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第38話

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「どうぞ、寝台へ……」

 思えば、王であるエドガーが、正妃であるセシルの部屋を訪れるのは初めてのことだった。

 セシルはエドガーを部屋に招き入れると、そっと灯りを落とした。


 ーー暗いほうがいい。お互いの姿が、わからないくらいに……。


「……」

 エドガーは終始無言だった。

 だが、繋いだ手から、驚くような熱さが伝わってくる。
 セシルのフェロモンを感じ取り、それに反応しているのかもしれない。

 ーーどうか、エドガー様の熱が、このまま続きますように……。


 セシルがエドガーに寝台に上がるよう促すと、エドガーは大人しく従った。


 ーーよかった。今夜のためにいろいろ予め準備しておいて……。

 セシルも寝台に上がると、自らシャツのボタンを外していく。



「……っ、セシル……っ」

 エドガーが苦しげに顔を歪ませる。

「どうか、エドガー様はそのままで……」

 セシルに手を伸ばそうとするエドガーを制すると、セシルは手早く衣服を脱いでいった。


 ーー薄い夜着でも羽織りたいところだが、仕方がない。これくらい暗ければ、きっとエドガー様には全部は見えないだろう。


 だが、セシルの思惑とは逆に、窓からの月明かりが、セシルの肢体を照らしていた。
 蒼白い光に浮かび上がるセシルの白い肌は、エドガーに強烈な刺激を与えていた。



「……っ」

 エドガーがゴクリと喉を鳴らす。


「私に、すべておまかせください……」

 セシルは、エドガーを横たえ、全裸でその上に跨る。

 エドガーの上着のボタンを外していくと、エドガーの胸が荒く上下しているのがわかった。


「エドガー様……」

 そっと唇を寄せると、その首筋にキスを落とす。

「はっ……、セシルっ……」

 セシルはエドガーの胸元を開き、その素肌に唇を寄せた。


 肩口に口づけをしながら、エドガーのシャツを脱がせていく。

 エドガーの肌はなめらかで、引き締まっていた。

 セシルは慣れた手付きで、エドガーの衣服をすべて取り去っていく。

 エドガーは、されるがままで、呆けたようにセシルをずっと見つめ続けていた。


 ーーあまりじっと見ないでほしい……。私はベアトリス様と違いすぎる。
 目隠しをしてもらいたいくらいだが、流石に不敬だろうか……?

 セシルの脳裏には焦りがよぎる。



 エドガーもすべての衣服を脱ぎ去った。

 エドガーの裸体は彫像のように見事な造形だった。金の髪、深い青の瞳、白皙の肌……。

 セシルは、羞恥のあまり直視できない。


「セシルっ、セシルっ……!」

「わあっ!」

 エドガーがセシルの腕を引くと、セシルはエドガーの厚い胸板に倒れ込む形となった。
 そのままエドガーの手が、セシルの背をなで上げる。


「んっ、ああっ……!」

 セシルの身体に快感が走る。

「はあっ、セシル……っ」


 互いの素肌が触れ合う。

 エドガーがセシルの髪をかきまわした。

「エドガー様っ、エドガー様はなにもなさらなくて大丈夫ですっ」


 貧弱な身体に触れられ、萎えられてしまっては元も子もない。

 するりとエドガーの手から逃れると、セシルは意を決してエドガーの下半身にかがみ込んだ。


「なっ、んっ、セシルっ、何をっ……!」


「どうぞ、横たわったままで、そのままっ……、んんっ、はあっ……」


 セシルは、エドガーの陰茎を口に咥えていた。



 ーー思い出すんだ。ジャックス王のときは、こうやって……、いつも……。

 チロチロと鈴口を舐めてからそっと吸うと、エドガーの身体が快感に跳ねる。


 ーーそうだ、この調子だ。それから、もっと、もっと奥に……、喉の奥でしめつけて……。こうすると、陛下は、いつも……。



「んっ、くっ、セシルっ、だめだっ!」

「んっ、ああっ、んっ」


 咳き込みそうになり涙目になりながらも、セシルは王の剛直を喉の奥まで入れ込む。


 エドガー自身がこれ以上なく大きくなったのを見計らい、セシルは口からそっと引き出した。


 ーーこれまではうまくいったようだ。だが、これからが、本番だ……。果たしてうまくいくのか……。



 枕の下から、隠していた香油を取り出した。

 普通、オメガなら男性でも性交のときは潤沢に濡れるため、香油など必要ないという。だが、セシルは王宮の専属医から、王の剛直を受け入れるために使うように指導されていた。おそらくは、その時からすでにセシルのオメガ性は失われつつあったのだろう。

 セシルは香油を自分の手のひらに垂らすと、指にたっぷりとつけ、そのまま後孔へと差し入れた。

「くっ、んっ……」

 なんとか二本入っていたが、想像していたよりも狭い。本当にこんなところに王を迎え入れられるのだろうか? 

 今までのセシルはジャックス王にされるがままだったので、自ら主導して挿入したことなどない。

 セシルは目を閉じて、なんとか指を奥まで差し込んでみた。


「ぐっ……、うっ……」
 


「……何をしている」



 冷えた声に目を開けると、青い瞳がセシルを見据えていた。



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