【完結】優秀すぎる部下の副団長が、どうやら騎士団長の俺を下剋上しようとしているらしいのだが?!

.mizutama.

文字の大きさ
上 下
17 / 43

第17話 変わってしまった日常

しおりを挟む
 目が覚めると、そこは騎士団員専用の病室だった。

 どうやら意識を失っている間に、俺は騎士団に帰還していたらしい。騎士団の治癒専門の精鋭部隊のおかげで、すでに傷はほぼ完治し、包帯もとれている状態だった。

 俺の背中の傷はそこそこのものだったらしいが、レオンが魔力を流し続けてくれたおかげで大事にはいたらなかったらしい。
 騎士団専属の医師からは、傷跡は残るかもしれないが、剣を振るのには支障がないこと、日常生活も特に問題なしと説明された。

 病室で一晩泊まって、後遺症がないことが確認されると、俺は王都の自宅に戻り翌日からは通常通り騎士団へ出勤した。

 だが……、

 俺のよく知るはずの第6騎士団は、何かが変わってしまっていた。





「おはようございます。団長。お加減はもうよろしいのでしょうか?
このたびは私が付いていながら団長にけがを負わせてしまったこと、誠に申し訳なく思っております」

 俺が団長室に入った途端にやってきたレオンは、まるでセリフでも読んでいるかのようにすらすらと俺にそう言った。

「え、ああ、もうすっかり大丈夫。もう痛くもないし、平気だよ。レオン、俺の方こそ、すまない。あと、あの、ありがとう。魔力を、流してくれて」
 
 あの時のレオンとの濃厚な口づけが俺の脳裏によぎり、俺はちょっと赤くなった。だが、そんな俺をレオンはまるで気にもせずに、にっこりと笑ったのだ。

「いえ、副団長として当然のことをしたまでです。団長の回復の一助となり、何よりでした。しかし、今後はこのようなことのないよう、団長は遠征等の任務へのはご同行はおやめください」

 俺はあっけにとられていた。

 ――なにか、なにかが、絶対におかしい。
 こいつ、本当に、あのレオンなのか?


「……は、はい。あの、悪かった。結局、迷惑をかけることになってしまって……、それで君は……」

「さっそくですが、決裁を頂きたい書類がたまっております。お願いできますでしょうか?」

 これ以上このことについて話すことはない、とばかりにレオンは話題を変えた。

「は、はい、すぐに……」


 俺が席につくと、レオンはほほ笑みを浮かべたまま、俺のデスクに膨大な量の書類をどさりと置いた。


「午前中にお願いいたします。のちほど受け取りにまいります」

「はい……」

 俺はレオンが退出したあとの扉をしばらく茫然と見つめていた。



 それからも、レオンの態度はずっとおかしかった。

 もちろん、第6騎士団の業務はいつも通り完璧にこなしている。だが、あの張り付いたようなレオンの笑みに、俺は強烈な違和感を感じていた。

 レオンはもともと喜怒哀楽を顏に出すタイプではないが、あんなふうに愛想笑いをするような人間でもなかった。

 それが俺が怪我をしてからというもの、レオンの俺への態度は「慇懃無礼」という言葉がぴったりなものに変わった。

 今までは冷めたような視線を向けられていたとしても、なんだかんだいってレオンは俺の世話をやいてくれていた。そこには俺とレオンだけの絆みたいなものがあった……はずなのに!


 かといって俺にはどうすることもできなかった。
 俺の昼食には、ジラール家の執事がランチの入ったバスケットを届けてくれるようになり、週末にはジラール家から俺の家に豪華な食事が届けられた。
 ――だがそこにクアス料理が登場することは、一度もなかった。



 レオンの態度が変わってから、半月ほどがたった。表面上は、俺たちは団長・副団長としてうまくやっていた。俺はずっとあの時のことについてレオンと話したかった。だが、俺が私的な話をしようとすると、レオンは全身で拒絶の態度を示した。もちろん弱腰な俺は、そんなレオンに強く出ることなどできず、日々もんもんとすごしていた。

 第6騎士団長としては、順風満帆な日々だった。仕事は何のトラブルもなく、実家への仕送りも続けている。ルイ王子に言いつけられた手前か、レオンは俺が日々の生活に困らないように細々したサポートも続けてくれてはいた。

 だが、俺は心の中にぽっかりと穴が開いてしまったような、いいようのないむなしさを覚えていた。
 そして気づいた。俺の人生のなかで、レオンという存在がどれほど大きくなっていたかということに。


 だが……、すべては手遅れだった。

 俺はついに目の当たりにしてしまったのだ。
 レオンの心に巣くっていた恐ろしい計画の一端を……。








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「面白い!」「続き読みたい!」など思っていただけたら、ぜひお気に入り登録・エールよろしくお願いします!
あなたのお気に入り登録が、作者の更新へのモチベーションアップにつながります!!ぜひよろしくお願いします!


しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

婚約破棄?しませんよ、そんなもの

おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。 アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。 けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり…… 「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」 それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。 <嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...