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第2話
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そこから先は本当に、すべてがまるで夢の中の出来事のようだった。
ジャックス王に抱えられるようにして舞踏会の会場から連れ去られたセシルは、宮殿内のどこかの部屋に入ると、あっという間に寝台に沈まされていた。
「あの……、僕は……っ」
ヒートでろれつが回らない中、必死で何とか言葉を紡ごうとするセシルの唇を、ジャックス王は自分のそれで封じた。
「んっ……、はあっ」
「やっと、やっと見つけた! 私の……っ」
ジャックス王は、セシルの両手を寝台に押さえつけると、その細い身体に遠慮なく覆いかぶさった。
熱い舌で咥内を舐めまわされると、もう何も考えられなくなった。
自分を組み敷くこの逞しい腕の男が、いったい誰なのか……、セシルはこのときまだよくわかっていなかった。
わかっているのは、目の前の金髪碧眼の美しい男が、アルファであるということだけ……。
ヒートを起こしたオメガが、ここまでアルファを狂おしく求めるものだいうことを、セシルは初めてのヒートで思い知らされた。
荒々しく強引にこの日のために着飾った服をはぎ取られているときも、惜しげもなくさらした素肌にくまなく舌を這わされたときも、セシルが感じていたのはおそれどころか、これから起こることへの期待だけだった。
――この男が欲しい。
――この男にすべて奪われたい。
何もかもが初めての経験だというのに、セシルは積極的に目の前の男との情事にのめりこんでいった。
ジャックス王もセシルのヒートに呼応するかのように、ラットを起こしていた。
お互いが、獣のように寝台の上でお互いの身体をむさぼりあった。
セシルの身体はほてり、その身体の奥は柔らかく湿り、ジャックス王をしっかりと迎え入れた。
「あ、あああああああーー!!」
アルファの剛直に貫かれ、セシルは歓喜の声をあげた。
無理やりに身体をこじ開けられる苦しみよりも、アルファの男を身体の奥に感じる悦びのほうが、何倍も勝っていた。
「ああっ、なんて、素晴らしい……っ、ずっと、ずっと、求めていたんだ、こんなところに…‥っ!」
狂ったように腰を打ち付けてくるジャックス王の汗が、セシルの額にかかった。
なんて美しい人なんだと、その強靭な身体を見上げたセシルは感激に打ち震えた。
「ああっ、すごいっ、もっと……、もっと……」
セシルも、必死でジャックス王に応え、その背に腕を絡ませた。
だから……、初めての交合にのめりこみ、我を忘れたセシルが気づいたときには、なにもかもが手遅れだった。
つながったまま、くるりと後ろを向かされたセシルが、首筋にかかるその灰色の髪をジャックス王にかき上げられた時も、セシルは次に起こることなど、何も予見していなかった。
「私のものだ……、私だけの…‥、運命の番だっ!」
「あっ、ああああ……!!!!」
首筋に鋭い痛みを感じたとき――、もうすでにセシルの運命は変わってしまっていた。
そのときから、セシルはジャックス王の愛妾として……、『運命の番』として、ジャックス王の側に仕えることになったのだった。
ジャックス王に抱えられるようにして舞踏会の会場から連れ去られたセシルは、宮殿内のどこかの部屋に入ると、あっという間に寝台に沈まされていた。
「あの……、僕は……っ」
ヒートでろれつが回らない中、必死で何とか言葉を紡ごうとするセシルの唇を、ジャックス王は自分のそれで封じた。
「んっ……、はあっ」
「やっと、やっと見つけた! 私の……っ」
ジャックス王は、セシルの両手を寝台に押さえつけると、その細い身体に遠慮なく覆いかぶさった。
熱い舌で咥内を舐めまわされると、もう何も考えられなくなった。
自分を組み敷くこの逞しい腕の男が、いったい誰なのか……、セシルはこのときまだよくわかっていなかった。
わかっているのは、目の前の金髪碧眼の美しい男が、アルファであるということだけ……。
ヒートを起こしたオメガが、ここまでアルファを狂おしく求めるものだいうことを、セシルは初めてのヒートで思い知らされた。
荒々しく強引にこの日のために着飾った服をはぎ取られているときも、惜しげもなくさらした素肌にくまなく舌を這わされたときも、セシルが感じていたのはおそれどころか、これから起こることへの期待だけだった。
――この男が欲しい。
――この男にすべて奪われたい。
何もかもが初めての経験だというのに、セシルは積極的に目の前の男との情事にのめりこんでいった。
ジャックス王もセシルのヒートに呼応するかのように、ラットを起こしていた。
お互いが、獣のように寝台の上でお互いの身体をむさぼりあった。
セシルの身体はほてり、その身体の奥は柔らかく湿り、ジャックス王をしっかりと迎え入れた。
「あ、あああああああーー!!」
アルファの剛直に貫かれ、セシルは歓喜の声をあげた。
無理やりに身体をこじ開けられる苦しみよりも、アルファの男を身体の奥に感じる悦びのほうが、何倍も勝っていた。
「ああっ、なんて、素晴らしい……っ、ずっと、ずっと、求めていたんだ、こんなところに…‥っ!」
狂ったように腰を打ち付けてくるジャックス王の汗が、セシルの額にかかった。
なんて美しい人なんだと、その強靭な身体を見上げたセシルは感激に打ち震えた。
「ああっ、すごいっ、もっと……、もっと……」
セシルも、必死でジャックス王に応え、その背に腕を絡ませた。
だから……、初めての交合にのめりこみ、我を忘れたセシルが気づいたときには、なにもかもが手遅れだった。
つながったまま、くるりと後ろを向かされたセシルが、首筋にかかるその灰色の髪をジャックス王にかき上げられた時も、セシルは次に起こることなど、何も予見していなかった。
「私のものだ……、私だけの…‥、運命の番だっ!」
「あっ、ああああ……!!!!」
首筋に鋭い痛みを感じたとき――、もうすでにセシルの運命は変わってしまっていた。
そのときから、セシルはジャックス王の愛妾として……、『運命の番』として、ジャックス王の側に仕えることになったのだった。
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