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第29話

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「これをどうやって手に入れた? 手引きするものがいたはずだ。答えろ!」

「……」

 このことが知られては、ベアトリスまでに累が及ぶ。ベアトリスに迷惑をかけるわけにはいかなかった。

 押し黙るセシルに、エドガーの怒りが増幅していくのがわかる。
 だが、今のセシルにはどうすることもできなかった。


「私はお前のことを誤解していたようだ……」

 エドガーはセシルの顎をつかみ、自分へ向けた。

「……っ」

「あんな妖女の物でさえうれしそうに身に纏えるのに、私からの贈り物は身に着ける価値すらないと……?」

「滅相もありません……、私はただ……、申し訳ありません……」

 セシルは、震える声で詫びることしかできない。たとえそれが、エドガーの怒りの炎に油を注ぐ結果となったとしても。


「やはりあの女はただの妖魔だったな……。あの者の言うことを少しでも耳を傾けた私が愚かだった。
お前の気持ちが私に向くことなど……金輪際ないというのに……」

 言うとエドガーは、セシルの肩口に噛みついた。

「っつ……、エドガー様っ……!」

「決めたぞ、セシル……」

 エドガーはそのままセシルの首筋へ舌を這わせた。
 熱い舌でねぶられ、その首筋を強く吸われると、セシルの身体は跳ねた。

「あっ……、あっ……」

「もう、お前の気持ちなど尊重しない!
一生心が手に入らぬのなら、今ここで身体だけでも隷属させてやる!」


「エドガー様、やめっ……」

 エドガーが、セシルの衣服を引きちぎる。


「セシル、お前は私のものだ。もう一生、私だけのものだ……っ!」

 ほとんど裸同然になったセシルの身体に、エドガーは指と舌を這わせていく。

「あっ……、エドガーっ、さまっ……! いやっ、あっ、んんっ……」

 いままで先王しか触れたことのない部分に、エドガーの吐息がかかる。
 羞恥と強制的に与えられる快感がない交ぜになり、セシルは身をくねらせた。


「これからは昼も夜もなく、私が思う存分可愛がってやる。もう過去のことなど何も思い出せなくなるくらいに!」

「おやめくださいっ、どうかっ……!」

 セシルはなんとかして逃れようとするが、そんなセシルをあざ笑うかのように、エドガーをセシルの両脚を大きく開かせた。
 そして、エドガーの指はたやすくセシルの内部にたどり着く。

「んっ……、ああっ……」

 刺激にセシルは高い声を漏らす。

「この美しい体を、毎夜差し出していたのか……、さぞかしあの男は……」

「あっ、んっ、どうかっ、お許しください……っ、どうかっ……、くっ……」

 セシルの懇願など受け入れられるわけもなく、エドガーはわざと音をたててセシルの内部をかき回した。

 セシルの背が、大きく反った。


「まだ狭い……、セシル、どんな気分だ? 愛してもいない男に、この身体を暴かれるのは……」

 ゆっくりと指が抜き差しされる。まだ十分に湿っていないそこを、強引に行き交われ、セシルは呻き声を上げる。


「この身体に刻んでやろう、一体お前は誰のものなのか。そして思い知らしてやる、お前は一生……っ」


 突然どさりとエドガーの身体が、セシルに覆いかぶさってきた。

 エドガーの身体はぴくりとも動かない。



「エドガー、様?」


 返事はない。

 

「だから時期尚早であると言ったであろう。たわけ者めが!」

 鋭い声とともに、セシルの身体から脱力したエドガーが引き剥がされた。


「ファリン様!!」


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