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【番外編】
ティトの魔法学園の一日 5
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「セラフィーナっ!!」
硬直からとけたグラート君が叫んだ。
「グラートさん、ティトさんは私の一番上の姉が親衛隊の長を務めるオルランド・グリマルディ様の最愛なのですわよ。
横恋慕は禁止ですわ!」
腕組みをした赤毛のツインテールの少女が、俺達の前に立っていた。
「ハァっ!? だ、誰がっ、横恋慕とか……っ、俺がするわけねーだろっ! っていうか、誰が、ティトなんかっ!!」
真っ赤になって反論するグラード君。
「あら、でも私、見ていましたわよ。今、ティトさんに魔石を渡しましたわよねっ!?
あなたの瞳の色と同じ、緑色の魔石をっ!!」
「う、うるせーっ、いちいちウゼーんだよっ! このおしゃべり女がっ!
クソッ、いいか、ティト、約束だぞ、今度招待状を送るからなっ!」
グラード君は吐き捨てるように言うと、踵を返して自分の席へ戻っていった。
「ティトさん、お気をつけ遊ばせ。グラートさんに心を許してはいけませんわよ」
琥珀色の瞳が、俺を見下ろしている。
「……はい……」
彼女と話すと、なぜかいつも『イラーリア』のことを思い出してしまい、無条件で従ってしまう俺。
「ところでティトさん、ティトさんのところで交換日記が止まっていますわ。
今日は書いてきていただきました?」
セラフィーナちゃんの問いに俺はあっと声をあげた。
「ご、ごめん、なさい。昨日の夜、書こうと思ってたんだけど、つい、うっかり……、
あの、今日の休み時間に、絶対、書くから……!」
ーーファビオとオルランドに邪魔されたせいで、テスト勉強どころか、大切な交換日記を書くこともできなかった昨夜の俺!
俺の言い訳に、セラフィーナちゃんはハアーっとため息をついた。
「なるべく早くお願いしますわね! みなさん、お待ちになっておりますので!」
「うん、すぐに書いて持っていくから!」
なんと俺は、このセラフィーナちゃん、トニアちゃん、そして隣のクラスのヴィオラちゃん、ペルリタちゃんの交換日記のメンバーに入れてもらっているのだ!
この4人は1年生の中でも美少女4人組と言われており、交換日記メンバーになぜか加えてもらっている俺は、他のクラスの男子からもかなりやっかまれている。
まあ、なぜ俺がそんな栄誉に預かっているかというと、おそらくはセラフィーナちゃんの長姉がオルランドの親衛隊長、ペルリタちゃんの次姉がファビオのファンクラブ会長であるという理由が大きいのだが。
俺が午前の中休みを利用し、必死で交換日記を書きあげ、ペルリタちゃんに届けたところで、お昼休みとなった。
ちなみに日記には、先週の週末を利用して、魔界のダンジョンに行った話を書いておいた。魔界のモンスターの話は、10歳の少女たちには大変刺激的らしく、毎回好評を博している!
そしてーー。
昼休憩を告げるベルが鳴るやいなや、教室の外がざわついた。
ーーやはり、今日も……。
「やっほー、ティト、来たよ!」
「さあ、一緒にランチにしよう!」
教室の後ろ扉から顔をのぞかせたのは、やはり俺の愛しい二人だった……。
硬直からとけたグラート君が叫んだ。
「グラートさん、ティトさんは私の一番上の姉が親衛隊の長を務めるオルランド・グリマルディ様の最愛なのですわよ。
横恋慕は禁止ですわ!」
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「ハァっ!? だ、誰がっ、横恋慕とか……っ、俺がするわけねーだろっ! っていうか、誰が、ティトなんかっ!!」
真っ赤になって反論するグラード君。
「あら、でも私、見ていましたわよ。今、ティトさんに魔石を渡しましたわよねっ!?
あなたの瞳の色と同じ、緑色の魔石をっ!!」
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グラード君は吐き捨てるように言うと、踵を返して自分の席へ戻っていった。
「ティトさん、お気をつけ遊ばせ。グラートさんに心を許してはいけませんわよ」
琥珀色の瞳が、俺を見下ろしている。
「……はい……」
彼女と話すと、なぜかいつも『イラーリア』のことを思い出してしまい、無条件で従ってしまう俺。
「ところでティトさん、ティトさんのところで交換日記が止まっていますわ。
今日は書いてきていただきました?」
セラフィーナちゃんの問いに俺はあっと声をあげた。
「ご、ごめん、なさい。昨日の夜、書こうと思ってたんだけど、つい、うっかり……、
あの、今日の休み時間に、絶対、書くから……!」
ーーファビオとオルランドに邪魔されたせいで、テスト勉強どころか、大切な交換日記を書くこともできなかった昨夜の俺!
俺の言い訳に、セラフィーナちゃんはハアーっとため息をついた。
「なるべく早くお願いしますわね! みなさん、お待ちになっておりますので!」
「うん、すぐに書いて持っていくから!」
なんと俺は、このセラフィーナちゃん、トニアちゃん、そして隣のクラスのヴィオラちゃん、ペルリタちゃんの交換日記のメンバーに入れてもらっているのだ!
この4人は1年生の中でも美少女4人組と言われており、交換日記メンバーになぜか加えてもらっている俺は、他のクラスの男子からもかなりやっかまれている。
まあ、なぜ俺がそんな栄誉に預かっているかというと、おそらくはセラフィーナちゃんの長姉がオルランドの親衛隊長、ペルリタちゃんの次姉がファビオのファンクラブ会長であるという理由が大きいのだが。
俺が午前の中休みを利用し、必死で交換日記を書きあげ、ペルリタちゃんに届けたところで、お昼休みとなった。
ちなみに日記には、先週の週末を利用して、魔界のダンジョンに行った話を書いておいた。魔界のモンスターの話は、10歳の少女たちには大変刺激的らしく、毎回好評を博している!
そしてーー。
昼休憩を告げるベルが鳴るやいなや、教室の外がざわついた。
ーーやはり、今日も……。
「やっほー、ティト、来たよ!」
「さあ、一緒にランチにしよう!」
教室の後ろ扉から顔をのぞかせたのは、やはり俺の愛しい二人だった……。
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