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ティトの決断
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不思議な気分だった。
目の前にいるのは明らかに人外のモノなのに、まるで恐怖を感じない。
それどころか、なにか懐かしい感じまでしてしまう。
羽の生えた耳の長い男など、俺の知り合いにいるはずもないのに!
「それに、ほーら、よく見て、この瞳。
君とおなじ、紺色でしょ?」
オベロンは自分の大きな瞳を指さした。
「俺のこの目は、突然変異だって、じいちゃんが!」
「じいちゃん? ああ、リオナの父親ね。あの頑固者、ティトにそんな嘘を教えてたのか」
「じいちゃんを悪く言うな! ……母さんのことを、知ってるのか?」
俺の言葉に、オベロンはくるりと一周優雅にターンしてみせた。
透明な美しい羽が、ひらひらと揺れた。
「知ってるも何も、リオナだって僕の……、ま、いいや、そんな話。
それより、聞かせてよ。ティト!
君はあのファビオとオルランドのことをどう思ってるわけ?
そりゃ僕と比べたら落ちるけど、ふたりとも、そこそこ顔がいいもんなあ。
やっぱり一緒にいるうちに好きになっちゃった? ねえ、ねえ、それでホントはどっちが好きなわけ?
ねえ、ティト、教え……!」
「うるさいっ!!!!」
俺はオベロンを怒鳴りつけていた。
びっくりしたのか、オベロンの背中の羽がしゅんとたたまれる。
「俺の気持ちなんて、関係ないっ!
あの二人は、真実の愛で結ばれているんだ!
誰も二人の間を邪魔することなんて、できないんだっ!!
だから俺はっ、二人の愛を祝福するつもりんなんだっ!!」
目の前のオベロンは目をまんまるにして俺を見ている。
そして……、
「……ぷっ、アハッ、アヒャ、ブハッ、ブハハハハハッ!!!!」
突然吹き出したオベロンは、俺の肩をバンバンと叩き出した。
「な、なんなん、ですかっ!?」
「アーヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、イーヒッヒッヒッヒッヒッ!」
「ちょっと! 笑いすぎ、ですっ!」
俺の言葉を無視して、オベロンは腹を抱えて、ヒーヒーと変な笑い声をあげ続ける。
「あー、ウケる!! なにこの展開、最高っ、面白すぎるっ!
せっかく僕がいろいろ引っ掻き回してやろうと思って、わざわざここまで出張ってきたっていうのに、
もうすでに僕の出る幕なんかないって、なにこれ!?
こりゃ愉快、愉快! こんなに腹の底から笑ったのって、100年ぶりくらいだよー!
ティトすごい! さすがは僕の……」
オベロンは、笑い過ぎででた涙を人差し指で拭った。
「失礼ですよっ! こっちは大真面目に話してるっていうのに、いきなりゲラゲラ笑いだしてっ!」
「あーそうかそうか、それでティトは、愛し合うファビオとオルランドの邪魔をしないようにと、ひとり身を引く覚悟をしたんだね!」
うんうん、とオベロンはキラキラした瞳で俺に頷いて見せた。
「……だから、なんだっていうんです?」
俺はムッとして口をへの字にする。
「いやあ! 素晴らしい。僕はね、感動したよ! これこそ真の無償の愛、だよ!
いままであの二人の奮闘をおちょくりながら見守るのもだいぶ面白かったけど、それがまだ何の実も結んでいなかったことがさらに痛快!
ティトの決断を聞けば、きっと二人は大混乱……、じゃなくて大感謝するにきまっている!
ティト、僕は君のその勇断をたたえるよっ!!」
オベロンは俺の手を掴むと、強引に握手してブンブンと振った。
「はあ、それは、どうも…‥」
「あっ、ヤバっ、そろそろ奴らが戻ってくる気配だ!
僕は草葉の陰から……、ああ違う違う、そのあたりの闇に紛れて君たちをいつも見守っているからね!
あと、これ! 君から二人に渡してあげて!
『二人のご結婚祝いに!!』ってね!! 絶対めちゃくちゃ、喜ぶに違いないから!
あー、たのし! いやあ、長生きってするもんだね。ティト!
じゃあ、また近いうちに会おう! 愛してるよ!」
「へ? は? あの、ちょっとっ!!」
オベロンは一人で長々と喋ったかと思うと、俺に投げキッスをよこして、ぱっと消えた。
「……なんなんだ、あの人……」
俺の手のひらの中には、葉っぱでくるまれ、草の紐で結ばれた小さな包みが残された。
そしてーー!!
「「ティトっ!!!!」」
オベロンが消えたまさに数秒後、すごい勢いで扉が開き、ファビオとオルランドが部屋に入ってきた。
目の前にいるのは明らかに人外のモノなのに、まるで恐怖を感じない。
それどころか、なにか懐かしい感じまでしてしまう。
羽の生えた耳の長い男など、俺の知り合いにいるはずもないのに!
「それに、ほーら、よく見て、この瞳。
君とおなじ、紺色でしょ?」
オベロンは自分の大きな瞳を指さした。
「俺のこの目は、突然変異だって、じいちゃんが!」
「じいちゃん? ああ、リオナの父親ね。あの頑固者、ティトにそんな嘘を教えてたのか」
「じいちゃんを悪く言うな! ……母さんのことを、知ってるのか?」
俺の言葉に、オベロンはくるりと一周優雅にターンしてみせた。
透明な美しい羽が、ひらひらと揺れた。
「知ってるも何も、リオナだって僕の……、ま、いいや、そんな話。
それより、聞かせてよ。ティト!
君はあのファビオとオルランドのことをどう思ってるわけ?
そりゃ僕と比べたら落ちるけど、ふたりとも、そこそこ顔がいいもんなあ。
やっぱり一緒にいるうちに好きになっちゃった? ねえ、ねえ、それでホントはどっちが好きなわけ?
ねえ、ティト、教え……!」
「うるさいっ!!!!」
俺はオベロンを怒鳴りつけていた。
びっくりしたのか、オベロンの背中の羽がしゅんとたたまれる。
「俺の気持ちなんて、関係ないっ!
あの二人は、真実の愛で結ばれているんだ!
誰も二人の間を邪魔することなんて、できないんだっ!!
だから俺はっ、二人の愛を祝福するつもりんなんだっ!!」
目の前のオベロンは目をまんまるにして俺を見ている。
そして……、
「……ぷっ、アハッ、アヒャ、ブハッ、ブハハハハハッ!!!!」
突然吹き出したオベロンは、俺の肩をバンバンと叩き出した。
「な、なんなん、ですかっ!?」
「アーヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、イーヒッヒッヒッヒッヒッ!」
「ちょっと! 笑いすぎ、ですっ!」
俺の言葉を無視して、オベロンは腹を抱えて、ヒーヒーと変な笑い声をあげ続ける。
「あー、ウケる!! なにこの展開、最高っ、面白すぎるっ!
せっかく僕がいろいろ引っ掻き回してやろうと思って、わざわざここまで出張ってきたっていうのに、
もうすでに僕の出る幕なんかないって、なにこれ!?
こりゃ愉快、愉快! こんなに腹の底から笑ったのって、100年ぶりくらいだよー!
ティトすごい! さすがは僕の……」
オベロンは、笑い過ぎででた涙を人差し指で拭った。
「失礼ですよっ! こっちは大真面目に話してるっていうのに、いきなりゲラゲラ笑いだしてっ!」
「あーそうかそうか、それでティトは、愛し合うファビオとオルランドの邪魔をしないようにと、ひとり身を引く覚悟をしたんだね!」
うんうん、とオベロンはキラキラした瞳で俺に頷いて見せた。
「……だから、なんだっていうんです?」
俺はムッとして口をへの字にする。
「いやあ! 素晴らしい。僕はね、感動したよ! これこそ真の無償の愛、だよ!
いままであの二人の奮闘をおちょくりながら見守るのもだいぶ面白かったけど、それがまだ何の実も結んでいなかったことがさらに痛快!
ティトの決断を聞けば、きっと二人は大混乱……、じゃなくて大感謝するにきまっている!
ティト、僕は君のその勇断をたたえるよっ!!」
オベロンは俺の手を掴むと、強引に握手してブンブンと振った。
「はあ、それは、どうも…‥」
「あっ、ヤバっ、そろそろ奴らが戻ってくる気配だ!
僕は草葉の陰から……、ああ違う違う、そのあたりの闇に紛れて君たちをいつも見守っているからね!
あと、これ! 君から二人に渡してあげて!
『二人のご結婚祝いに!!』ってね!! 絶対めちゃくちゃ、喜ぶに違いないから!
あー、たのし! いやあ、長生きってするもんだね。ティト!
じゃあ、また近いうちに会おう! 愛してるよ!」
「へ? は? あの、ちょっとっ!!」
オベロンは一人で長々と喋ったかと思うと、俺に投げキッスをよこして、ぱっと消えた。
「……なんなんだ、あの人……」
俺の手のひらの中には、葉っぱでくるまれ、草の紐で結ばれた小さな包みが残された。
そしてーー!!
「「ティトっ!!!!」」
オベロンが消えたまさに数秒後、すごい勢いで扉が開き、ファビオとオルランドが部屋に入ってきた。
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