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第1話 平凡な男
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ソラル・デュポン、34歳、独身。職業、第6騎士団長。
俺は平凡な男だ。
髪は茶色、目は薄茶色。中肉中背の目立った特徴のない容姿。
剣の腕、魔力ともに中の中!
そんな俺が、なぜ第6騎士団の団長という要職についているかというと、それはすべて俺の運とコネによるものだ。
さかのぼること16年前——。
18になったばかりの農家の三男の俺は、いっちょ王都で一旗あげてやろうと、故郷の農村からぼろカバン一つで鼻息荒く飛び出してきた。
……で、当然、ものの数日で路頭に迷った。
持っていた路銀も底をつき、食べるものもなくなった俺は、あてもなく城下町をさまよい、ふらふらと大きな馬車通りに飛び出してしまった。
もちろん、貴族様の大型馬車に惹かれそうになった俺。ただ運動神経だけは自信があったので、かろうじて避けることができたが、俺は石畳の道にごろごろと転がる羽目になった。
そして運命の出会い!
豪華絢爛な大型馬車から下りてきたのは、今をときめく第一騎士団長のユーゴ・フランドル様!
当時は30歳の男盛りで、剣の腕で右に出るものはいないと評判の美丈夫だった。
「大丈夫か!? 怪我は!?」
王都の騎士団の制服を初めて見た俺は、ユーゴ様のあまりのカッコよさに興奮を隠しきれなかった。
ケガもなく、大丈夫だと説明した俺に、ユーゴ様はそれでは気が済まないと言い張り、俺を自分の王都の屋敷に連れて行ってくれた。
そこで手厚く看護され(怪我はないが)、おいしい食事をたらふくごちそうになった俺。
礼を言って去ろうとする俺を、ユーゴ様はなぜか引き留めた。
「君っ、行く当てがないなら、私のもとで働く気はないか?」
そして俺は、まんまとユーゴ様の小姓(ペイジ)となることに成功したのだった。
ユーゴ様は、金茶の髪に、琥珀色の瞳のそれはそれはカッコいい騎士だった。
家柄もすばらしく、伯爵家の長男で、いずれは家督を継ぐ身だが、たぐいまれなる剣の才能を買われ、騎士団に所属していた。
ユーゴ様の本宅は郊外にあったが、騎士団に勤務していたため王都にも豪華な屋敷を構えていたのだった。
ちなみに俺はユーゴ様の本宅へは行ったことはない……。
俺はそこでユーゴ様の身の回りの世話や屋敷の雑用をし、そのうち騎士団長の従騎士として騎士団の仕事にも同行するようになった。
そこで俺は、剣や馬術、貴族のマナーなどを一通り学んでいった。
なぜユーゴ様のような一流の人間が、俺のようなどこの馬の骨ともわからない男を側に置こうと思ったのはいまだに謎だ。
だが、俺はユーゴ様のおかげで、いままで見たこともないきらびやかな世界に足を踏み入れることになったのだった。
――何もかもが順風満帆に思えていたが、一つだけ、俺の心に引っかかることがあった。
それは……。
「おいで、ソラル……」
寝台の上で、上半身裸になったユーゴ様が手招きする。
「……はい」
俺は、シャツもズボンも脱ぎ捨て、ユーゴ様の寝台へと上がる。
「ソラル……、ソラル……」
あっという間に腕の中に抱き込まれ、唇を重ねられる。
「あっ、ユーゴ、さまっ……」
俺は平凡な男だ。
髪は茶色、目は薄茶色。中肉中背の目立った特徴のない容姿。
剣の腕、魔力ともに中の中!
そんな俺が、なぜ第6騎士団の団長という要職についているかというと、それはすべて俺の運とコネによるものだ。
さかのぼること16年前——。
18になったばかりの農家の三男の俺は、いっちょ王都で一旗あげてやろうと、故郷の農村からぼろカバン一つで鼻息荒く飛び出してきた。
……で、当然、ものの数日で路頭に迷った。
持っていた路銀も底をつき、食べるものもなくなった俺は、あてもなく城下町をさまよい、ふらふらと大きな馬車通りに飛び出してしまった。
もちろん、貴族様の大型馬車に惹かれそうになった俺。ただ運動神経だけは自信があったので、かろうじて避けることができたが、俺は石畳の道にごろごろと転がる羽目になった。
そして運命の出会い!
豪華絢爛な大型馬車から下りてきたのは、今をときめく第一騎士団長のユーゴ・フランドル様!
当時は30歳の男盛りで、剣の腕で右に出るものはいないと評判の美丈夫だった。
「大丈夫か!? 怪我は!?」
王都の騎士団の制服を初めて見た俺は、ユーゴ様のあまりのカッコよさに興奮を隠しきれなかった。
ケガもなく、大丈夫だと説明した俺に、ユーゴ様はそれでは気が済まないと言い張り、俺を自分の王都の屋敷に連れて行ってくれた。
そこで手厚く看護され(怪我はないが)、おいしい食事をたらふくごちそうになった俺。
礼を言って去ろうとする俺を、ユーゴ様はなぜか引き留めた。
「君っ、行く当てがないなら、私のもとで働く気はないか?」
そして俺は、まんまとユーゴ様の小姓(ペイジ)となることに成功したのだった。
ユーゴ様は、金茶の髪に、琥珀色の瞳のそれはそれはカッコいい騎士だった。
家柄もすばらしく、伯爵家の長男で、いずれは家督を継ぐ身だが、たぐいまれなる剣の才能を買われ、騎士団に所属していた。
ユーゴ様の本宅は郊外にあったが、騎士団に勤務していたため王都にも豪華な屋敷を構えていたのだった。
ちなみに俺はユーゴ様の本宅へは行ったことはない……。
俺はそこでユーゴ様の身の回りの世話や屋敷の雑用をし、そのうち騎士団長の従騎士として騎士団の仕事にも同行するようになった。
そこで俺は、剣や馬術、貴族のマナーなどを一通り学んでいった。
なぜユーゴ様のような一流の人間が、俺のようなどこの馬の骨ともわからない男を側に置こうと思ったのはいまだに謎だ。
だが、俺はユーゴ様のおかげで、いままで見たこともないきらびやかな世界に足を踏み入れることになったのだった。
――何もかもが順風満帆に思えていたが、一つだけ、俺の心に引っかかることがあった。
それは……。
「おいで、ソラル……」
寝台の上で、上半身裸になったユーゴ様が手招きする。
「……はい」
俺は、シャツもズボンも脱ぎ捨て、ユーゴ様の寝台へと上がる。
「ソラル……、ソラル……」
あっという間に腕の中に抱き込まれ、唇を重ねられる。
「あっ、ユーゴ、さまっ……」
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