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王都の大騒動

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「パオロさんっ!? え、なんで?」

 パオロさんは俺の仕事の先輩。いまは王都の魔法学園で勤務中のはずだ。

 それがどうしてこんな遠い町まで……。


「ティト、開けてくれよ! いま、王都は大変なことになってるんだ! お前に話さなきゃならないことがある!!」

 パオロさんは力任せに何度も扉を叩いている。

 でもオルランドが張った強固な結界のせいで、中には入れないようだ。



『怪しいわね。駄目よ開けちゃ。こちらから開けたら、結界は無効になるわよ』

「うん、わかってる……」

 『イラーリア』の言葉にうなずく俺。


「おーい、ティト、いるんだろ? 開けてくれよ。こっちは困ったことになってるんだよ。お前にとっても、すごく大事な話なんだ!」


 ーーでもパオロさんは大切な俺の先輩で……。パオロさんには、学園で勤め始めたときから、すごくお世話になっていて……。



 だから、パオロさんになにか困ったことがあったなら、俺が力になりたい。



「でもさ、ちょっと扉ごしに話をするくらいなら、いいよね。声は確かに、パオロさんの声なんだし」

『……勝手にしなさい』

 俺はうなずくと、扉に近づいた。



「パオロさん、いったいどうしたんですか?」

「ああ! ティト、そこにいるんだな。よかった」


 パオロさんの安堵した声。


「パオロさん、どうして、こんなところまで……」

「どうもこうもねえよ! 今朝早くに、あの冒険に出た坊っちゃん二人が王都に戻ってきたんだよ」

「それは、知ってます」

 正装した二人は、なにか急ぎの用があると言っていた。


「で、あの二人はすぐに王様のところに行ったらしいんだよ。で、何を願い出たんだと思う?
二人はさ、王様に頼んだらしいんだよ! すぐにでも結婚させてほしいって!!」


 パオロさんの言葉に、俺の目の前は真っ白になった。



 ーーケッコーーーーーン!!!!????

 まさか、そこまで、話が、進んでいたとは……。

 二人の愛は、本当の本当の、本物だったのだ……!!!!



 俺は膝から全身の力が抜けていくようだった。



「おいっ、ティト、聞いてるか? そのことが発表されたんで、王都はもう、大騒ぎだよ!
で、ティト、邪魔なお前を消してやるってやつが、大勢こっちに向かってるんだよ!!」

「お、俺をっ!!??」


 ーーなぜ、俺がっ!!??

 俺はそこまで民衆に嫌われているというのか……。

 俺は、たしかに二人にくっついて回っていたが、二人の仲を邪魔するつもりなんてさらさらない。
 もちろん、二人を応援するつもりだ……。心からでは、ないけれど……。



「もう潮時だろう? いい加減に目を覚ませ! お前はあの二人に遊ばれているだけなんだ! 結婚だって、きっと……」


「大丈夫です、パオロさんっ! 俺はもうお二人のお邪魔虫なんかじゃありません。
俺っ、今日にでも、このパーティから離脱するつもりですからっ!」


 ーー俺は、ついに扉を開けた。






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