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第6話 Win-winの関係

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「デュポン、君に辞令がでている!」

 当時の第六騎士団長だったクシー団長が、俺に一枚の紙を差し出した。

 内容は……。

「第一騎士団との兼務を命ずる? なんなんですか、これは?」

「これは大変栄誉なことであるぞ、デュポン! 今後、第一騎士団長のルイ殿下が遠征のときには、殿下からのご指名で君が専属でお供をすることになった。
君は第六騎士団の希望だ! これからがんばって殿下を支えてやってくれ」

 ポンと肩に手を置かれた俺。

 もちろん俺にはわかっていた。この辞令が何を意味するかとうことくらい……。

 ーーこの日から、俺は遠征先でのルイ王子の性欲処理担当となったのだった。

 そして俺には『第一騎士団長キラー』という不名誉なあだ名がつけられた。



 とはいえ、悪いことばかりではなかった。

 まず、第6騎士団での二階級特進! 
 これはもちろん、第一騎士団長のルイ王子が手を回したことによるれっきとした不正人事である。

 だが、出会い頭のセックスといい、その後の貪り尽くされるような情交といい、精神的にも肉体的にも俺はかなりのダメージを被ったのだから、これくらいの報奨はあって当然だろう!


 そして!!


「ソラル、いいっ? ここ、ここかな?」

「ああっ、殿下っ、いいっ、そこっ、もっと、もっとぉ!!!」

「いいよっ、いっぱい、俺の出してあげるからねっ!」


「ああっ、殿下っ! 殿下ぁ……!」


 ーー俺とルイ王子の身体の相性はとても良かった……。



 ルイ王子というのは、もともととても野性味溢れる大変男らしい人格の持ち主であった。
 
 見た目はその辺の令嬢も裸足で逃げ出してしまうほどの美貌の持ち主だが、内面は竹を割ったようなはっきりとした性格で、セックスのときも自分が激しく突きまくって、相手をヒイヒイいわすのがなによりのお好み。
 ところが、ルイ王子の結婚相手の友好国の王女さまは、抱きしめたら折れてしまいそうなほどの儚げな女性らしい。男としてはそんな可憐な美女を娶るのは至極の喜びだと思うのだが、王族というのはいろいろと面倒なしがらみがあるようで……。

 ルイ王子の本心としては、もちろん閨でも妻となった王女をめちゃくちゃに犯してヒイヒイ言わせたいらしいのだが、そこは隣国との力関係や、王宮の閨のお作法云々からも、絶対NGなのだそうだ。
 というわけで、ルイ王子は王宮の閨教育の教科書通り、礼儀正しく、羽で触れるような、女性の気持ち優先の夫婦の営みを心がけているという。

 もちろんまだ年若いルイ王子のこと、そんな生半可なセックスでは満足できるはずもなく、日々もんもんと性欲を持て余していたようで……。


「ああ、ソラル、最高っ、ほら、奥まで入っちゃうよ。力抜いて! このままじゃソラルの大好きなところに入れないよっ!?
どうする? ソラル……。ずっとこのままでも、いいんだよ!?」

 ちなみにルイ王子は、言葉責めもとてもお得意である。

「ああんっ、殿下っ、きてっ、早くっ、俺の奥っ、殿下のいっぱい、ほしいっ!!!」

「いっぱい出すよ。ソラルが妊娠しちゃうくらい……、ほらっ!」


 後ろから俺の腰を支えるルイ王子が、ぱちゅんと俺の結腸に、その亀頭をはめ込む。


「はああああんっ、んっ、やだあっ、赤ちゃん、できちゃうぅ!!!」


 もちろん男同士で妊娠するはずもないのだが、ルイ王子は俺への種付プレイが大好物。

 俺だって当時はノリノリだったんだから、どっちもどっちという話なのだが……。


 そんなこんなで、俺とルイ王子はウィンウィンの関係を築いていた。ルイ王子は、自慢の一物を心置きなく全部埋め込んでめちゃくちゃにできる俺の身体を存分に堪能して日々のストレスを発散し、俺は俺で激しいルイ王子とのセックスを楽しみながらも、第一騎士団との兼務で倍の給料を手にしたり、しばしば届くルイ王子からの高額な贈り物に目をむいたりしていた……。


 ――ユーゴ様と俺の関係が甘くねっとりしたものだったとしたら、ルイ王子と俺の関係は明るくさっぱりしたものだった。

 愛人という淫靡な雰囲気よりも、セフレという後腐れのない軽い関係が俺たちには似合っていた。

 それに、ともに魔獣相手の前線で命を預け合うもの同士。俺たちの間には、身体の関係だけでない、友情みたいなものも確かにあったと思う。

 日ごろ国の完璧な第3王子としての仮面をかぶって生きているルイ王子は、俺の前だけは素の自分でいることができた……と思うのは俺の思い上がりではないだろう。


 だがお互いにとってどんな素晴らしい関係も、いつか終わりがくるときがくる。

 俺とルイ王子も例外ではなかった。

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