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キス
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ぺろりとファビオの傷を舐めて、口の中に血の味が広がったところで、俺は我に返った。
ファビオの美しい青の瞳が、驚きに見開かれている。
「も、申し訳、ありませんっ! 俺は……、なんて失礼なことを……、わあっ!!」
次の瞬間、俺の視界は一変した。
俺の腰と背中に手を回したファビオに、俺は押し倒されていたからだ。
ダンジョンの冷えた床を、俺は背中で感じていた。だが、俺の身体を守るようにファビオに抱えられていたため、倒れるときに俺は全く衝撃を感じなかった。
「あの……、ファビオ、様……?」
ファビオが熱を帯びた表情で、俺を見下ろしている。俺は信じられない思いでファビオを見つめ返した。
「先に仕掛けたのは、ティトだからな……」
息がかかるほどの距離で囁くと、ファビオはそのまま俺に唇を合わせてきた。
「んっ、むっ、う……」
びっくりしてジタバタする俺の両手を押さえつけるようにすると、ファビオは何度も俺に口づけた。
「ティト、ティト……っ」
ファビオの熱い吐息……。
「あっ、ファビオっ、さまっ……、んっ、んんっ……!」
気づくと、ぬるりと熱い舌が口内に侵入していた。
俺はあまりに混乱していて、一体自分の身に何が起こっているのかさえわかっていなかった。
「ティト、すごく、可愛い、俺のティト……」
逃げようとする俺の舌をあっという間に絡め取ると、ファビオは俺の舌先を吸い上げた。
「んあっ、あ、あ……」
身体の奥に、今まで感じたことのない衝撃が走る。
ーーそうだ、これはキスだ!
「ティト、すごく、熱い……、ほらもっと、もっと……」
「んっ、あ、ダメ、これ、以上は……、あっ、ファビオ、さま……っ」
ーー俺はいま、ファビオと舌を絡め合い、情熱的な口づけを交わしている。
くちゅ、くちゅと唾液と舌が絡み合う音が響く。
ファビオが握りしめた俺の指先も、熱い。
「ティト、もう我慢できない、ティト!」
「ああ、ファビオ、さま……っ」
身体の中心部に、熱い疼きを感じたその時ーー、
「はい、ここまでね。……ファビオ、お前、今私の存在を完全に忘れていただろう?」
怒気をはらんだオルランドの声。
俺はオルランドに抱き上げられる形で、ファビオから引き離された。
「ティト、大丈夫か? いきなりあんなに食い尽くすみたいなキスをして! 可哀想に。すごく怖かっただろう?」
オルランドは俺にかがみ込むと、その親指でそっと俺の唇を拭った。そしてその黒いローブの裾で俺を隠すようにすると、ファビオに向き直る。
「ファビオ。わかっているね。お前はたった今、重大なルール違反を犯した。
一切の申し開きは認めないよ」
「……くそっ、オルランド!」
ダンジョンの床の上に座ったままのファビオが、その拳を叩きつけた。
床には一瞬で大きな亀裂が走った。
オルランドはそれを見て眉をひそめた。
「ファビオ、お前はいつも直情的すぎる。まあ、私もあんなふうに情熱的にティトに迫られてしまったら、理性を保てる自信なんて、到底ないけどね……」
「オルランド、だからこれは不可抗力、だろ?」
ファビオがふらりと立ち上がって、額にかかった銀色の髪を払った。
「不可抗力、ね。たしかに、最初のティトの行動は確かにそうだったのかもね。でもファビオ……」
オルランドはその唇に笑みを浮かべる。
「そもそも、私には疑問なんだよ。なんでお前は都合よく、唇だけを怪我したんだい?」
ファビオの美しい青の瞳が、驚きに見開かれている。
「も、申し訳、ありませんっ! 俺は……、なんて失礼なことを……、わあっ!!」
次の瞬間、俺の視界は一変した。
俺の腰と背中に手を回したファビオに、俺は押し倒されていたからだ。
ダンジョンの冷えた床を、俺は背中で感じていた。だが、俺の身体を守るようにファビオに抱えられていたため、倒れるときに俺は全く衝撃を感じなかった。
「あの……、ファビオ、様……?」
ファビオが熱を帯びた表情で、俺を見下ろしている。俺は信じられない思いでファビオを見つめ返した。
「先に仕掛けたのは、ティトだからな……」
息がかかるほどの距離で囁くと、ファビオはそのまま俺に唇を合わせてきた。
「んっ、むっ、う……」
びっくりしてジタバタする俺の両手を押さえつけるようにすると、ファビオは何度も俺に口づけた。
「ティト、ティト……っ」
ファビオの熱い吐息……。
「あっ、ファビオっ、さまっ……、んっ、んんっ……!」
気づくと、ぬるりと熱い舌が口内に侵入していた。
俺はあまりに混乱していて、一体自分の身に何が起こっているのかさえわかっていなかった。
「ティト、すごく、可愛い、俺のティト……」
逃げようとする俺の舌をあっという間に絡め取ると、ファビオは俺の舌先を吸い上げた。
「んあっ、あ、あ……」
身体の奥に、今まで感じたことのない衝撃が走る。
ーーそうだ、これはキスだ!
「ティト、すごく、熱い……、ほらもっと、もっと……」
「んっ、あ、ダメ、これ、以上は……、あっ、ファビオ、さま……っ」
ーー俺はいま、ファビオと舌を絡め合い、情熱的な口づけを交わしている。
くちゅ、くちゅと唾液と舌が絡み合う音が響く。
ファビオが握りしめた俺の指先も、熱い。
「ティト、もう我慢できない、ティト!」
「ああ、ファビオ、さま……っ」
身体の中心部に、熱い疼きを感じたその時ーー、
「はい、ここまでね。……ファビオ、お前、今私の存在を完全に忘れていただろう?」
怒気をはらんだオルランドの声。
俺はオルランドに抱き上げられる形で、ファビオから引き離された。
「ティト、大丈夫か? いきなりあんなに食い尽くすみたいなキスをして! 可哀想に。すごく怖かっただろう?」
オルランドは俺にかがみ込むと、その親指でそっと俺の唇を拭った。そしてその黒いローブの裾で俺を隠すようにすると、ファビオに向き直る。
「ファビオ。わかっているね。お前はたった今、重大なルール違反を犯した。
一切の申し開きは認めないよ」
「……くそっ、オルランド!」
ダンジョンの床の上に座ったままのファビオが、その拳を叩きつけた。
床には一瞬で大きな亀裂が走った。
オルランドはそれを見て眉をひそめた。
「ファビオ、お前はいつも直情的すぎる。まあ、私もあんなふうに情熱的にティトに迫られてしまったら、理性を保てる自信なんて、到底ないけどね……」
「オルランド、だからこれは不可抗力、だろ?」
ファビオがふらりと立ち上がって、額にかかった銀色の髪を払った。
「不可抗力、ね。たしかに、最初のティトの行動は確かにそうだったのかもね。でもファビオ……」
オルランドはその唇に笑みを浮かべる。
「そもそも、私には疑問なんだよ。なんでお前は都合よく、唇だけを怪我したんだい?」
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