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第15話 真実
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レオンはその長い指で、俺の指の間を撫でていった。
「しばらく一緒にいてわかったんだよ。あんたは、特に男が好きっていう人種でもないよな?
でもせっかくフランドルがいなくなったっていうのに、兄上の誘いも、あんたは拒まなかった。
兄上はいつも俺に話してくれていたよ。ソラルは本当に自分のことが大好きなんだって、いつも甘えてきて、可愛らしくねだってくる姿がたまらないんだって……。
でも、本当は、違うよな? あんたは、兄上のことなんか、これっぽっちも愛しちゃいない!
兄上がグオルガに行って、あんたは内心ほっとしてるんだ。でも、もうすぐ約束の3年がたつ。
兄上が帰ってきたら、あんたはまた、何でもないような顏で言うんだろう?
「ずっとルイ殿下をお待ちしておりました」って。そしてまた足を開いて、どうか奥に出してくださいて、誘って……」
「違うっ!!!!!」
俺はレオンの手をはねのけた。
だが、すぐに強い力で手首をつかんで引き寄せられた。
「何が違うんだよ!? なあ、デュポン団長。俺だって、男だぜ?
ずっとご無沙汰で、たまってるんだよ。可愛い部下が、困っているんだ。
お優しいあんたなら、きっと見過ごすことは、できないよな? たまには俺のことも慰労してくれよ。
わかってるんだぜ。きっと俺がこのまま強引に俺の部屋に連れて行って、朝まであんたを啼かせたところで、あんたはきっとなかったことにしてくれる。なあ、そうだろ?
可愛いソラル……、俺にもあんたを味見させてくれよ……」
「……っ、いい加減にっ、しろっ!!」
俺は息を吸い込むと、拳をレオンの左頬にめり込ませた。
「ぐっ…‥、痛っ、何をっ……」
レオンが頬をおさえ、俺を睨みつける。
俺は強いまなざしをレオンに向けた。
「お前に……、お前なんかに、何がわかる。
お前は、なんにも、わかっちゃいない。
そうだよ、お前から見たら、俺はどうしようもない騎士の面汚しだよ!
剣も魔法もできないくせに、男に抱かれて成り上がった腐った人間だ。お前が嫌っている男娼と何も変わらない。
でも、ユーゴ様とルイ王子は違う!!」
握り締めたこぶしが、怒りでぶるぶると震えている。
「お前は全くの思い違いをしている!
俺は、ユーゴ様に初めて抱かれたとき、泣いたりなんかしていない。
泣いていたのは、俺じゃない。ユーゴ様の方だ!」
レオンが目を見開く。
「俺を抱きながら、ユーゴ様はずっと俺に詫びていた。ごめん、ごめん、ソラルって……。
ユーゴ様は妻と子どもがいながら、俺を抱いたことで、ずっと激しい自責の念にかられていたんだ。
でも、ユーゴ様は第一騎士団長だ。討伐のあとの熱を、誰かが冷まさなければ、きっとユーゴ様は壊れてしまっていた。だから、だから俺は……、第一騎士団長である以上、ずっとユーゴ様のそばにいるって、ユーゴ様を支えるって、誓ったんだ。
俺はたしかにユーゴ様の愛人だった。でも、俺はそんな自分を恥じてなんか、いない!」
「ソラル……」
「ルイ王子のことだって、お前は思い違いをしている。
ルイ王子が心から喜んで、魔物の討伐の前線に立っていたとでも?
みんなは魔物狩りがルイ王子の趣味だといか言っているけど、そんなはずあるわけない!
ルイ王子はいつも命を懸けて戦っていた。
だから討伐から帰ってきたルイ王子は、俺を抱いて昂った身体をしずめた後、いつも身体の震えがおさまらなかった……」
「嘘だ……、あの兄上が」
レオンが顔をゆがめる。
「俺はそんなルイ王子を抱きしめて、よくがんばったね、もう大丈夫だよって何度も背中を撫でるんだ。そうするとようやくルイ王子は眠ることができる。
ルイ王子は言ってたよ。自分がこのような剣の才能を得たのは天からの采配だって。だから天命に従い、自分は魔物を狩るんだって。町や村、ひとりでも多くの人間を救うのが、剣の才を受けた自分の使命なんだって。
俺は、そんなルイ王子を心から尊敬してる。世間一般でいう愛とは違うかもしれない。でも俺はルイ王子が大好きだ。だから、またルイ王子が帰国して、第一騎士団の団長として俺を必要とするなら、俺はいつだってルイ王子に身をあずける!」
レオンは歯を食いしばると、拳を握り締めた。
「くそっ、なん、だよっ、ソラルっ……!」
殴られるかと身構えたが、レオンの拳はテーブルにめり込んだ。
テーブルは一瞬で真っ二つになった。店内がしんと静まり返る。
「なん、でっ……、なんで俺じゃダメなんだよっ!!!!」
叫ぶように言うと、レオンは立ち上がり店から出て行ってしまった。
「おいっ、ちょっと、レオンっ!」
俺は急いで店の人にテーブルを弁償する旨を伝えると、レオンの後を追った。
「しばらく一緒にいてわかったんだよ。あんたは、特に男が好きっていう人種でもないよな?
でもせっかくフランドルがいなくなったっていうのに、兄上の誘いも、あんたは拒まなかった。
兄上はいつも俺に話してくれていたよ。ソラルは本当に自分のことが大好きなんだって、いつも甘えてきて、可愛らしくねだってくる姿がたまらないんだって……。
でも、本当は、違うよな? あんたは、兄上のことなんか、これっぽっちも愛しちゃいない!
兄上がグオルガに行って、あんたは内心ほっとしてるんだ。でも、もうすぐ約束の3年がたつ。
兄上が帰ってきたら、あんたはまた、何でもないような顏で言うんだろう?
「ずっとルイ殿下をお待ちしておりました」って。そしてまた足を開いて、どうか奥に出してくださいて、誘って……」
「違うっ!!!!!」
俺はレオンの手をはねのけた。
だが、すぐに強い力で手首をつかんで引き寄せられた。
「何が違うんだよ!? なあ、デュポン団長。俺だって、男だぜ?
ずっとご無沙汰で、たまってるんだよ。可愛い部下が、困っているんだ。
お優しいあんたなら、きっと見過ごすことは、できないよな? たまには俺のことも慰労してくれよ。
わかってるんだぜ。きっと俺がこのまま強引に俺の部屋に連れて行って、朝まであんたを啼かせたところで、あんたはきっとなかったことにしてくれる。なあ、そうだろ?
可愛いソラル……、俺にもあんたを味見させてくれよ……」
「……っ、いい加減にっ、しろっ!!」
俺は息を吸い込むと、拳をレオンの左頬にめり込ませた。
「ぐっ…‥、痛っ、何をっ……」
レオンが頬をおさえ、俺を睨みつける。
俺は強いまなざしをレオンに向けた。
「お前に……、お前なんかに、何がわかる。
お前は、なんにも、わかっちゃいない。
そうだよ、お前から見たら、俺はどうしようもない騎士の面汚しだよ!
剣も魔法もできないくせに、男に抱かれて成り上がった腐った人間だ。お前が嫌っている男娼と何も変わらない。
でも、ユーゴ様とルイ王子は違う!!」
握り締めたこぶしが、怒りでぶるぶると震えている。
「お前は全くの思い違いをしている!
俺は、ユーゴ様に初めて抱かれたとき、泣いたりなんかしていない。
泣いていたのは、俺じゃない。ユーゴ様の方だ!」
レオンが目を見開く。
「俺を抱きながら、ユーゴ様はずっと俺に詫びていた。ごめん、ごめん、ソラルって……。
ユーゴ様は妻と子どもがいながら、俺を抱いたことで、ずっと激しい自責の念にかられていたんだ。
でも、ユーゴ様は第一騎士団長だ。討伐のあとの熱を、誰かが冷まさなければ、きっとユーゴ様は壊れてしまっていた。だから、だから俺は……、第一騎士団長である以上、ずっとユーゴ様のそばにいるって、ユーゴ様を支えるって、誓ったんだ。
俺はたしかにユーゴ様の愛人だった。でも、俺はそんな自分を恥じてなんか、いない!」
「ソラル……」
「ルイ王子のことだって、お前は思い違いをしている。
ルイ王子が心から喜んで、魔物の討伐の前線に立っていたとでも?
みんなは魔物狩りがルイ王子の趣味だといか言っているけど、そんなはずあるわけない!
ルイ王子はいつも命を懸けて戦っていた。
だから討伐から帰ってきたルイ王子は、俺を抱いて昂った身体をしずめた後、いつも身体の震えがおさまらなかった……」
「嘘だ……、あの兄上が」
レオンが顔をゆがめる。
「俺はそんなルイ王子を抱きしめて、よくがんばったね、もう大丈夫だよって何度も背中を撫でるんだ。そうするとようやくルイ王子は眠ることができる。
ルイ王子は言ってたよ。自分がこのような剣の才能を得たのは天からの采配だって。だから天命に従い、自分は魔物を狩るんだって。町や村、ひとりでも多くの人間を救うのが、剣の才を受けた自分の使命なんだって。
俺は、そんなルイ王子を心から尊敬してる。世間一般でいう愛とは違うかもしれない。でも俺はルイ王子が大好きだ。だから、またルイ王子が帰国して、第一騎士団の団長として俺を必要とするなら、俺はいつだってルイ王子に身をあずける!」
レオンは歯を食いしばると、拳を握り締めた。
「くそっ、なん、だよっ、ソラルっ……!」
殴られるかと身構えたが、レオンの拳はテーブルにめり込んだ。
テーブルは一瞬で真っ二つになった。店内がしんと静まり返る。
「なん、でっ……、なんで俺じゃダメなんだよっ!!!!」
叫ぶように言うと、レオンは立ち上がり店から出て行ってしまった。
「おいっ、ちょっと、レオンっ!」
俺は急いで店の人にテーブルを弁償する旨を伝えると、レオンの後を追った。
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