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第31話

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 王の寝室は、二人の熱い息で満ちていた。


「セシルっ、セシルっ……!」

「あっ……、はあっ……、くぅっ……」

 セシルは高く腰をあげさせられ、後ろから容赦なく突かれていた。

「ああ、いいっ、いいぞ、セシル……」

「んっ、あっ、あっ、陛下っ……!」

 セシルの内部を王の剛直が何度も行き交う。


 セシルは、敷布に顔をこすりつけ、与えられる激しい快楽に耐えた。

「きつくて熱い……、締め付けてくるぞっ、ああ……、感じているのだな……、
中が痙攣しているぞ……っ」

 パンパンと肌を打ち付け合う音が響く。

「あっ……、もうっ……、駄目っ、ですっ! もう、お許しください……、陛下っ!」

 セシルが敷布を握り締める。
 と、王がセシル自身に手を伸ばした。

「何が駄目なものか、セシル……、こんなに昂らせて……」
 
 含み笑い。
 そのままきつく根元を締め付けられる。


「いやっ、あっ、そんなっ……! 触らないでっ……!」

「まだ果てるなよ、セシル……。
もうしばらく楽しませてもらうぞ」

 王はセシルの身体を、つながったままぐるりと回転させた。

「あ、ああ!!」

 そのまま両脚を大きく開かされると、さらに結合が深くなった。
 苦しみとも快感ともつかぬ感覚に、セシルは固く目を閉じる。


「ふうっ、ほら、セシル、もっと奥まで突いてやろう……」

 王はいったん身体を離すと、勢いをつけて一気にセシルを貫いた。

「ぐっ、うあ、ああああああ!!!」

 そのままがつがつと貪るように王はセシルの内部を蹂躙した。


「セシル……、目を開けろ!」

 セシルの胸元に、王の汗が落ちる。

「目を開けて私を見ろ! 一体誰がお前の中にいるのか、
一体誰がお前を抱いているのか……、
……お前はいったい誰のものなのか……」

「陛下っ……」

 強烈な快感に飲まれそうになりながらも、セシルはうっすらと目を開ける。

 すると……、

 深く青い瞳が、セシルを見下ろしていた。


「!!!!!!」

「セシル……、お前はもう私のものだ、永遠に!」

「エドガーっ、様っ!!!!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「うわあああああああっ!!!」

 大声をあげて、セシルはがばりと起き上がった。

「どうしましたっ!? セシル様っ!」

 アビーが慌てて部屋に駆け込んできた。

「あ、ああ……、夢……、夢だ……」

 セシルは寝台の上で、まざまざと自分の両手を見る。

「セシル様……?」

「そうだ、あんなこと、あるはずがない……、夢だ……」

 まだ鼓動が早い。身体はうっすらと汗ばんでいる。


「悪夢をみられたのですね。おかわいそうに……。
また少し時間が早いですが、朝食になさいますか?」

 アビーは心配そうにセシルの側に立った。

「いや、大丈夫。悪夢では……、ちょっと驚いただけであって……」

 セシルはぎゅっと自分の寝間着を握り締めた。

 ――なんて夢だ。まるで、まるで、……自分が欲求不満みたいじゃないか!

 アビーがカーテンを開けると、朝日が差し込んでくる。


 ジャックス王が崩御してから、セシルはああいったこととは無縁で過ごしていた。
 ジャックス王が健在だったことは、ほぼ日を開けることなくセシルは閨の相手を務めていたので、初めての発情期を迎えた18歳のとき以来、これは異例なことだ。

 ――そうだ、だからあんな夢を見たんだ。別に私がおかしいせいじゃない。別に私がエドガー様とあんなことを望んでいるとかそういうことでは断じてない!!!

 だが、それにしても……。

 セシルはため息をつく。
 

 ――それもこれも、すべてはエドガー様とファリン様のせいなのだ!!!!



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 あのピクニックの後、離宮に戻るとセシルは湖でおぼれたことになっていた。

 エドガーと二人で乗ったボートでうっかりバランスを崩し、湖に落ちておぼれたセシルが、エドガーに助けられたというでたらめな話が、皆に信じ込まされていた。

 泳ぎの得意なセシルとしては釈然としない思いであったが、衣服がズタボロになってしまった本当の理由をアビーたちに知られるよりはましなので、何も言えなかった。

 そして……、

 三日後に約束通り診察に訪れたファリンは、エドガーからの書簡を携えていた。


「セシル殿、今後は治療の一環として、エドガー王と書簡のやり取りをしてもらう」

「は!?」
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