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第11話 優秀すぎる部下との交流
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「わっ、なにこれ、ウマっ!!!!」
「……」
「うわっ、すごいっ、これ、パンの中に肉が詰まってる!」
「……」
――それからおよそ、一時間後。
俺はレオンが「その辺にあるもので適当に作った」という料理を貪り食っていた。
「すごいっ、レオンって本当になんでもできるんだな!」
「祖国のクアスにいたころは、身の回りのことは一通り何でもしていましたから。幼い頃から母は舞台で常に家を空けていましたし」
「それにこのスープっ、なにっ!? スパイス、かな? 俺こんな味付け初めて食べた!」
大変不作法であることはわかっていたが、欲望に抗いきれない俺は、スープの皿に口をつけ最後の一滴まで飲み干してしまった。
「クアスの伝統料理です。さきほど市場で、偶然スパイスがたまたま手に入ったので作りました。お口に合ったのならなによりです」
「へえ、俺、この味好きだな。毎日でも食べたいくらいだよ!」
「……」
この日レオンが作ってくれた料理は、スパイスが効いたクアスの独特の料理だった。もともと、パンチが効いた料理が好きな俺は、クアスの味付けが妙に気に入ってしまった。
出された料理をぺろりと平らげた俺に、レオンはこれみよがしにため息をついた。
「そんなに食欲があるなら、なぜいままで黒パンばかり食べていたんです!?」
「うーん、俺は料理もできないし、前まではがっつり食べたいときは騎士団の食堂にも行ってたんだけど、団長になったらほかの団員の手前、なかなか食堂にも気軽に行きづらいから……、なんとなく……、つい……」
そう、騎士団長という身分は、こういうとき非常に不便なものなのだった。
「人間はパンだけでは栄養不足になります! 勤務中に倒れて当たり前です! 仮にも騎士団長であるというあなたが、そんなこともわからないのですか!」
レオンが俺に顔を近づけて凄む。
「はい、すみません、ごめんなさい。以後反省しま……」
「口だけの反省は結構です。あなたのふがいなさはこれでよーくわかりました。
兄上のためにも、これからは俺があなたの生活を管理します!」
そしてレオンの宣言通り……、俺はレオンに私生活まで管理されることになったのだった。
しかし俺の生活環境は、レオンのおかげであれよあれよという間にグレードアップしていった。
まずは住環境。俺が倒れた週末には、俺の自宅にジラール公爵邸からさまざまな物品が届けられた。
踏むのももったいないような高価な織物の絨毯、おいそれと足を置くことすらもためらわれるような豪華なオットマン、50人くらいのパーティが開けそうな銀食器の数々……。
これらはすべてジラール公爵家の倉庫に眠っていたものだという。しまい込んで使い道がないものばかりだから、俺がこの家で利用すればいい……とのことだったが!!
「レオン……、こ、こんな大きな壺はこの家には必要ないんじゃないかな……? そもそも何を入れたらいいかもわからないし、もし壊したら……」
入口の近くにデデーンと置かれた大きな壺を前に、俺はビビり散らかしていた。
「別に壊してもらっても結構です。それと、何かを入れるためのものではありません」
「はあ……」
「ああ、ここには何か絵画が必要ですね。団長にはお好みの作家などはいますか?」
「作家? なに……!? なにの!?」
「……こればかりは趣味がありますので、一緒に見てもらって選んだ方がいいでしょう。仕方がない、明日の夜お時間はありますか?」
レオンが振り返って俺を見る。
「え、ああ、特に予定は、ないけど……」
「ディナーにお招きにあがりますので、ご用意を」
その日のレオンは騎士団の制服ではなく、貴族然とした私服だった。こうして見ると、貴族のトップ・公爵家の跡取りとしての存在感もすごい!
俺はレオンに、ルイ王子に通ずる遺伝子を感じた。
それに対して、ほとんど寝間着同然の俺の着古した服のみすぼらしいことといったら……!!
言い訳すると、騎士団での用事以外に俺が出歩くことはほとんどない俺。もちろん田舎者の俺は、新品の服を買いに行くような勇気もなく、俺のクローゼットにはほとんど服がない状態。
あったとしても、ユーゴ様やルイ王子から贈られた「こんなキラキラしたやつ着てどこにいったらいいの!?(しかももう若くないので着る勇気もない)」的なパーティ仕様の正装のみだった。
だから今も、10年以上も着古した服をそのまま着ている俺。
「あの、お招きって、もしかして……、ジラール公爵家に?」
「他にどこがあるんですか? なにか不服でも?」
レオンのドスの利いた声。怖い……。レオンはいつも急に怒る。もはやどこに地雷があるかは不明。突然機嫌が悪くなるから扱いにとても困る。まるで気難しいご令嬢のようだ……。
「いや、そんな高位の貴族様のお屋敷に、俺みたいなやつがお邪魔してもいいのかな……って、それに服もないし」
俺の返事を聞いたレオンは真顔に戻る。
「ああ、そんなことですか。ご心配なく。すべてこちらで用意しておきますから」
「すべて……!?」
そう、レオンは何をやらせてもソツがない男だった。
「わっ、なにこれ、ウマっ!!!!」
「……」
「うわっ、すごいっ、これ、パンの中に肉が詰まってる!」
「……」
――それからおよそ、一時間後。
俺はレオンが「その辺にあるもので適当に作った」という料理を貪り食っていた。
「すごいっ、レオンって本当になんでもできるんだな!」
「祖国のクアスにいたころは、身の回りのことは一通り何でもしていましたから。幼い頃から母は舞台で常に家を空けていましたし」
「それにこのスープっ、なにっ!? スパイス、かな? 俺こんな味付け初めて食べた!」
大変不作法であることはわかっていたが、欲望に抗いきれない俺は、スープの皿に口をつけ最後の一滴まで飲み干してしまった。
「クアスの伝統料理です。さきほど市場で、偶然スパイスがたまたま手に入ったので作りました。お口に合ったのならなによりです」
「へえ、俺、この味好きだな。毎日でも食べたいくらいだよ!」
「……」
この日レオンが作ってくれた料理は、スパイスが効いたクアスの独特の料理だった。もともと、パンチが効いた料理が好きな俺は、クアスの味付けが妙に気に入ってしまった。
出された料理をぺろりと平らげた俺に、レオンはこれみよがしにため息をついた。
「そんなに食欲があるなら、なぜいままで黒パンばかり食べていたんです!?」
「うーん、俺は料理もできないし、前まではがっつり食べたいときは騎士団の食堂にも行ってたんだけど、団長になったらほかの団員の手前、なかなか食堂にも気軽に行きづらいから……、なんとなく……、つい……」
そう、騎士団長という身分は、こういうとき非常に不便なものなのだった。
「人間はパンだけでは栄養不足になります! 勤務中に倒れて当たり前です! 仮にも騎士団長であるというあなたが、そんなこともわからないのですか!」
レオンが俺に顔を近づけて凄む。
「はい、すみません、ごめんなさい。以後反省しま……」
「口だけの反省は結構です。あなたのふがいなさはこれでよーくわかりました。
兄上のためにも、これからは俺があなたの生活を管理します!」
そしてレオンの宣言通り……、俺はレオンに私生活まで管理されることになったのだった。
しかし俺の生活環境は、レオンのおかげであれよあれよという間にグレードアップしていった。
まずは住環境。俺が倒れた週末には、俺の自宅にジラール公爵邸からさまざまな物品が届けられた。
踏むのももったいないような高価な織物の絨毯、おいそれと足を置くことすらもためらわれるような豪華なオットマン、50人くらいのパーティが開けそうな銀食器の数々……。
これらはすべてジラール公爵家の倉庫に眠っていたものだという。しまい込んで使い道がないものばかりだから、俺がこの家で利用すればいい……とのことだったが!!
「レオン……、こ、こんな大きな壺はこの家には必要ないんじゃないかな……? そもそも何を入れたらいいかもわからないし、もし壊したら……」
入口の近くにデデーンと置かれた大きな壺を前に、俺はビビり散らかしていた。
「別に壊してもらっても結構です。それと、何かを入れるためのものではありません」
「はあ……」
「ああ、ここには何か絵画が必要ですね。団長にはお好みの作家などはいますか?」
「作家? なに……!? なにの!?」
「……こればかりは趣味がありますので、一緒に見てもらって選んだ方がいいでしょう。仕方がない、明日の夜お時間はありますか?」
レオンが振り返って俺を見る。
「え、ああ、特に予定は、ないけど……」
「ディナーにお招きにあがりますので、ご用意を」
その日のレオンは騎士団の制服ではなく、貴族然とした私服だった。こうして見ると、貴族のトップ・公爵家の跡取りとしての存在感もすごい!
俺はレオンに、ルイ王子に通ずる遺伝子を感じた。
それに対して、ほとんど寝間着同然の俺の着古した服のみすぼらしいことといったら……!!
言い訳すると、騎士団での用事以外に俺が出歩くことはほとんどない俺。もちろん田舎者の俺は、新品の服を買いに行くような勇気もなく、俺のクローゼットにはほとんど服がない状態。
あったとしても、ユーゴ様やルイ王子から贈られた「こんなキラキラしたやつ着てどこにいったらいいの!?(しかももう若くないので着る勇気もない)」的なパーティ仕様の正装のみだった。
だから今も、10年以上も着古した服をそのまま着ている俺。
「あの、お招きって、もしかして……、ジラール公爵家に?」
「他にどこがあるんですか? なにか不服でも?」
レオンのドスの利いた声。怖い……。レオンはいつも急に怒る。もはやどこに地雷があるかは不明。突然機嫌が悪くなるから扱いにとても困る。まるで気難しいご令嬢のようだ……。
「いや、そんな高位の貴族様のお屋敷に、俺みたいなやつがお邪魔してもいいのかな……って、それに服もないし」
俺の返事を聞いたレオンは真顔に戻る。
「ああ、そんなことですか。ご心配なく。すべてこちらで用意しておきますから」
「すべて……!?」
そう、レオンは何をやらせてもソツがない男だった。
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