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第3話 サクセスストーリーの幕開け
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ユーゴ様の本宅には、美しいと評判の5歳年下の妻と、これまた可愛いと評判の3歳の娘が一人……。
ユーゴ様を責めないでやってほしい!
若干30歳の騎士団長が妻と子どもと離れて、王都に単身赴任!
ハードな騎士団長の任務をこなすには、性欲の定期的な発散はマストとなる。
俺がここにくるまで、ユーゴ様には小姓もおらず、よそに愛人も作ったりしていなかったのだから、他の騎士たちと比べてもユーゴ様の忍耐力はかなりのものだと思う。
俺は女でもなければ貴族の子弟でもない。妊娠もしないし、ユーゴ様が飽きて捨てても復讐する手立ても人脈もない。
ユーゴ様にとっては、俺はとってもお手頃な性欲発散の相手に違いなかった。
でも俺はそれでも全然かまわなかった。もともと、何の後ろ盾もない農家の三男坊。
騎士団の従騎士になれたというだけでも、俺の田舎では大出世だ。
しかも、殴られるでも蹴られるでもなく、毎日おいしい食事と十分な衣服が提供され、さらにはご主人自らが毎夜優しく奉仕してくださるというご褒美までついている。
こんな夢みたいな待遇、そうそう転がっちゃいない。
――だが、どんな夢もいつかは必ず覚めるときがくるわけで……。
ユーゴ様が40歳になる年、ユーゴ様は騎士団を引退した。
それにより、ユーゴ様は本宅へと帰り、家督を継ぐこととなった。
ここでも不思議な騎士道精神を発揮したユーゴ様は、俺に「一緒に本宅へ帰ってくれないか?」と最後の情けをかけてくれたが、俺はもちろん首を振った。
平民出身の愛人がどの面さげて、本妻とお子様のいる貴族様の本宅に居候するというのだ!?
ユーゴ様は俺の決意が固いと知ると、とても悲しそうな顔をした。あと腐れのない愛人といえども、10年も一緒にいたのだ。やはり情が湧いていたのだろう。
ユーゴ様はまたまた遺憾ない紳士ぶりを発揮し、王都に残された俺が生活に困らないようにと、様々なことを手配してくれた。
俺は、第6騎士団の騎士として正式に採用され、王都の騎士専用の宿舎に住まわせてもらうことになった。
――その時俺は28歳。
コネを頼りに生き抜く俺の、騎士団・サクセスストーリーの幕開けだった。
その時の俺は剣の技術はそこそこ上達していたとはいえ、騎士団の前線で活躍するような腕前には程遠かった。
しかもほかの騎士に比べて、明らかに体格では見劣りする。かといって、魔力もたいしたことはなく、強力な攻撃魔法が仕えるでもない。
俺はどこからどう見ても、「元・第一騎士団長の愛人枠」でコネ採用された使えないやつだった。
だが、そこはユーゴ様。どこでどう手をまわしたのかは不明だが、騎士団員のなかで俺を見下してくるやつ、からかってくるやつ、そして露骨に誘ってくるやつはなぜか皆無だった。
きっとユーゴ様の影響力は計り知れないほど大きかったのだろう。どちらかというと、俺は恐れられ、避けられているといったほうが正しかった。
また幸運なことに、俺が採用された第6騎士団は、前線部隊ではなく騎士団の裏方部隊であった。
前線で戦う騎士団へ物資や食料の配達を手配したりはもちろんのこと、予算組みなどの事務的作業や、団員の人事などの機密事項、そして国家機密の諜報活動なども取り扱うため、第6騎士団はそこそこ優秀な人間が集まっていた。
俺はそこで、こまごまとした雑用を請け負い、働いた。
働くのは楽しかった。裏方仕事がほとんどなので、命の危険もなく、ケガもない。
そして、団員の宿舎はボリューム満点の食事もでるので、生活には困らなかった。給料も高かったので、実家に仕送りもできてとても感謝された。
郊外の本宅にもどったユーゴ様からは、まめに手紙が届いた。たまにユーゴ様が用事で王都に来た時は、二人で食事をすることもあった。ただ、ユーゴ様からはそれとなく誘われたが、あれからは身体の関係は断っていた。
もちろん優しいユーゴ様は俺に関係を無理強いすることはなく、別れの時にぎゅっと抱きしめられ、ちょっと長めのキスをするところで落ち着いていた。
そして、神の導きか、天使の悪戯か……。また俺に運命を変える出会いが訪れた……。
ユーゴ様を責めないでやってほしい!
若干30歳の騎士団長が妻と子どもと離れて、王都に単身赴任!
ハードな騎士団長の任務をこなすには、性欲の定期的な発散はマストとなる。
俺がここにくるまで、ユーゴ様には小姓もおらず、よそに愛人も作ったりしていなかったのだから、他の騎士たちと比べてもユーゴ様の忍耐力はかなりのものだと思う。
俺は女でもなければ貴族の子弟でもない。妊娠もしないし、ユーゴ様が飽きて捨てても復讐する手立ても人脈もない。
ユーゴ様にとっては、俺はとってもお手頃な性欲発散の相手に違いなかった。
でも俺はそれでも全然かまわなかった。もともと、何の後ろ盾もない農家の三男坊。
騎士団の従騎士になれたというだけでも、俺の田舎では大出世だ。
しかも、殴られるでも蹴られるでもなく、毎日おいしい食事と十分な衣服が提供され、さらにはご主人自らが毎夜優しく奉仕してくださるというご褒美までついている。
こんな夢みたいな待遇、そうそう転がっちゃいない。
――だが、どんな夢もいつかは必ず覚めるときがくるわけで……。
ユーゴ様が40歳になる年、ユーゴ様は騎士団を引退した。
それにより、ユーゴ様は本宅へと帰り、家督を継ぐこととなった。
ここでも不思議な騎士道精神を発揮したユーゴ様は、俺に「一緒に本宅へ帰ってくれないか?」と最後の情けをかけてくれたが、俺はもちろん首を振った。
平民出身の愛人がどの面さげて、本妻とお子様のいる貴族様の本宅に居候するというのだ!?
ユーゴ様は俺の決意が固いと知ると、とても悲しそうな顔をした。あと腐れのない愛人といえども、10年も一緒にいたのだ。やはり情が湧いていたのだろう。
ユーゴ様はまたまた遺憾ない紳士ぶりを発揮し、王都に残された俺が生活に困らないようにと、様々なことを手配してくれた。
俺は、第6騎士団の騎士として正式に採用され、王都の騎士専用の宿舎に住まわせてもらうことになった。
――その時俺は28歳。
コネを頼りに生き抜く俺の、騎士団・サクセスストーリーの幕開けだった。
その時の俺は剣の技術はそこそこ上達していたとはいえ、騎士団の前線で活躍するような腕前には程遠かった。
しかもほかの騎士に比べて、明らかに体格では見劣りする。かといって、魔力もたいしたことはなく、強力な攻撃魔法が仕えるでもない。
俺はどこからどう見ても、「元・第一騎士団長の愛人枠」でコネ採用された使えないやつだった。
だが、そこはユーゴ様。どこでどう手をまわしたのかは不明だが、騎士団員のなかで俺を見下してくるやつ、からかってくるやつ、そして露骨に誘ってくるやつはなぜか皆無だった。
きっとユーゴ様の影響力は計り知れないほど大きかったのだろう。どちらかというと、俺は恐れられ、避けられているといったほうが正しかった。
また幸運なことに、俺が採用された第6騎士団は、前線部隊ではなく騎士団の裏方部隊であった。
前線で戦う騎士団へ物資や食料の配達を手配したりはもちろんのこと、予算組みなどの事務的作業や、団員の人事などの機密事項、そして国家機密の諜報活動なども取り扱うため、第6騎士団はそこそこ優秀な人間が集まっていた。
俺はそこで、こまごまとした雑用を請け負い、働いた。
働くのは楽しかった。裏方仕事がほとんどなので、命の危険もなく、ケガもない。
そして、団員の宿舎はボリューム満点の食事もでるので、生活には困らなかった。給料も高かったので、実家に仕送りもできてとても感謝された。
郊外の本宅にもどったユーゴ様からは、まめに手紙が届いた。たまにユーゴ様が用事で王都に来た時は、二人で食事をすることもあった。ただ、ユーゴ様からはそれとなく誘われたが、あれからは身体の関係は断っていた。
もちろん優しいユーゴ様は俺に関係を無理強いすることはなく、別れの時にぎゅっと抱きしめられ、ちょっと長めのキスをするところで落ち着いていた。
そして、神の導きか、天使の悪戯か……。また俺に運命を変える出会いが訪れた……。
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