!?」
シヴァも、そして陰から見守っていた俺も、豹変したマヤ王女に度肝を抜かれていた。
「シヴァ、あなたは見た目もいいし、剣の腕も確かだし、家柄もいい!
はっきりいって引く手あまたよ! それなのに、どう? 私といるせいで、いまだに婚約者の一人もいないじゃない。
私は嫌なのよ。私のせいであなたがずっと独り身で、さみしく朽ちていくなんて!
どうせ、私に遠慮して、デートもしたことがないんでしょう! 当然、そういう経験も皆無に違いないわね!
二十歳を過ぎた騎士が童貞だなんて、ああ、なんということでしょう!」
「どっ、どうて……? 殿下っ!?」
まさか王女の口からそんなセリフが出てくるとは!?
たおやかでおしとやかな姫君で通っていたマヤ王女だが……。
驚きのあまり固まってしまった様子のシヴァに、マヤ王女はにっこりを微笑んだ。
「これでわかったでしょう? さあ、もう戻らないと。きっと今頃血眼になって、サンカルが私を探していますわ」
「殿下っ……」
シヴァの絶望に満ちた声。
「シヴァ、あなたはもう舞踏会に戻る必要はないわ。私にはもうサンカルがついていますからね。
あなたもこれまで、いつも私の側にいてばかりで、ほとんど自由のない生活だったでしょう?
これからは羽を伸ばして、じっくりとあなたにお似合いの可愛い伴侶を探してちょうだい。
素敵な出会いが、あるといいわね!」
「そんなっ、殿下……っ!」
「また、明日、謁見の間で会いましょう。王命が下るより先に、私からあなたに伝えておきたかったのよ。ではごきげんよう」
縋りつくように伸ばされたシヴァの腕をするりとかわすと、マヤ王女はくるりとシヴァに背を向けて、俺がいるのとは反対方向の茂みに歩いていってしまった。
足音を立てずに優美に歩くその姿は、高貴で美しい猫のようだった。
「殿下……っ、殿下……っ、どう、してっ……」
がくりと片膝をつくシヴァ。
――シヴァ……!!
そして一部始終を目撃してしまった俺は、がっくりとうなだれるシヴァに、ついに声をかけたのであった。
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