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【番外編】
ダンデス伯爵の優美なる一日 その8(終)
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「テオ、俺……、こうしてテオと一緒にいられて、こうやって二人でダンスもできて、すごくうれしい!」
俺の言葉に、テオドールは息を呑んだ。
「ジュール、ジュールは俺と踊るのが嫌じゃなかったのか?」
「え、なんで?」
予想外の言葉に、俺は驚いていた。
「だって、今日の舞踏会では絶対にダンスはしないって、殿下の前でも言ってたし、
やっぱりみんなの前で男二人でダンスなんて、恥ずかしいのかなって……」
俺はぎゅっとテオドールの袖口をつかんだ。
「違うよっ! 俺だって、本当はみんなの前でテオとダンスしたかったよ!
成績がオールCの俺とちがって、テオはダンスの授業だってA+だっただろ!? だからテオがダンスが得意なのはわかってたんだ。
でも、でもさ……、もし俺が舞踏会でテオとファーストダンスを踊っちゃったら、テオは次に絶対にほかの人にダンスを申し込まれるだろ?
そしたら、儀礼上、踊らなきゃいけなくなるし、そうなったら、俺はほかの人とテオが踊るの指をくわえてずっと見てなきゃいけないわけで……、
俺はそんなのが絶対、絶対我慢できなくて……!
ごめんテオっ、それもこれも、全部嫉妬深すぎる俺のせいなんだっ……、わあっ」
俺はテオドールに身体ごと持ち上げられていた。
「それこそ、こっちのセリフだよ、ジュールっ!
俺だって、ジュールにダンスを申込みたくてうずうずしているあのクズ野郎たちに、ジュールを触れさせるなんて、絶対に我慢できない。
もしそんなことになってたら、俺は嫉妬のあまり、舞踏会の会場ごと冥界へ送っていたかもしれない……!」
――それは、大変なことになる……!
テオドールは俺を横抱きにすると、そのまま部屋に置かれていた長椅子の上まで運んだ。
「ジュールにこんな可愛いことを言われたら……、俺はもう我慢できない! ずっと耐えてたんだ! ジュールが欲しい、いますぐ!」
テオドールの黒い瞳に見据えられ、俺の身体の奥が熱くうずく。
――俺だってずっと、ずっとテオが欲しかった!
俺を長椅子に横たえ、そのままのしかかってくるテオドールの首に、俺は手を回して引き寄せた。
「テオ、俺達って、似た者同士なのかもしれないね」
「ジュール……?」
「俺はテオの周り全部に嫉妬して、テオは俺の周りに嫉妬して……。
多分、俺たちってお互いのことしか見えてない。きっと……、お互いが相手のことを好きすぎるせいだね」
俺の言葉に、テオドールはほほ笑んだ。
「俺はいつまでもジュールに嫉妬してもらえるように、ずっとジュールの一番でいたい!」
テオドールの真摯な瞳に、俺はうなずいた。
「後にも先にも、俺をこんなに夢中にさせたのは、テオ、君だけだよ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あっ、んっ、ふうっ……」
「ジュールっ、ああっ…‥、ジュール」
天鵞絨張りの長椅子の下には、脱ぎ捨てられた俺たちの衣服が散らばっている。
俺は椅子に座ったテオドールにまたがる形で、全裸の俺はテオドールの剛直を受け入れていた。
俺たちはまるで何かにとりつかれたみたいに、夢中で相手を貪りあっていた。
「テオっ、熱い……っ」
――身体の奥が、熱くて、熱くて……、
俺は必死でテオドールの身体にしがみつく。
「ジュール、すごく、いい……、ああ……」
見事な筋肉がついたテオドールの背中に手を回せば、聖騎士になるための試練でドラゴンから負わされた古傷が俺の指に触れた。
――俺のために、ついた爪痕……。
「テオ……、好き……、愛してる……」
俺の言葉に応えるように、テオドールは俺に口づけてきた。
「んあっ、ん……っ」
「俺も、愛してる……っ!」
腰を持たれて、ぐっと引き寄せられると、さらに結合が深くなる。
「あ、あああああっ!!」
身体の最奥にテオドールが届くと、俺の背は大きく反った。
「ジュール、すごく素敵だ、ジュール、ジュール、俺だけのジュール……」
キスの合間に、テオドールが俺に囁く。
キャンドルの光が、テオドールの美しい顔を照らしている。
「テオ、俺っ、すごく幸せだよ……、君みたいに素敵な人が俺の……っ、ふぁ、ああ、ああああ!」
テオドールに揺さぶられると、快感になにもかもが支配されそうになる。
「ジュール、それは俺の方だよ。もう、俺だけのものだ。ジュール……、絶対に誰にも渡さない。
覚悟してね、もう絶対に俺からは逃げられないよ……」
テオドールが容赦なく突き上げながらも、俺の首筋に舌を這わせる。
「あっ、ああっ! んっ、すごい……、感じる……っ、テオっ……!」
「ジュール、愛してる! 愛してるなんて言葉じゃ、全然足りないくらいだよ。
ジュールの全部、俺のものだ。全部、俺に頂戴…‥、ジュール……」
「あっ、はあっ……、いいよ……、俺の全部、もうテオのものっ、だから……、全部、あげる……っ」
俺がきつくテオドールの身体を抱きしめると、テオドールも強く俺を抱き返してくれる。
俺たちはまるで溶け合って一つになったみたいに、同じ熱を感じていた。
「ジュールっ、俺の全部、受け止めて……」
「テオっ、全部、全部、ちょうだい……っ!」
熱い飛沫を身体の中に感じたとき、窓の外から見える夜空には、突然花火が打ち上げられた。
その後も花火は次々と打ち上げられ、俺たちは長椅子の上で抱き合ったまま、王宮に上がる色とりどりの花火をしばらく呆然と眺めていた。
「すごいね……、テオ。綺麗だ……」
「これも、殿下のサプライズの一環なのかもしれないよ、ジュール」
テオドールは俺の後ろ首に手をやると、そっと引き寄せる。
二人の唇が重なったとき、目を閉じた俺には、ひときわ大きな花火が上がった音が聞こえてきたのだった。
(了)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これでこの物語は完結です。読んでいただきありがとうございました!!
愛と感謝を込めて!
mizutama
俺の言葉に、テオドールは息を呑んだ。
「ジュール、ジュールは俺と踊るのが嫌じゃなかったのか?」
「え、なんで?」
予想外の言葉に、俺は驚いていた。
「だって、今日の舞踏会では絶対にダンスはしないって、殿下の前でも言ってたし、
やっぱりみんなの前で男二人でダンスなんて、恥ずかしいのかなって……」
俺はぎゅっとテオドールの袖口をつかんだ。
「違うよっ! 俺だって、本当はみんなの前でテオとダンスしたかったよ!
成績がオールCの俺とちがって、テオはダンスの授業だってA+だっただろ!? だからテオがダンスが得意なのはわかってたんだ。
でも、でもさ……、もし俺が舞踏会でテオとファーストダンスを踊っちゃったら、テオは次に絶対にほかの人にダンスを申し込まれるだろ?
そしたら、儀礼上、踊らなきゃいけなくなるし、そうなったら、俺はほかの人とテオが踊るの指をくわえてずっと見てなきゃいけないわけで……、
俺はそんなのが絶対、絶対我慢できなくて……!
ごめんテオっ、それもこれも、全部嫉妬深すぎる俺のせいなんだっ……、わあっ」
俺はテオドールに身体ごと持ち上げられていた。
「それこそ、こっちのセリフだよ、ジュールっ!
俺だって、ジュールにダンスを申込みたくてうずうずしているあのクズ野郎たちに、ジュールを触れさせるなんて、絶対に我慢できない。
もしそんなことになってたら、俺は嫉妬のあまり、舞踏会の会場ごと冥界へ送っていたかもしれない……!」
――それは、大変なことになる……!
テオドールは俺を横抱きにすると、そのまま部屋に置かれていた長椅子の上まで運んだ。
「ジュールにこんな可愛いことを言われたら……、俺はもう我慢できない! ずっと耐えてたんだ! ジュールが欲しい、いますぐ!」
テオドールの黒い瞳に見据えられ、俺の身体の奥が熱くうずく。
――俺だってずっと、ずっとテオが欲しかった!
俺を長椅子に横たえ、そのままのしかかってくるテオドールの首に、俺は手を回して引き寄せた。
「テオ、俺達って、似た者同士なのかもしれないね」
「ジュール……?」
「俺はテオの周り全部に嫉妬して、テオは俺の周りに嫉妬して……。
多分、俺たちってお互いのことしか見えてない。きっと……、お互いが相手のことを好きすぎるせいだね」
俺の言葉に、テオドールはほほ笑んだ。
「俺はいつまでもジュールに嫉妬してもらえるように、ずっとジュールの一番でいたい!」
テオドールの真摯な瞳に、俺はうなずいた。
「後にも先にも、俺をこんなに夢中にさせたのは、テオ、君だけだよ!」
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「あっ、んっ、ふうっ……」
「ジュールっ、ああっ…‥、ジュール」
天鵞絨張りの長椅子の下には、脱ぎ捨てられた俺たちの衣服が散らばっている。
俺は椅子に座ったテオドールにまたがる形で、全裸の俺はテオドールの剛直を受け入れていた。
俺たちはまるで何かにとりつかれたみたいに、夢中で相手を貪りあっていた。
「テオっ、熱い……っ」
――身体の奥が、熱くて、熱くて……、
俺は必死でテオドールの身体にしがみつく。
「ジュール、すごく、いい……、ああ……」
見事な筋肉がついたテオドールの背中に手を回せば、聖騎士になるための試練でドラゴンから負わされた古傷が俺の指に触れた。
――俺のために、ついた爪痕……。
「テオ……、好き……、愛してる……」
俺の言葉に応えるように、テオドールは俺に口づけてきた。
「んあっ、ん……っ」
「俺も、愛してる……っ!」
腰を持たれて、ぐっと引き寄せられると、さらに結合が深くなる。
「あ、あああああっ!!」
身体の最奥にテオドールが届くと、俺の背は大きく反った。
「ジュール、すごく素敵だ、ジュール、ジュール、俺だけのジュール……」
キスの合間に、テオドールが俺に囁く。
キャンドルの光が、テオドールの美しい顔を照らしている。
「テオ、俺っ、すごく幸せだよ……、君みたいに素敵な人が俺の……っ、ふぁ、ああ、ああああ!」
テオドールに揺さぶられると、快感になにもかもが支配されそうになる。
「ジュール、それは俺の方だよ。もう、俺だけのものだ。ジュール……、絶対に誰にも渡さない。
覚悟してね、もう絶対に俺からは逃げられないよ……」
テオドールが容赦なく突き上げながらも、俺の首筋に舌を這わせる。
「あっ、ああっ! んっ、すごい……、感じる……っ、テオっ……!」
「ジュール、愛してる! 愛してるなんて言葉じゃ、全然足りないくらいだよ。
ジュールの全部、俺のものだ。全部、俺に頂戴…‥、ジュール……」
「あっ、はあっ……、いいよ……、俺の全部、もうテオのものっ、だから……、全部、あげる……っ」
俺がきつくテオドールの身体を抱きしめると、テオドールも強く俺を抱き返してくれる。
俺たちはまるで溶け合って一つになったみたいに、同じ熱を感じていた。
「ジュールっ、俺の全部、受け止めて……」
「テオっ、全部、全部、ちょうだい……っ!」
熱い飛沫を身体の中に感じたとき、窓の外から見える夜空には、突然花火が打ち上げられた。
その後も花火は次々と打ち上げられ、俺たちは長椅子の上で抱き合ったまま、王宮に上がる色とりどりの花火をしばらく呆然と眺めていた。
「すごいね……、テオ。綺麗だ……」
「これも、殿下のサプライズの一環なのかもしれないよ、ジュール」
テオドールは俺の後ろ首に手をやると、そっと引き寄せる。
二人の唇が重なったとき、目を閉じた俺には、ひときわ大きな花火が上がった音が聞こえてきたのだった。
(了)
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これでこの物語は完結です。読んでいただきありがとうございました!!
愛と感謝を込めて!
mizutama
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みんなの感想(62件)
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本当にありがとうございました!
いっぱいしゅき❤❤
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楽しく拝見させていただきました。
本当にありがとうございました。
素敵なクリスマスプレゼントでした。
mizutamaさんが素敵な日を過ごせますように!
ハッピーメリークリスマス!
まきまき様❤
感想ありがとうございます! 本編から番外編まで、最後まで読んでいただき嬉しいです!
そういえば、クリスマスなのですねー!
完結がクリスマスまでに間に合ってよかったです。
素敵なクリスマスをお過ごしくださいね!いつも応援ありがとうございます。とっても感謝です❤
ハッピーメリークリスマス🎄