27 / 63
ティトと魔法のオルゴール
しおりを挟む
「わあああああっ、やめてくださいっ、ファビオ様っ!」
俺はファビオの後ろから、ぎゅっと抱き着いた。
ファビオがくるりと、感極まった表情で俺を振り返る。
「ティト!! そんなに熱烈に、俺を抱きしめてくれるなんてっ!! やっぱり君は俺のことを……っ!」
ファビオはあろうことか聖剣を放り投げると、俺を正面からひしと抱きしめた。
「え!? ファビオ、さまっ!?」
――そういう場合では、ないと思うのだが。
「ずるいぞ、ファビオ! ティト、私のことも抱きしめておくれ!!」
今度はオルランドがファビオを俺から引きはがしにかかる。
「は!?」
――ええーっと、今、何をしてたんだっけ……。
そうそう……。
「あのっ、オルランド様っ! 俺、オルランド様から頂いたプレゼントにも、全然心当たりが……、あっ」
そしてまた俺は、思い出してしまった。
「そういえば……、メールボックスに届いていた小さな箱がどうしても開かなくて、ファビオ様に相談したことがあったんです」
「なん、だと!? ファビオっ、一体どういうことだっ!?」
ファビオの腕の中から解放された俺が、ぜえぜえと息を荒げながら言うと、今度はファビオがにやりと笑った。
「そういうお前だって、たいそうなロマンティストじゃないか、オルランド!
ああ、あの愛のオルゴールの調べ、お前の美声がいかんなく発揮されていたな! それに、朝起こすための甘い囁き声……。
いやあ、新鮮だったよ! お前って、意外とナルシストな奴だったんだな! 大魔導士様にそんな一面があったなんて!!」
「どうして、お前が、知っている!!」
憤怒でどす黒く変わってしまったオルランドの顔。
ファビオはせせら笑った。
「お前こそ、ティトの気持ちになって考えるべきだったな。
魔力が有り余るお前は、きっと気づきさえしないんだろうな。あの魔道具の箱をあけるのだって、かなりの魔力を消費するんだよ。
知っているだろう? ティトは生活魔法も苦手なんだ。
あの箱が開かなくて困っていたティトを俺が手助けしたやった、それだけのことだよ」
「すみません、オルランド様!
俺、何も知らなくて! ファビオ様はこれは呪いの箱だから、回収して燃やしておくって……」
おろおろする俺に、ファビオは微笑んで見せた。
「お前と同じように、そのあとのお前の贈り物は、全部俺に届くように采配したってわけ。
心配いらないよ。ティト、あの箱の中身は燃やしてなんかいないよ。
あんなによくできた魔道具を捨ててしまうのはあまりにもったいないと思ったからさ、
俺も相談したんだ。お前の親衛隊に!
そしたら、すぐにチャリティオークションを開催してくれてさー。全部すごい高値で売れたんだ。
安心しろ、オルランド! 金は恵まれない子供たちのための教会の基金に、全額寄付してやったさ!!」
「き、さ、ま……」
呻くように言うと、オルランドはファビオの襟元をつかんだ。
「ははっ、そう怒るなよ、オルランド!
ああ、一つ言い忘れていたことがあったんだ。
あの目覚ましもオルゴールも、お前の声で『ティト、ティト』ってうるさかったからさー、その部分だけ魔法で消去しようとしたんだよな。
じゃないと売り物になんないし!
しかし、お前の魔法って複雑で難しいのな。だから、しょうがないからお前の母上に頼んで、その部分だけ消してもらったんだー!」
「!!!!!!!!」
オルランドはファビオを突き飛ばすと、その両の手を上にあげた。
「あ、あ……、オルランドっ、様ッ……!!」
オルランドの頭上にはすでに、大きな黒い魔力の塊が蠢いている。
オルランドは、怒りで我を忘れていた。
「死ね! ファビオっ!! お前にはその道しか残されていない!!」
俺はファビオの後ろから、ぎゅっと抱き着いた。
ファビオがくるりと、感極まった表情で俺を振り返る。
「ティト!! そんなに熱烈に、俺を抱きしめてくれるなんてっ!! やっぱり君は俺のことを……っ!」
ファビオはあろうことか聖剣を放り投げると、俺を正面からひしと抱きしめた。
「え!? ファビオ、さまっ!?」
――そういう場合では、ないと思うのだが。
「ずるいぞ、ファビオ! ティト、私のことも抱きしめておくれ!!」
今度はオルランドがファビオを俺から引きはがしにかかる。
「は!?」
――ええーっと、今、何をしてたんだっけ……。
そうそう……。
「あのっ、オルランド様っ! 俺、オルランド様から頂いたプレゼントにも、全然心当たりが……、あっ」
そしてまた俺は、思い出してしまった。
「そういえば……、メールボックスに届いていた小さな箱がどうしても開かなくて、ファビオ様に相談したことがあったんです」
「なん、だと!? ファビオっ、一体どういうことだっ!?」
ファビオの腕の中から解放された俺が、ぜえぜえと息を荒げながら言うと、今度はファビオがにやりと笑った。
「そういうお前だって、たいそうなロマンティストじゃないか、オルランド!
ああ、あの愛のオルゴールの調べ、お前の美声がいかんなく発揮されていたな! それに、朝起こすための甘い囁き声……。
いやあ、新鮮だったよ! お前って、意外とナルシストな奴だったんだな! 大魔導士様にそんな一面があったなんて!!」
「どうして、お前が、知っている!!」
憤怒でどす黒く変わってしまったオルランドの顔。
ファビオはせせら笑った。
「お前こそ、ティトの気持ちになって考えるべきだったな。
魔力が有り余るお前は、きっと気づきさえしないんだろうな。あの魔道具の箱をあけるのだって、かなりの魔力を消費するんだよ。
知っているだろう? ティトは生活魔法も苦手なんだ。
あの箱が開かなくて困っていたティトを俺が手助けしたやった、それだけのことだよ」
「すみません、オルランド様!
俺、何も知らなくて! ファビオ様はこれは呪いの箱だから、回収して燃やしておくって……」
おろおろする俺に、ファビオは微笑んで見せた。
「お前と同じように、そのあとのお前の贈り物は、全部俺に届くように采配したってわけ。
心配いらないよ。ティト、あの箱の中身は燃やしてなんかいないよ。
あんなによくできた魔道具を捨ててしまうのはあまりにもったいないと思ったからさ、
俺も相談したんだ。お前の親衛隊に!
そしたら、すぐにチャリティオークションを開催してくれてさー。全部すごい高値で売れたんだ。
安心しろ、オルランド! 金は恵まれない子供たちのための教会の基金に、全額寄付してやったさ!!」
「き、さ、ま……」
呻くように言うと、オルランドはファビオの襟元をつかんだ。
「ははっ、そう怒るなよ、オルランド!
ああ、一つ言い忘れていたことがあったんだ。
あの目覚ましもオルゴールも、お前の声で『ティト、ティト』ってうるさかったからさー、その部分だけ魔法で消去しようとしたんだよな。
じゃないと売り物になんないし!
しかし、お前の魔法って複雑で難しいのな。だから、しょうがないからお前の母上に頼んで、その部分だけ消してもらったんだー!」
「!!!!!!!!」
オルランドはファビオを突き飛ばすと、その両の手を上にあげた。
「あ、あ……、オルランドっ、様ッ……!!」
オルランドの頭上にはすでに、大きな黒い魔力の塊が蠢いている。
オルランドは、怒りで我を忘れていた。
「死ね! ファビオっ!! お前にはその道しか残されていない!!」
304
お気に入りに追加
2,353
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)
てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。
言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち―――
大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡)
20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!
モブに転生したはずが、推しに熱烈に愛されています
奈織
BL
腐男子だった僕は、大好きだったBLゲームの世界に転生した。
生まれ変わったのは『王子ルートの悪役令嬢の取り巻き、の婚約者』
ゲームでは名前すら登場しない、明らかなモブである。
顔も地味な僕が主人公たちに関わることはないだろうと思ってたのに、なぜか推しだった公爵子息から熱烈に愛されてしまって…?
自分は地味モブだと思い込んでる上品お色気お兄さん(攻)×クーデレで隠れМな武闘派後輩(受)のお話。
※エロは後半です
※ムーンライトノベルにも掲載しています
溺愛オメガバース
暁 紅蓮
BL
Ωである呉羽皐月(クレハサツキ)とαである新垣翔(アラガキショウ)の運命の番の出会い物語。
高校1年入学式の時に運命の番である翔と目が合い、発情してしまう。それから番となり、αである翔はΩの皐月を溺愛していく。
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
しっかり者で、泣き虫で、甘えん坊のユメ。
西友
BL
こぼれ話し、完結です。
ありがとうございました!
母子家庭で育った璃空(りく)は、年の離れた弟の面倒も見る、しっかり者。
でも、恋人の優斗(ゆうと)の前では、甘えん坊になってしまう。でも、いつまでもこんな幸せな日は続かないと、いつか終わる日が来ると、いつも心の片隅で覚悟はしていた。
だがいざ失ってみると、その辛さ、哀しみは想像を絶するもので……
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
ナイトプールが出会いの場だと知らずに友達に連れてこられた地味な大学生がド派手な美しい男にナンパされて口説かれる話
ゆなな
BL
高級ホテルのナイトプールが出会いの場だと知らずに大学の友達に連れて来れられた平凡な大学生海斗。
海斗はその場で自分が浮いていることに気が付き帰ろうとしたが、見たことがないくらい美しい男に声を掛けられる。
夏の夜のプールで甘くかき口説かれた海斗は、これが美しい男の一夜の気まぐれだとわかっていても夢中にならずにはいられなかった。
ホテルに宿泊していた男に流れるように部屋に連れ込まれた海斗。
翌朝逃げるようにホテルの部屋を出た海斗はようやく男の驚くべき正体に気が付き、目を瞠った……
最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる